【アナリスト水田雅展の銘柄分析】川崎近海汽船は指標面の割安感見直して反発期待、原油価格下落もプラス要因

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を展開している。第1四半期(4月~6月)は営業損益が大幅改善し、原油価格下落もプラス要因となって16年3月期業績は増額含みだ。株価は高値圏から反落して水準を切り下げたが、1桁台の予想PERや0.5倍近辺の実績PBRなど指標面の割安感も見直して反発展開だろう。

■近海輸送と内航輸送を展開、新規のオフショア支援船は16年竣工予定

石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門を展開している。

中期成長に向けた新規分野として、13年10月オフショア・オペレーションと均等出資で合弁会社オフショア・ジャパンを設立した。日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務に進出する。オフショア支援船は16年2月竣工予定だ。なお15年5月1日付でオフショア支援船事業推進室を新設した。

15年3月には、18年春予定で岩手県宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路を開設するべく検討を開始した。宮古港、室蘭港とも近隣に国立公園など観光資源が豊富なため旅客需要も期待できるとしている。

15年7月には、16年秋に静岡県清水港と大分県大分港をRORO船で結ぶ新たな航路を開設するべく検討を開始したと発表している。深刻なドライバー不足により、関東・甲信~九州間の陸上長距離輸送が困難となっている実情を踏まえ、海上輸送へのモーダルシフトを推進する。清水~大分間を20時間で結ぶことで、関東・甲信~九州間をトレーラーでの海陸一貫輸送により、集荷から3日目の早朝までの配送が可能になる。

■第1四半期は黒字化、16年3月期は営業減益予想だが増額含み

なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)111億91百万円、第2四半期(7月~9月)122億87百万円、第3四半期(10月~12月)119億83百万円、第4四半期(1月~3月)104億85百万円で、営業利益は第1四半期56百万円の赤字、第2四半期8億59百万円、第3四半期9億60百万円、第4四半期5億98百万円だった。第1四半期は所有船のドック入りが集中して修繕費が増加した。

また15年3月期の配当性向は57.8%だった。ROEは14年3月期比0.2ポイント低下して2.2%、自己資本比率は同3.6ポイント上昇して56.3%となった。

7月31日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比4.2%減の107億16百万円だが、営業利益が3億円(前年同期は56百万円の赤字)、経常利益が3億09百万円(同70百万円の赤字)、純利益が2億01百万円(同64百万円の赤字)だった。円安効果、修繕費減少、燃料油価格下落などで黒字化した。

セグメント別に見ると、近海部門は売上高が同0.3%増の43億04百万円、営業利益(全社費用等調整前)が1億21百万円の赤字(同3億02百万円の赤字)だった。バルク輸送では石炭・スラグなどの年度契約で安定輸送量を確保し、円安も寄与した。利益面では効率配船の取り組み強化なども寄与して赤字幅が縮小した。内航部門は売上高が同7.0%減の64億11百万円だが、燃料油価格下落も寄与して営業利益が同71.5%増の4億22百万円だった。

通期の連結業績予想は前回予想(4月30日公表)を据え置いて売上高が前期比4.7%減の438億円、営業利益が同4.7%減の22億50百万円、経常利益が同9.8%減の22億円、純利益が同3.0倍の15億円としている。配当予想は前期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)で予想配当性向は19.6%となる。

近海部門は市況低迷が長期化しているが、バルク輸送では効率配船、木材輸送や鋼材・雑貨輸送では運航効率の向上を図る。内航部門は総じて安定した荷動きを見込んでいる。純利益は前期計上した保有船舶減損損失の一巡が寄与する。前提は為替レートが1米ドル=120円(前期は1米ドル=108円13銭)、燃料油価格(国内価格)が5万6600円(前期は6万8175円)としている。

通期予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が24.5%、営業利益が13.3%、経常利益が14.1%、純利益が13.4%である。利益進捗率が低水準だが、原油価格が再び下落傾向を強めていることも寄与して会社予想は増額含みだろう。

■中期経営計画で18年3月期ROE8.9%を目指す

15年4月に発表した15年度中期経営計画では、目標値を18年3月期売上高495億円(近海部門175億円、内航部門320億円)、営業利益34億円(近海部門5億円の赤字、内航部門39億円の利益)、経常利益35億円、純利益24億円、ROE8.9%、自己資本比率61.1%、DER0.45倍とした。前提の為替レートは1米ドル=120円、燃料油価格は7万1500円である。

また新造船建造等に対する3年間の合計投資額は133億円とした。期間中の新造船は近海部門の一般貨物船1隻(社船または傭船)、内航部門の石炭船一隻(傭船)、一般貨物船1隻(傭船)、石灰石専用船1隻(社船)、RORO船1隻(社船)、新規事業のオフショア船1隻(共有船)の予定である。

近海部門では、喫緊の課題である収益改善に向けて、適正な船隊規模による効率配船と新規顧客の獲得を目指す。内航部門では、不定期船輸送における各専用船の安定輸送確保と新規貨物開拓、定期船輸送とフェリー輸送における新規航路の開設を進める方針だ。

陸上輸送におけるドライバー不足で海上輸送へのモーダルシフトが注目されており、中期的にはオフショア支援船業務や新航路開設も寄与して収益拡大が期待される。

■株価は調整局面だが、指標面の割安感も見直して反発期待

株価の動きを見ると、1月の年初来高値440円から徐々に水準を切り下げて調整局面だ。7月9日には全般地合い悪化も影響して361円まで調整する場面があり、その後も反発力の鈍い展開だ。ただし1月高値から半年が経過して調整のほぼ最終局面だろう。

8月12日の終値379円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円09銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS784円66銭で算出)は0.5倍近辺である。

日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だ。ただし1桁台の予想PER、2%台後半の予想配当利回り、0.5倍近辺の実績PBRと指標面の割安感は強い。16年3月期業績の増額含みも評価して反発展開だろう。

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