【決算記事情報】科研製薬は16年3月期第1四半期は大幅増益、通期予想は増額が濃厚

決算情報

科研製薬<4521>(東1)の第1四半期(4月~6月)業績は大幅増益だった。16年3月期業績の会社予想を据え置いたが、外用爪白癬治療剤クレナフィンの収益寄与が本格化して増額が濃厚だ。株価は上場来高値更新の展開で8月18日には6360円まで上伸する場面があった。中期成長力や積極的な株主還元姿勢を評価する流れに変化はなく、目先的な過熱感を冷ましながら上値を追う展開だろう。

■整形外科、皮膚科、内科領域を得意とする医薬品メーカー

整形外科、皮膚科、内科といった領域を得意として、農業薬品や飼料添加物なども展開する医薬品メーカーである。医薬品・医療機器では、生化学工業<4548>からの仕入品である関節機能改善剤アルツを主力として、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、高脂血症治療剤リピディル、創傷治癒促進剤フィブラストスプレーなどを展開し、ジェネリック医薬品も急拡大している。

日本初の外用爪白癬治療剤クレナフィン(一般名エフィナコナゾール)については、日本では当社が14年7月に製造販売承認を取得し、14年9月に販売開始した。海外ではカナダのバリアント社が13年10月にカナダで承認を取得、14年6月に米国で承認を取得した。

開発中のテーマとしては、歯周病を適応症とする「KCB-1D」の申請を準備中(申請予定15年10月)で16年承認予定だ。腱・靱帯付着部症を適応症とする「SI-657」(生化学工業と共同開発、アルツの効能追加)は16年承認予定としている。潰瘍性大腸炎を適応症とする「KAG-308」(旭硝子<5201>と共同開発の経口プロスタグランジン製剤)はフェーズⅡを準備中である。

15年3月には、米ブリッケル社が米国において原発性局所多汗症を対象に開発している「BBI-4000」(外用抗コリン剤)の独占的ライセンス実施許諾および共同開発に関する契約を締結し、日本とアジア主要国における独占的な開発・販売・製造の権利を取得した。

■16年3月期第1四半期は大幅増益、通期業績の会社予想は増額が濃厚

なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)214億64百万円、第2四半期(7月~9月)227億68百万円、第3四半期(10月~12月)269億23百万円、第4四半期(1月~3月)227億34百万円で、営業利益は第1四半期40億85百万円、第2四半期47億21百万円、第3四半期78億05百万円、第4四半期40億20百万円だった。

また15年3月期は13期連続の増配で、配当性向は40.6%だった。ROEは14年3月期比2.2ポイント上昇して16.7%、自己資本比率は同3.0ポイント上昇して67.0%となった。

8月5日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比28.7%増の276億33百万円、営業利益が同2.3倍の92億34百万円、経常利益が同2.3倍の93億62百万円、純利益が同2.4倍の63億円だった。

関節機能改善剤アルツなどの主力製品が好調に推移したことに加えて、14年9月発売開始の外用爪白癬治療剤クレナフィンの収益寄与が本格化して大幅増収増益だった。売上総利益率は同6.7ポイント上昇して57.1%、販管費比率は同7.7ポイント低下して23.7%、そして売上高営業利益率は同14.4ポイント上昇して33.4%となった。研究開発費は同13.1%減の14億08百万円だった。

主要医薬品・医療機器別の売上高(単体ベース)は、関節機能改善剤アルツが同3.4%増の80億20百万円、外用爪白癬治療剤クレナフィンが44億99百万円(前年同期は発売開始前)、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルムが同9.8%増の27億14百万円、高脂血症治療剤リピディルが同6.7%増の11億23百万円、創傷治癒促進剤フィブラストスプレーが同7.8%増の9億24百万円、ジェネリック医薬品合計が同11.0%増の33億30百万円だった。なおバリアント向けJublia関連(マイルストーン収入、ロイヤリティ収入、原体売上、製剤売上含む)は同60.3%増の17億17百万円だった。

通期の連結業績予想は前回予想(5月12日公表)を据え置いて、売上高が前期比4.9%増の985億円、営業利益が同1.8%増の210億円、経常利益が同3.5%増の211億円、純利益が同15.5%増の140億円としている。

長期収載品や後発医薬品においては医療費抑制策の影響などで市場の不透明さが増し、またパイプライン充実に向けて研究開発費が増加(同48.4%増の113億円の計画)するためとして通期会社予想を据え置いた。

医薬品・医療機器の売上高計画は、関節機能改善剤アルツが同1.1%増の306億円、外用爪白癬治療剤クレナフィンが同75.0%増の120億円、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルムが同1.9%増の110億円、高脂血症治療剤リピディルが同2.9%増の45億円、創傷治癒促進剤フィブラストスプレーが同2.5%増の36億円、ジェネリック医薬品合計が同7.4%増の133億円としている。バリアント向けJublia関連売上高は50億円の計画としている。

通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が28.1%、営業利益が44.0%、経常利益が44.4%、純利益が45.0%と高水準である。外用爪白癬治療剤クレナフィンの収益寄与が本格化して通期会社予想は増額が濃厚だろう。

配当予想については5月27日に修正を発表して第2四半期末34円、期末68円としている。15年10月1日付の株式併合(2株→1株)に伴うもので、株式併合前に換算すると第2四半期末34円、期末34円の年間68円となる。前期の年間59円に対して実質的に9円増配で14期連続増配となる。

■株価は上場来高値更新の展開、10月1日付で株式併合

なお5月12日に単元株式数の変更と株式併合を発表している。15年10月1日付で単元株式数を1000株から100株に変更するとともに、中長期的な株価変動等を考慮しつつ、投資単位を適切な水準に調整することを目的として、15年10月1日付で2株を1株に併合する。単元株式数変更および株式併合に伴い、当社株式の投資単位は従前に比して5分の1の水準となる。

株価の動きを見ると、4月高値の4750円を突破して上場来高値更新の展開となった。そして第1四半期の大幅増益も好感して8月18日には6360円まで上伸する場面があった。目先的には過熱感を強めているが、好業績を評価する流れに変化はないだろう。

8月18日の終値6100円を指標面(15年10月1日付予定の株式併合前)で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS168円99銭で算出)は36倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間68円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS930円56銭で算出)は6.6倍近辺である。

日足チャートで見ると25日移動平均線に対するプラス乖離率が18%程度まで拡大して目先的な過熱感を強めている。ただし週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。中期成長力や積極的な株主還元姿勢を評価する流れに変化はなく、目先的な過熱感を冷ましながら上値を追う展開だろう。

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