【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エム・ディ・エムの16年3月期業績は増額余地

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本エム・ディ・エム<7600>(東1)は整形外科分野の医療機器商社でメーカー機能を強化している。株価は地合い悪化が影響して戻り高値圏から反落したが、個別の悪材料は見当たらず自律調整局面のようだ。16年3月期業績の増額余地を評価して、14年11月高値698円を目指す展開だろう。

■整形外科分野の医療機器商社、メーカー機能強化して自社製品を拡大

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器商社である。メーカー機能の強化によって高収益体質への転換を推進している。ジョンソン・エンド・ジョンソンとの販売契約が13年3月期に終了したが、米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品の拡販、自社製品比率上昇による売上原価率低下効果で収益改善基調だ。米ODEV社製の人工膝関節製品は中国でも薬事承認を取得している。

 自社製新製品の動向としては、米国で14年1月に米ODEV社製の人工膝関節製品「BKS-Momentum」と「E-Vitalize」を販売開始した。日本では14年5月に人工膝関節製品「BKSオフセットティビアルトレイ」を販売開始した。

 14年9月に米ODEV社製の人工股関節大腿骨ステム「OVATION Tributeヒップシステム」と、ステムヘッド「ODEV BIOLOX deltaセラミックヘッド」を販売開始した。また米ODEV社は人口膝関節製品「KASM」の米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得して販売開始している。

 15年2月に米ODEV社製の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」の薬事承認を取得した。15年5月から販売開始して16年3月期業績に寄与する。より深い膝関節の屈曲を可能としたHigh-Flexタイプの人工膝関節で、現在販売中の「バランスド・ニー・システム」シリーズにHigh-Flexタイプの製品が加わることで、人工膝関節製品の販売拡大が期待される。

 また15年7月にはMaterialise社(ベルギー)と、3D技術を用いた人工股関節置換術に使用する患者毎の手術器械PMIに関して取引契約を締結した。17年から順次販売予定で、注力分野である人工股関節製品の販売拡大に寄与するとしている。

 8月18日には、オズール社(アイスランド)製造のハローベストシステム「ReSolveハローシステムCE」の販売開始を発表した。3.0T-MRI診断装置による撮影を行えることが特徴だ。

■第1四半期は大幅増収増益、16年3月期は増収増益・増配予想で増額余地

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)26億32百万円、第2四半期(7月~9月)26億87百万円、第3四半期(10月~12月)31億59百万円、第4四半期(1月~3月)33億77百万円、営業利益は第1四半期2億39百万円、第2四半期2億53百万円、第3四半期5億38百万円、第4四半期2億65百万円だった。

 整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、当社の業績も下期の構成比が高い傾向があるとしている。

 7月30日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比15.7%増の30億46百万円、営業利益が同37.7%増の3億29百万円、経常利益が同41.8%増の2億81百万円、純利益が同62.2%増の1億81百万円だった。

 売上面で見ると、日本国内では米ODEV社製の人工関節製品、骨接合材料製品が堅調に推移し、脊椎固定器具製品が大幅に伸長した。米国では人工関節製品が順調に推移した。ドル高・円安に伴う換算額増加も寄与した。自社製品売上比率は同4.2ポイント上昇して84.0%となった。

 売上原価率はドル高・円安が影響して同1.3ポイント上昇の28.9%となった。なお医療工具の耐用年数を5年から7年に変更したことにより69百万円の増益要因となった。また販管費は米ODEV社の販売拡大に伴う支払手数料の増加などで同10.2%増加したが、販管費比率は同3.0ポイント低下した。営業外では為替差損益が悪化した。

 セグメント別(内部取引・全社費用等調整前)に見ると、日本は売上高が同10.5%増の19億88百万円、営業利益が同2.4倍の1億72百万円、米国は売上高が同35.2%増の18億29百万円、営業利益が同10.5%増の1億40百万円だった。

 また品目別売上高を見ると、人工関節分野は同15.2%増の19億09百万円(日本が同3.0%増収、米国が同28.8%増収)、骨接合材料分野(日本)は同3.9%増の6億58百万円、脊椎固定器具分野は同55.6%増の3億44百万円(日本が同71.3%増収、米国が同0.7%減収)だった。

 なお売上原価や減価償却費が計画を下回る見通しとなったことなどを要因として、7月30日に第2四半期累計(4月~9月)の利益予想を営業利益と経常利益で各1億50百万円、純利益で80百万円増額修正した。修正後の予想は売上高が前年同期比14.7%増の61億円、営業利益が同1.6%増の5億円、経常利益が同1.2%減の4億円、純利益が同7.0%減の2億円とした。

 通期の連結業績予想は前回予想(4月30日公表)を据え置いて、売上高が前期比12.2%増の133億円、営業利益が同8.1%増の14億円、経常利益が同10.4%増の12億円、純利益が7億円(前期は3億91百万円の赤字)としている。配当予想は同1円増配の年間6円(期末一括)で、予想配当性向は22.7%となる。

 米ODEV社製の人工股間接製品「オベーションヒップシステム」や脊椎固定器具「Pagodaスパイナルシステム」、当社と米ODEV社が共同開発した骨接合材料製品「MODE」シリーズなど、主力製品の販売が日本および米国において好調に推移する。

 さらに14年12月発売の脊椎固定器具「IBISスパイナルシステム」や15年5月発売の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」も寄与する。自社製品比率上昇も寄与して増収増益見込みだ。

 純利益は繰延税金資産取崩の影響一巡も寄与する。想定為替レートは1ドル=120円(15年3月期は1ドル=110円30銭)としている。なお6月末に米国ArthroCare Corporationとの日本国内販売代理店契約を終了したが、業績への影響は軽微としている。

 品目別売上高の計画は、人工関節が同16.2%増の85億10百万円、骨接合材料が同4.8%増の30億20百万円、脊椎固定器具が同26.3%増の13億50百万円、その他が同28.0%減の4億20百万円で、このうち自社製品売上高は同20.0%増の113億90百万円(自社製品比率は前期比5.6ポイント上昇の85.6%)としている。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が22.9%、営業利益が23.5%、経常利益が23.4%、純利益が25.9%である。下期の構成比が高い収益構造であることを考慮すれば高水準であり、通期業績の会社予想に増額余地があるだろう。

■中期経営計画で18年3月期ROE8.0%目指す

 15年4月に発表した16年3月期~18年3月期の新中期経営計画「MODE2017」では、経営目標数値に18年3月期売上高160億円、営業利益20億円、経常利益18億円、ROE8.0%を掲げた。

 中期経営指針を「成長領域への積極投資を通じ新たなステージへ成長を加速させる」として、顧客ニーズに対応した自社新製品の開発強化、10品目以上の自社開発新製品群の継続的市場投入、整形外科領域周辺・隣接分野での調達力強化、製品ラインナップの強化、北米市場での販売拡大、自社製造能力(米ODEV社)の拡大と製造コストのさらなる低減、品質管理の強化、製造から販売・市販後まで一貫した安全管理体制の整備、などの施策を推進する。

 高齢化社会到来も背景として、利益率の高い自社製品の拡販が牽引して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は自律調整局面だが、16年3月期業績増額余地を評価して高値目指す

 株価の動きを見ると、7月9日の年初来安値483円から切り返して8月3日の戻り高値640円までほぼ一本調子に上伸したが、その後は地合い悪化も影響して上値が重くなり、8月21日には570円まで調整した。ただし個別の悪材料は見当たらず自律調整局面だろう。

 8月21日の終値575円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS26円45銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS409円70銭で算出)は1.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線に接近して切り返しのタイミングのようだ。16年3月期業績の増額余地を評価して、14年11月高値698円を目指す展開だろう。

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