【アナリスト水田雅展の銘柄分析】星光PMCはCNFを材料視して年初来高値更新、15年12月期利益増額も評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 星光PMC<4963>(東1)は製紙用薬品事業、樹脂事業、化成品事業を展開し、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)など成長市場・新分野開拓の戦略を推進している。株価はCNFに関する報道を材料視して急伸し、8月21日には年初来高値1187円まで上伸した。目先的にはやや過熱感もあるが、15年12月期の利益予想増額修正も評価して続伸展開だろう。

■製紙用薬品事業、印刷インキ・記録材料用樹脂事業、化成品事業を展開

 DIC<4631>の連結子会社で、製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、および化成品事業(14年4月、興人フィルム&ケミカルズの化成品事業を承継したKJケミカルズを子会社化)を展開している。

 中期経営目標としては18年12月期売上高350億円(既存事業245億円、海外事業70億円、新規事業35億円)、営業利益35億円、売上高営業利益率10%を掲げている。

 高付加価値製品の拡販、中国事業の再構築、東南アジア市場への積極展開、そして次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)、導電性ナノ材料(銀ナノワイヤー)、光学弾性樹脂(OCA)など、成長市場・新分野開拓の戦略を推進する。

■次世代素材CNFの事業化推進

 次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースを、ナノサイズまで細かくほぐすことによって得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴がある。樹脂の補強材として機能させることで、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のCNF開発プロジェクトの中核企業として早期事業化を目指し、13年2月に経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択された。14年6月には産官学連携型コンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」が設立され、当社を含めて100社以上が参画した。そして14年11月には竜ヶ崎工場におけるCNF実証生産設備が完成し、本格的な変性CNFサンプルの提供を開始している。

 銀ナノワイヤーは14年9月からサンプル出荷を本格開始した。直径がナノサイズ、長さがミクロンサイズの繊維状の銀を溶液中に分散させて透明導電性電極を形成し、ウェアラブル端末や大型ディスプレイへの利用が期待されている。

■15年12月期業績予想を増額修正

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)53億36百万円、第2四半期(4月~6月)61億68百万円、第3四半期(7月~9月)60億64百万円、第4四半期(10月~12月)64億02百万円、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期17百万円の赤字、第3四半期77百万円、第4四半期1億19百万円だった。営業損益は第2四半期をボトムとして改善基調だ。

 8月5日に発表した今期(15年12月期)第2四半期累計(1月~6月)の連結業績(5月11日および7月31日に売上高を減額、利益を増額修正)は、売上高が前年同期比5.2%増の121億円、営業利益が同5.0倍の6億24百万円、経常利益が同5.5倍の6億79百万円、純利益が5億32百万円(前年同期は2億65百万円の赤字)だった。

 コスト削減・合理化の進展、中国事業の収支改善、化成品事業の収益拡大などで利益は計画を大幅に上回った。売上原価率は76.9%で同3.9ポイント低下した。営業外では為替差損益が改善した。

 特別利益では、KJケミカルズ子会社化に伴う負ののれん発生益3億70百万円が一巡したが、次世代素材CNFの開発で経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択され、パイロットプラント完成に伴って交付された国庫補助金2億54百万円を計上した。特別損失では、パイロットプラントに係る固定資産圧縮損1億67百万円を計上したが、減損損失6億99百万円が一巡した。

 セグメント別動向を見ると、製紙用薬品事業は売上高が同1.4%増の76億36百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同59.1%増の5億13百万円だった。紙・板紙の国内生産が同2%減少する中でも差別化商品の拡販、コスト削減・合理化の進展、中国事業の収支改善で増収増益だった。

 印刷インキ用・記録材料用樹脂事業は売上高が同13.4%減の26億93百万円、営業利益が同8.5倍の1億19百万円だった。印刷インキの国内生産が同3%減少する中で、オフセットインキ用樹脂、水性インキ用樹脂の売上が減少したが、コスト削減・合理化の進展で営業損益が大幅に改善した。

 化成品事業は、売上高が17億71百万円(前年同期は第2四半期から連結して8億63百万円)、営業利益が2億19百万円(同34百万円の赤字)だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)60億25百万円、第2四半期(4月~6月)60億75百万円、営業利益は第1四半期2億45百万円、第2四半期3億79百万円だった。営業損益は改善基調だ。

 通期の連結業績予想については8月5日に売上高を減額、利益を増額修正した。前回予想(2月12日公表)に対して売上高は17億20百万円減額して前期比2.8%増の246億30百万円、営業利益は2億円増額して同3.8倍の12億円、経常利益は2億20百万円増額して同2.5倍の12億80百万円、純利益は1億50百万円増額して9億80百万円(前期は18百万円の赤字)とした。

 配当予想は前回予想(2月12日公表)を据え置いて前期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)としている。予想配当性向は37.1%となる。

 国内需要が低調なため売上高は計画を下回るが、高付加価値製品の拡販、プロダクトミックスの改善、ロジンなど原材料価格上昇に対する製品価格是正のタイムラグ解消、コスト削減・合理化の進展、KJケミカルズ(化成品事業)の通期連結、KJケミカルズにおける減価償却費の減少、中国事業の収益改善などが寄与して大幅増益見込みだ。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.1%、営業利益が52.0%、経常利益が53.1%、純利益が54.3%と順調な水準である。通期ベースでも収益改善基調だろう。

■株価はCNFを材料視して年初来高値更新

 株価の動きを見ると、7月以降は安値圏900円~1000円近辺でモミ合う展開だったが、8月中旬にCNFに関する報道が相次いだことを材料視して急伸した。8月21日には5月の1148円を突破して1187円まで上伸した。年初来高値更新の展開だ。

 8月21日の終値1147円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS32円32銭で算出)は35~36倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円90銭で算出)は1.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると大陽線を立てて13週移動平均線と26週移動平均線を一気に突破した。強基調に転換したようだ。25日移動平均線に対するプラス乖離率が18%程度まで拡大して目先的には過熱感もあるが、15年12月期の利益予想増額修正も評価して続伸展開だろう。

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