ジャパンフーズは調整一巡、24年3月期大幅増収増益予想で低PBRも評価材料

ジャパンフーズ<2599>(東証スタンダード)は飲料受託製造の国内最大手である。成長戦略として品質・生産性の向上、新製品の積極受注、新たな販売領域の創出などで収益の最大化と財務体質の改善を図るとともに、環境・人権に配慮したSDGs目標の設定と達成により、経済価値と社会価値を両立させた「100年企業」を目指すとしている。23年3月期はエネルギーコスト高騰で計画を下回ったものの、前期比では受託製造数増加や生産性向効果上などで営業・黒字転換した。24年3月期は大幅増収増益予想としている。受託製造数増加や生産性向上効果を見込み、売上拡大・単価向上に向けて新製品受注、新規顧客獲得、新たな販売領域拡大にも取り組む方針としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお5月19日に、譲渡制限付株式報酬制度導入に伴う自己株式取得を発表した。株価は24年3月期大幅増益予想を好感して急伸する場面があったが、買いが続かずモミ合いレンジに回帰した。ただし調整一巡し、1倍割れのPBRや自己株式取得も評価して出直りを期待したい。

■飲料受託生産の国内最大手

伊藤忠商事<8001>系で、飲料受託製造の国内最大手である。主要顧客はサントリー食品インターナショナル<2587>、アサヒ飲料、サントリースピリッツ、伊藤園<2593>などの大手飲料メーカーである。品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。

新規ビジネス分野として、連結子会社のJFウォーターサービスが水宅配・ウォーターサーバーメンテナンス事業を展開している。また国内で水宅配フランチャイズ事業やボトルドウォーター製造装置販売を展開するウォーターネット、および中国で清涼飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(東洋製罐と合弁)を持分法適用関連会社としている。

収益面の特性として個人消費や天候などの影響を受けやすい。また飲料業界全体において、夏場の上期(4~9月)は繁忙期となって生産量が増加するのに対して、冬場の下期(10~3月)は閑散期となって生産量が減少する。このため同社も下期は生産量減少で営業損益が赤字となる収益構造だ。23年3月期の四半期別受託製造数は第1四半期が1106.9万ケース、第2四半期が1157.6万ケース、第3四半期が603.5万ケース、第4四半期が930.9万ケースだった。

本社工場の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ラインは、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産体制が強みだ。飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮している。

■飲料受託生産の役割や存在感が一段と高まる

飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの再編や内製拡大による受託製造量減少を懸念する見方もあるが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。

また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。このため飲料受託生産の役割や存在感が高まっている。

■経済価値と社会価値を両立させた「100年企業」目指す

21年12月に公表した中長期経営目標では、5年後目途の定量目標値として、製造数4500万ケース、営業利益10億円、経常利益14億円、連結純利益10億円(単体/コア7億円、事業取込等3億円)、株主資本比率50%以上、ROE10%以上、営業CF30億円、1株当たり配当金52円、連結配当性向25.0%などを掲げている。

そして22年5月に公表した新・中期経営計画「JUMP+++2024 品質経営とサステナビリティ」(23年3月期~25年3月期)では、主要経営目標値を最終年度25年3月期製造数4250万ケース、営業利益7億円、経常利益9億50百万円、連結純利益7億50百万円(単体/コア4億50百万円、事業取込等3億円)、株主資本比率45%、ROE9.3%、営業CF26億円、1株当たり配当金27円、連結配当性向20%を掲げている。引き続き安定したキャッシュを確保する。設備投資は厳選し、借入金返済の促進により財務体質改善を推進する。配当に関しては安定配当27円を継続する方針としている。

品質・生産性の向上、新製品の積極受注、新規顧客の獲得や新たな販売領域の創出などで収益の最大化と財務体質の改善を図るとともに、環境・人権に配慮したSDGs目標の設定と達成により、経済価値と社会価値を両立させた「100年企業」を目指すとしている。

基本方針には、2つのセグメントの継続成長(コアセグメント=本社工場、新規セグメント=事業会社および新ビジネス)、環境配慮・SDGsへの貢献と持続可能な総合S&B(スクラップ&ビルド)計画の実行、人材の更なる活性化(最適配置、育成強化)、キャッシュ・フロー極大化と財務体質の改善を掲げている。

品質経営に関しては、前・中期経営計画で推進してきた「ふかけ(ふ=防ぐ、け=削る、か=稼ぐ)」の更なる進化に取り組み、安全・安心な製品の安定供給、顧客の品質評価の向上、マーケットイン志向による新たなニーズへの対応の強化、人材教育と改善活動の活性化、設備総合効率の追求、環境負荷の軽減、予防保全の徹底によるトラブル防止、生産・物流の効率化によるコスト改善など、製品・サービスと業務プロセスの品質強化を推進する。

コアセグメントに関しては、日本最大級の製造能力を誇る生産面の強みを活かすとともに、更なる品質の向上、生産性の向上およびサステナビリティへの取り組みによる「ものづくり」の付加価値創出を推進する。新規セグメントに関しては、連結子会社および持分法適用会社の業績伸長を目指すとともに、新たなビジネスとして東南アジアでの技術支援やアルコールビジネスなども検討する方針だ。

サステナビリティに関しては、気候変動(脱炭素)関連での温室効果ガス排出量削減2013年比▲30%や、人権尊重関連での女性管理職割合13%などの目標を掲げている。

■23年3月期営業・経常黒字転換、24年3月期大幅増収増益予想

23年3月期の連結業績は、売上高が22年3月期比5.3%増の100億83百万円、営業利益が1億44百万円の黒字(22年3月期は3億87百万円の赤字)、経常利益が3億15百万円の黒字(同1億71百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が13.7%減の1億48百万円だった。配当は22年3月期と同額の27円(第2四半期末10円、期末17円)とした。

エネルギーコストの想定以上の高騰などで計画を下回ったものの、前期比では受託製造数増加や生産性向上効果などで営業・黒字転換した。親会社株主帰属当期純利益は前期の一過性利益が剥落して減益だった。

なお親会社株主帰属当期純利益1億10百万円減益(単体/コアが14百万円減の93百万円、事業取込利益等が96百万円減の1億53百万円)の要因分析は、前期一過性利益(固定資産撤去費用引当金一部取崩、政策保有株式売却益)の反動▲4億10百万円、受注増加等+2億79百万円、生産性向上等(コスト改善)+5億77百万円、エネルギーコスト上昇▲4億60百万円、事業取込利益▲96百万円だったとしている。

国内飲料受託製造事業は受託製造数が4.4%増の3798.9万ケース、売上高が5.3%増の99億50百万円、セグメント利益(調整前経常利益)が1億56百万円の黒字(22年3月期は4億26百万円の赤字)だった。受託製造数は、第1四半期に新型コロナ感染症拡大に伴う行動制限の影響、第3四半期に小売価格低艇の影響を受ける場面があったが、天候要因による市況回復や新たな販売領域の獲得に向けた取り組みの結果、通期ベースでは順調に増加した。利益面は受託製造数の増加に加えて、生産性向上等によるコスト改善効果も寄与した。

海外飲料受託製造事業(中国の持分法適用会社、連結対象期間22年1月~12月期)のセグメント利益は38.1%減の1億30百万円だった。新型コロナ感染症拡大の影響などで売上が減少し、新ライン増設に伴うコスト増加も影響した。その他事業(水宅配事業および水宅配フランチャイズ事業)は売上高が4.9%増の1億34百万円、セグメント利益が35.1%減の29百万円だった。ボトルドウォーターの価格改定を実施したが、コロナ禍に伴う社会変化でオフィス向け製品水の販売が低迷した。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高27億97百万円、経常利益3億88百万円、親会社株主帰属四半期純利益2億87百万円、第2四半期は売上高31億55百万円、経常利益5億82百万円、親会社株主帰属四半期純利益4億24百万円、第3四半期は売上高16億80百万円、経常利益8億16百万円の赤字、親会社株主帰属四半期純利益5億63百万円の赤字、第4四半期は売上高24億51百万円、経常利益1億61百万円、親会社株主帰属四半期純利益98百万円だった。飲料業界は夏場が需要期、冬場が不需要期となる。

24年3月期の連結業績予想は、売上高が23年3月期比12.1%増の113億円、営業利益が4.7倍の6億80百万円、経常利益が2.8倍の8億90百万円、親会社株主帰属当期純利益が2.8倍の7億円としている。配当予想は23年3月期と同額の27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。

大幅増収増益予想としている。原材料費、物流費、人件費などの増加を見込むが、市況回復、新製品受注、新たな販売領域拡大などで受託製造数の増加(9.7%増の4166.0万ケース)を見込み、さらに政府の価格抑制策によるエネルギーコスト改善、生産性向上、事業取込利益か回復なども寄与する見込みだ。

なお、親会社株主帰属当期純利益4億54百万円増益(単体/コアが3億57百万円増の4億50百万円、事業取込利益等が97百万円増の2億50百万円)の要因分析は、受注増加等が+5億60百万円、エネルギーコスト改善が+2億20百万円、生産性向上等(コスト改善)が+3億90百万円、製造経費増加(原材料高等)が▲4億40百万円、その他コスト増加が▲3億70百万円、事業取込利益が+1億円の計画としている。事業取込利益は中国事業の新ライン増設・製造能力増強で利益規模が拡大する見込みだ。

中期経営計画(23年3月期~25年3月期)の2年目となる24年3月期は、品質経営の根幹となる「ひとづくり」「顧客の品質評価の向上」「生産性の向上」を一段と強化するとともに、売上拡大・単価向上に向けて新製品受注、新規顧客獲得、新たな販売領域拡大にも取り組む方針としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年3月末の株主対象

株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は調整一巡

なお5月19日に、譲渡制限付株式報酬制度導入に伴う自己株式取得を発表した。上限6300株・770万で取得期間は23年5月22日~23年6月23日としている。

株価は24年3月期大幅増益予想を好感して急伸す、一気に年初来高値を更新する場面があった。その後は買いが続かずモミ合いレンジに回帰の形となったが、低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。5月9日の終値は1091円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS145円14銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の27円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1553円21銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約56億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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