【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリーク・アンド・リバー社は16年2月期増収増益基調を評価して出直り

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(JQS)はクリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開している。株価は地合い悪化の影響で8月25日の年初来安値450円まで急落したが、28日には536円まで戻して売り一巡感を強めている。依然として売られ過ぎ感の強い水準であり、16年2月期増収増益基調を評価して出直り展開だろう。

■クリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 日本のクリエイティブ分野(映像・テレビ番組・ゲーム・Web・広告などの制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業、およびプロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業を主力として、韓国のクリエイティブ分野、医療・IT・法曹・会計などの分野にも事業展開している。

 クリエイティブ分野(日本)では、13年8月公開のテレビ朝日開局55周年記念劇場公開映画「少年H」(モスクワ映画祭特別賞受賞)の制作を担当したことが評価され、番組制作受託事業が急拡大している。15年2月期の当社制作番組はレギュラーと特番を合わせて24本となった。

 8月26日には白組(東京都)およびハウステンボス(長崎県)と共同で、劇場公開用3DCGアニメ「GAMBAガンバと仲間たち」を共同製作したと発表している。

■新規事業分野を積極展開

 新規事業分野として電子書籍取次および作家、オンラインクリエイター、建築、ファッションクリエイター分野のエージェンシー事業にも展開し、13年12月にはアパレル業界に特化した人材派遣会社インター・ベルを子会社化した。また14年9月にはクラウド関連サービスとしてクリエイティブプラットフォーム「Creators Ship(クリエイターズ・シップ)」のサービスを開始した。

 15年3月には中国最大の電子マンガプラットフォーム「布卡漫画」において一迅社のコミック雑誌「コミック百合姫」中国語電子版の配信を開始した。一迅社の人気コミック単行本の中国語電子版を制作して同プラットフォームで順次配信する。またサイブリッジが運営するWebデザイナーのためのギャラリーサイト「ikesai.com」内において、Web業界に特化した「キャリア・求人情報」サービスの運営を開始した。

 15年4月にはプロフェッショナルメディア(トータルブレーンが運営する人材紹介・派遣事業および広告業界特化型情報事業「広告転職.com」「クリエイティブ派遣.com」を新設分割して設立)を連結子会社化した。広告分野における人材事業を強化する。

 また子会社C&R上海と中国のエンターテインメント企業DragonPRCの共同出資で、中国市場に向けたコミック・ゲームの配信取次事業を行う合弁会社を立ち上げる。日本企業として初めてスマホ中国1位の小米に日本マンガをプリインストール配信することが決定した。

 15年5月にはエコノミックインデックスの第三者割当増資を引き受けて持分法適用関連会社化した。同社のデータ解析技術を活かし、当社グループのクライアントに対して商品やサービスの販売促進、広告効果の検証、企業イメージの動向把握と維持向上、ブランド価値の定量化などを提供する。

 15年6月には、会計分野の子会社ジャスネットコミュニケーションズが日本初の経理・財務分野に特化したオンライン教育動画プラットフォーム「アカウンタンツライブラリー」を開始すると発表した。さまざまな企業や事務所から提供される経理・財務分野に特化した教育講座が学べるプラットフォームを構築し、経理パーソンの学習支援、会計事務所の自社ブランド販路拡大などに繋げるサイトとする。

 また15年6月には、ベトナム最大のマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるPOPSとの業務提携を発表した。海外のMCNとの提携は国内企業として初めてとなる。日越両国の企業が行うOnline動画を使用したプロモーション支援などを推進する。

■16年2月期は増収増益基調で増配

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)60億92百万円、第2四半期(6月~8月)56億97百万円、第3四半期(9月~11月)55億42百万円、第4四半期(12月~2月)55億95百万円、営業利益は第1四半期5億78百万円、第2四半期3億50百万円、第3四半期1億69百万円、第4四半期1億99百万円だった。

 医療分野が季節要因などで第1四半期と第2四半期の構成比が高く、第3四半期と第4四半期は赤字となる収益構造のようだ。主力のクリエイティブ分野(日本)は売上・営業利益とも四半期ベースで拡大基調である。

 また15年2月期の配当性向は19.9%だった。ROEは14年2月期比3.9ポイント上昇して17.0%、自己資本比率は同5.8ポイント上昇して52.6%だった。

 今期(16年2月期)の連結業績予想(4月8日公表)は、売上高が前期比9.0%増の250億円、営業利益が同15.7%増の15億円、経常利益が同13.6%増の15億円、そして純利益が同7.5%増の8億円としている。配当予想は同1円増配の年間8円(期末一括)で予想配当性向は21.2%となる。

 既存事業の各分野における人材需要が高水準であり、主力のクリエイティブ分野(日本)の好調が牽引する。建築・ファッションクリエイターなど新規事業の収益化も進展する。なお第1四半期のシェフ・エージェンシー事業に続いて、第2四半期にはプロフェッサー・エージェンシー事業の立ち上げを予定している。

 セグメント別の売上計画はクリエイティブ分野(日本)が同8%増収、クリエイティブ分野(韓国)が同3%増収、医療分野が同6%増収、その他(4分野)が同23%増収としている。

 第1四半期(3月~5月)は売上高が前年同期比4.6%増の63億69百万円、営業利益が同20.7%減の4億58百万円、経常利益が同21.1%減の4億60百万円、純利益が同29.8%減の2億45百万円だった。増収減益だったが概ね計画水準のようだ。売上高は四半期ベースで過去最高を記録した。

 クリエイティブ分野(日本)が同9%増収、クリエイティブ分野(韓国)が同17%増収と好調に推移したが、IT分野における大型案件の一巡、各セグメントにおける積極的な人員採用による人件費の増加、プロフェッショナルメディアの子会社化などで減益だった。新規事業分野(作家、オンラインクリエイター、建築、ファッション、シェフ等)における先行投資負担の営業利益への影響額は前年同期並みの約50百万円だった。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が25.5%、営業利益が30.5%、経常利益が30.7%、純利益が30.6%である。医療分野の第1四半期と第2四半期の構成比が高くなる収益構造だが、概ね順調な水準だろう。

 中期成長戦略では既存事業で年率10~15%の成長を見込み、新規事業分野の積み上げや収益化も寄与して、18年2月期売上高300億円、営業利益30億円をイメージしている。ロボット、バイオ、ファイナンシャルなどの分野への進出も想定しているようだ。中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して切り返しの動き

 株価の動きを見ると、600円~650円近辺でモミ合う展開だったが、地合い悪化の影響を受けて8月25日の年初来安値450円まで急落した。ただし28日には536円まで戻して売り一巡感を強めている。

 8月28日の終値525円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円74銭で算出)は14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS229円00銭で算出)は2.3倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えている。25日の安値から急反発したが依然として売られ過ぎ感の強い水準だ。また週足チャートで見ると安値圏で長い下ヒゲをつけて調整一巡感を強めている。指標面に割高感はなく、16年2月期増収増益基調を評価して出直り展開だろう。

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