【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ラウンドワンは米国への出店を加速、3%台の高配当利回りも評価材料

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ラウンドワン<4680>(東1)はボウリングなど屋内型複合レジャー施設を運営している。店舗減損処理の影響が概ね一巡し、米国への新規出店加速を新たな成長ドライバーと位置付けている。株価は第1四半期(4月~6月)赤字に対する失望売りや地合い悪化の売りが一巡して切り返す動きだ。16年3月期業績予想の下振れ懸念を織り込んだ可能性があり、3%台の高配当利回りも評価材料として出直りの動きを強めそうだ。

■ボウリングなどを中心とした地域密着の屋内型複合レジャー施設を運営

 ボウリング、アミューズメント、カラオケ、スポッチャ(スポーツを中心とした時間制の施設)などを中心とした、地域密着の屋内型複合レジャー施設を運営している。

 15年3月期末の店舗数は、日本113店舗(北海道・東北10店舗、関東33店舗、中部・東海・甲信越18店舗、関西33店舗、中国・四国・九州・沖縄19店舗)、および米国5店舗の合計118店舗である。

■米国市場への新規出店が新たな成長ドライバー

 店舗減損処理の影響が概ね一巡し、中期成長に向けた重点戦略として、米国を中心とした新規出店による売上拡大、日本国内既存店の売上向上、そして財務基盤の強化を掲げている。

 国内市場は少子高齢化進展でコアターゲットである若年層の減少が予想されているため、今後はカントリーリスクが比較的小さく、その市場規模や年齢構成の面から当社グループにとって開拓余地が大きい米国市場への新規出店を新たな成長ドライバーと位置付けている。

 米国では、既存大型ショッピングモール内への直営による居抜き出店で、当面15店舗を目標として体制を構築する。そして当社グループの財務体質の維持、米国子会社における収益構造の確立ならびにガバナンス体制の強化を進めつつ、海外出店特有のリスクの検討を行いながら、その後の出店を見極める方針だ。

 日本国内の出店に関しては、大型ショッピングモールや複合ビルのテナントなど、初期投資を抑えられ、かつ高い投資効率が見込まれる物件を厳選して出店する。

 日本国内に関しては「少子高齢化」や「情報化社会におけるレジャーの多様化」への対応が不可欠と認識し、既存店の売上向上を図るため、若年層の車離れに対応した無料シャトルバス運行店舗の拡大、シニア層獲得に向けた平日の営業開始時間を早めるなどの施策を推進している。また15年7月17日から料金値上げを実施した。

■16年3月期は減損影響が一巡して最終黒字化予想

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比1.3%増の850億円、営業利益が同3.7%増の68億90百万円、経常利益が同横ばいの61億50百万円、純利益が12億円(前期は45億68百万円の赤字)としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は158.7%となる。

 前期出店(日本2店舗、米国2店舗)の通期寄与などで増収営業増益予想である。国内既存店売上は同3.0%減の想定で、新規出店は9店舗(国内2店舗、米国7店舗)の計画だ。米国子会社による出店を加速し、国内既存店売上対策では7月実施の料金値上げも寄与する。純利益については減損損失および繰延税金資産取り崩しの影響が一巡して黒字化予想だ。

 第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.4%減の188億33百万円、営業利益が71百万円の赤字(前年同期は11億52百万円の黒字)、経常利益が2億16百万円の赤字(同8億30百万円の黒字)、純利益が5億85百万円の赤字(同7億78百万円の黒字)だった。

 サービス別の売上は、ボウリングが同10.7%減収、アミューズメントが同3.3%減収、カラオケが同2.1%減収、スポッチャが同1.4%増収だった。新規出店は1店舗(米国1店舗)で、15年6月末時点の店舗数は国内113店舗、米国6店舗、合計119店舗となった。

 国内既存店売上が同8.5%減と軟調に推移して計画(同4.7%減)を下回り、賃借料・消耗品費・人件費の増加、シャトルバス稼働増に伴う支払手数料の増加などで各利益は赤字だった。なお米国は既存店売上(3店舗、ドルベース)が同27.3%増と好調に推移して、売上高、利益とも計画を上回ったようだ。

 また月次売上動向(米国子会社を除く前年比)を見ると、15年7月は全社が4.2%減、既存店が5.9%減となり、15年4月~7月累計では全社が6.2%減、既存店が7.9%減となった。7月17日実施の料金改定後はアミューズメントを除いて一定の効果がみられるようだ。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率が低水準のため、通期業績の下振れに注意が必要となるが、第2四半期(7月~9月)以降は料金値上げなど国内既存店売上対策の効果に期待したい。

 また中期的には、店舗減損処理の影響が概ね一巡したことに加えて、国内既存店売上対策や米国への新規出店加速が寄与して収益改善基調が期待される。

■株価は売り一巡して切り返し、3%台の高配当利回りも評価材料

 株価の動きを見ると、第1四半期の赤字を嫌気して600円近辺でのモミ合いから下放れの展開となり、さらに地合い悪化も影響して8月25日には年初来安値となる481円まで急落した。ただし31日には550円まで戻している。失望売りや地合い悪化の売りが一巡して切り返す動きだ。

 8月31日の終値547円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS12円60銭で算出)は43倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は3.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS541円88銭)は1.0倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形となって反落したが、急落場面で下ヒゲをつけて調整一巡感を強めている。16年3月期業績予想下振れ懸念を織り込んだ可能性があり、3%台の高配当利回りも評価材料として出直りの動きを強めそうだ。

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