【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ヨコレイは地合い悪化の影響限定的で年初来高値圏、9月末の権利取りも注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ヨコレイ(横浜冷凍)<2874>(東1)は冷蔵倉庫の大手で食品販売事業も展開している。株価は高値圏で堅調に推移している。地合い悪化の影響は限定的のようだ。15年9月期増収増益予想で増額の可能性があり、指標面では1倍割れ水準の低PBRも評価材料だ。9月期末の配当および株主優待の権利取りも注目される。8月20日の年初来高値1042円を試す展開だろう。

■冷蔵倉庫事業と食品販売事業を展開、17年9月期純利益32億円目標

 冷蔵倉庫事業、および水産品・畜産品・農産品などの食品販売事業を展開している。

 14年10月スタートの第5次中期経営計画「Flap The Wings 2017」に基づいて、冷蔵倉庫事業では「COOLネットワークのリーディングカンパニー」を目指し、食品販売事業では「安定的な利益追求を基本としながらも、強みのある商材を全社的に展開する」ことを命題としている。

 目標数値としては17年9月期の売上高1500億円(冷蔵倉庫事業258億円、食品販売事業1242億円)、営業利益57億円、経常利益57億円、純利益32億円、ROE5.1%、配当性向40%以上、EBITDA100億円、自己資本比率52.0%を掲げている。安定・着実な成長で持続的な企業価値向上を目指す方針だ。

■低温物流サービスの戦略的ネットワークを構築

 冷蔵倉庫事業では物流アウトソーシングサービスを軸とした総合低温物流への取り組みを強化し、低温物流サービスの戦略的ネットワーク展開に向けて積極投資を進めている。

 国内では14年4月北海道小樽市・石狩第2物流センター、14年6月大阪市・夢洲物流センター、14年10月宮崎県都城市・都城第2物流センターが竣工した。海外はASEAN地域への展開で14年2月にタイ・ワンノイ物流センター2号棟が竣工した。

 また15年4月には、北海道・十勝物流センターおよび十勝第2物流センター隣接地に「十勝第3物流センター(仮称)」を新設(15年5月着工、16年8月竣工予定)すると発表した。隣接する2センターを含む3センター合計の収容能力は6万1千トンを超え、道内最大級の低温物流基地となる。

 さらに8月11日には、タイ・バンパコン物流センター敷地内に、バンパコン第2物流センターが竣工したと発表した。同センターの稼働により、タイヨコレイ全体の保管収容能力は約9万6000トンとなり、タイ国内トップシェアがさらに拡大した。

■15年9月期は増収増益予想、食品販売事業の営業損益改善で増額の可能性

 今期(15年9月期)の連結業績予想(11月14日公表)は売上高が前期比1.4%増の1436億30百万円、営業利益が同7.2%増の44億円、経常利益が同3.8%増の42億60百万円、純利益が同36.2%増の25億円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は41.4%となる。

 セグメント別計画は、冷蔵倉庫事業の売上高が同5.9%増の236億円、営業利益(全社費用等調整前)が同0.2%増の48億円、食品販売事業の売上高が同0.6%増の1200億円、営業利益が同24.5%増の16億円としている。

 冷蔵倉庫事業では、前期稼働で費用が先行していた北海道小樽市・石狩第2物流センター、大阪市・夢洲物流センター、宮崎県都城市・都城第2物流センター、タイ・ワンノイ物流センター2号棟の収益寄与が期後半に向けて本格化する。食品販売事業は水産品の市況が軟化傾向だが、販路拡充や回転率重視の販売などで収益確保に取り組む方針だ。

 8月12日に発表した第3四半期累計(10月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比10.2%増の1145億52百万円、営業利益が同9.0%減の30億51百万円、経常利益が同5.0%減の32億07百万円、純利益が同0.8%増の20億48百万円だった。

 セグメント別動向を見ると、冷蔵倉庫事業は売上高が同8.5%増の179億74百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同4.5%減の37億43百万円だった。前期新設のワンノイ物流センター2号棟がフル稼働状態に達したことも寄与して、入庫取扱量が同3.3%増、出庫取扱量が同1.5%増、平均保管在庫量が同7.3%増と好調に推移した。ただし減価償却費の増加などで営業減益だった。

 食品販売事業は売上高が同10.5%増の965億53百万円、営業利益が同17.8%減の7億85百万円だった。食品相場の軟化や円安の影響で営業減益だった。ただし不採算在庫圧縮徹底や戦略的商材拡販などの効果で、四半期別にみると第2四半期累計(10月~3月)までの減益基調から、第3四半期(4月~6月)は増益(前年同期比2.6倍の5億22百万円)に転じた。

 なお15年9月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)399億38百万円、第2四半期(1月~3月)350億45百万円、第3四半期(4月~6月)395億69百万円で、営業利益は第1四半期12億95百万円、第2四半期5億28百万円、第3四半期12億28百万円だった。そして食品販売事業の営業利益は第1四半期3億30百万円の黒字、第2四半期67百万円の赤字、第3四半期5億22百万円の黒字だった。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が79.8%、営業利益が69.3%、経常利益が75.3%、純利益が81.9%である。食品販売事業の営業損益が改善基調であることを考慮すれば、通期会社予想に増額の可能性もありそうだ。

■株価は高値圏で堅調、地合い悪化の影響限定的で9月末の権利取り注目

 株主優待については毎年9月30日現在の1000株以上保有株主に対して実施している。優待内容は1000株以上~3000株未満保有株主に対して鮭切身詰め合わせ、3000株以上保有株主に対して北海道産ホタテ・いくらセットを贈呈する。

 株価の動きを見ると高値圏で堅調に推移している。8月20日の年初来高値1042円から、地合い悪化の影響で25日に918円まで調整する場面があったが、素早く1000円近辺に戻している。地合い悪化の影響は限定的のようだ。

 9月2日の終値983円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS48円31銭で算出)は20~21倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1135円88銭で算出)は0.9倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドだ。15年9月期増収増益予想で増額の可能性があり、指標面では1倍割れ水準の低PBRも評価材料だ。9月期末の配当および株主優待の権利取りも注目される。年初来高値1042円を試す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る