【アナリスト水田雅展の銘柄分析】CRI・ミドルウェアはほぼ底値圏、中期成長力を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 CRI・ミドルウェア<3698>(東マ)はゲーム開発などを支援するミドルウェア「CRIWARE」を開発・許諾販売している。株価は地合い悪化も影響して8月25日の上場来安値1212円まで急落したが、その後は売り一巡感を強めている。IPO直後の上場来高値から2割の水準まで調整してほぼ底値圏だろう。中期成長力を見直して反発展開が期待される。

■ゲーム・遊技機分野を中心にミドルウェアを許諾販売

 01年8月CSK総合研究所の100%子会社としてシーアールアイ・ミドルウェア設立、04年5月当社役員・従業員によるEBOの形で親会社から独立、05年1月現CRI・ミドルウェアに商号変更、14年11月東証マザーズに新規上場した。

 ゲーム開発などを支援するミドルウェアの開発および許諾販売を展開している。音声・映像関連に特化したミドルウェアを、製品ブランド「CRIWARE」として、特にゲーム分野や遊技機分野を中心に展開している。

 国内唯一の音声・映像ミドルウェア開発企業で、当社のミドルウェア「CRIWARE」を採用したアプリの増加に伴って許諾料収入が増加するストック型ビジネスモデルだ。

 ミドルウェアというのは、ハードウェアやOS(基本ソフト)と、アプリケーションソフトウェアとの中間(ミドル)に位置するソフトウェアのことである。ハードウェアやOSの特性を押さえながら違いを吸収し、その上で実行されるアプリケーションの動作や開発をスムーズにする。

■「CRIWARE」採用実績は世界で3000タイトル突破

 当社の「CRIWARE」は、独自開発(特許取得)した音声・映像圧縮フォーマットで著作権対象コンテンツなどの音声・映像データを保護する、複数のハードウェアやOSに共通の開発環境でスマートフォンやゲーム機といったアプリケーションのマルチプラットフォーム開発を容易にする、などの強みを特徴としている。

 ゲーム分野ではゲーム・アプリ開発事業者向けに、統合型サウンドミドルウェア「CRI ADX2」、高画質・高機能ムービーミドルウェア「CRI Sofdec2」、ファイル圧縮・バッキングミドルウェア「ファイルマジックPRO」などを主力製品としている。

 主要なゲーム開発会社に採用され、全世界での「CRIWARE」採用実績は15年4月現在で3000タイトルを突破した。1990年代には家庭用ゲーム分野で当社の「CRIWARE」がデファクトスタンダードとなり、最近ではスマートフォンゲーム開発においても採用が増加基調である。

 なお15年9月期第3四半期における「CRIWARE」採用率は、スマートフォンゲーム(アプリランキング上位100社における「CRIWARE」採用アプリ数の割合)で約16%、家庭用ゲーム(14年10月~15年3月発売の上位126タイトルにおける「CRIWARE」採用ゲーム数の割合)で約30%となっている。

 遊技機分野では、遊技機向けプラットフォームに特化して、高音質・高機能サウンドミドルウェア「CRI ADX7」、高画質・高機能ムービーミドルウェア「CRI Sofdec7」などを主力製品としている。なお遊技機メーカーにミドルウェアを提供するだけでなく、遊戯機向けのチップ・ボードを製造するハードウェアメーカーにも提供し、特定メーカー向けにミドルウェアをカスタマイズする受託開発業務も行っている。

 新規分野としては、家電や業務用機器で音声や映像インターフェースが必要とされる分野、ライブ中継や動画配信などネットワークを活用した映像配信分野、さらに医療・ヘルスケア分野でのクリニック向け予約システム開発や製薬MR向けiPadソリューションなど医療タブレットソリューション市場への事業展開を開始している。

■中期成長に向けてアライアンスも活用

 中期成長に向けて、アライアンス戦略も活用しながら、新技術開発、海外展開、さらにスマートフォン動画広告市場や医療タブレットソリューション市場など新規事業分野への展開を加速する方針だ。

 14年9月には「CRIWARE」が、ゲーム史上最高と言われる制作費5億ドルの超大作アクションシューティング「Destiny」(Bungie開発、Activisionパブリッシング)に採用された。ムービーシーンの高画質再生を実現して映像美をサポートする。これを機に米国からの引き合いも増加しているため、今後は海外展開も強化する方針だ。

 15年6月には在宅医療向けソリューションで、慶應義塾大学医学部が行う「在宅医療支援プログラム」構築プロジェクトに参画した。エンターテインメント業界で培った音声・映像・通信技術を活用して、患者、訪問医、病院間の連携をタブレットソリューションで支援する。

 15年7月には、Androidアプリ開発のボトルネックとなっていた音ズレ(音声再生遅延)を解決する「Android音声再生遅延推測機能」を「CRIWARE」に搭載した。音楽とゲーム描画のズレを自動補正するスマートフォンゲームの開発が可能になる。

 15年8月には、スマートフォンゲーム業界向け「CRIWARE」の知名度向上や販売強化を目的として「CRIWAREアンバサダー・プログラム」をスタートし、アドウェイズ<2489>およびエクストリーム<6033>と提携した。

 提携する企業が「CRIWAREアンバサダー」となって、スマートフォンゲームの開発会社やプロジェクトチームに「CRIWARE」の紹介を行うプログラムだ。提携企業のサービスと「CRIWARE」を組み合わせて、顧客が抱える課題に対して、より強力に解決策を提案することが可能になる。また販路拡大に加えて、将来的にはスマートフォン広告市場向けに「CRIWARE」を活用することも検討する。

■15年9月期増収増益予想

 今期(15年9月期)の連結業績予想(11月27日公表)は、売上高が前期比12.3%増の12億86百万円、営業利益が同20.4%増の2億59百万円、経常利益が同11.8%増の2億48百万円、純利益が同10.2%増の1億56百万円としている。配当予想は無配継続としている。

 主力のゲーム分野が順調に推移して増収増益予想だ。分野別売上高の計画については、ゲーム分野(スマホ含む)が同27.9%増の7億20百万円、遊技機分野が同13.6%減の3億80百万円、新規分野が同31.2%増の1億85百万円としている。

 第3四半期累計(10月~6月)の連結業績は売上高が前年同期比3.3%増の8億32百万円、営業利益が同12.8%減の1億50百万円、経常利益が同16.8%減の1億46百万円、そして純利益が同24.0%減の88百万円だった。

 売上原価における外注費の増加、販管費における人件費の増加などで営業減益だったが、売上面では主力のゲーム分野が順調に推移しているようだ。なお売上総利益率は61.9%で同3.0ポイント低下、販管費比率は43.9%で同0.3ポイント上昇した。また営業外収益では為替差益が増加し、営業外費用では上場関連費用を計上している。

 分野別売上高は、ゲーム分野(スマホ含む)が同19.3%増の4億66百万円、遊技機分野が同21.0%減の2億56百万円、新規分野が同21.5%増の1億09百万円だった。

 ゲーム分野では「CRIWARE」の新規採用数が合計212(スマートフォンアプリ97、家庭用ゲーム106、その他9)と順調に増加した。特にスマートフォン向けは、ランキング上位の人気タイトルの採用が拡大しているようだ。また家庭用ゲーム機向けミドルウェアは、数多くの有力なゲーム開発会社に継続的に採用されているため、市場が縮小する中でも許諾売上は堅調に推移した。

 遊技機分野では、昨年の型式試験の運用変更や自主規制などの影響もあり、開発投資の先送りや新規遊技機の出荷減少など厳しい市場環境が続いているようだ。ただし当社のミドルウェアは開発効率化や演出表現リッチ化のニーズを捉えているため、中期的スパンでのシェア拡大余地は大きいとしている。また新規分野では、医療・ヘルスケア分野でタブレットソリューションの提案・導入が進み、クリニック向け予約システム構築などが順調に拡大したようだ。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)2億89百万円、第2四半期(1月~3月)3億11百万円、第3四半期(4月~6月)2億32百万円、営業利益は第1四半期67百万円、第2四半期71百万円、第3四半期12百万円だった。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が64.7%、営業利益が57.9%、経常利益が58.9%、純利益が56.4%である。やや低水準のため通期下振れにも注意が必要だが、主力のゲーム分野が好調に推移し、ストック型収益の積み上げで第4四半期(7月~9月)の挽回が期待される。

■株価はほぼ底値圏

 株価の動き(15年4月1日付で株式3分割)を見ると、IPO人気離散後は水準を切り下げて調整局面が続いている。足元では第3四半期累計の減益を嫌気して2000円台でのモミ合いから下放れの展開となり、さらに地合い悪化も影響して8月25日の上場来安値1212円まで急落した。ただし9月1日には1488円まで戻す場面があり売り一巡感を強めている。

 9月2日の終値1333円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS36円75銭で算出)は36~37倍近辺、実績PBR(15年9月期第3四半期末実績の連結BPS323円92銭で算出)は4.1倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形となって水準を切り下げた。ただし14年12月IPO直後につけた上場来高値6773円から2割の水準まで調整してほぼ底値圏だろう。中期成長力を見直して反発展開が期待される。

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