【鈴木雅光の投信Now】「One for all」を実践しないと投資信託は儲からない

「One for all」、という言葉があります。ダルタニアン物語に出てくる言葉で、日本語だと「一人は皆のために」と訳されます。ラグビーにおけるチームワークの重要性を示す言葉として用いられるケースが多いと思います。

この言葉、投資信託にも当てはまります。

投資信託は、大勢の受益者から集めた資金をひとまとめにしてファンドを組成し、株式や債券に投資します。昔の投資信託には、運用が開始されてから一定期間、中途解約できない「クローズド期間」が設けられていましたが、今はクローズド期間を設けず、いつでも自由に解約できるタイプの投資信託が中心です。

さて、いつでも自由に解約できるのは、メリットでしょうか、それともデメリットでしょうか。

受益者からすれば、いつでも解約できるのは、ある種の安心感につながります。自分が必要な時にキャッシュを手に出来るのですから、当然です。これは個人レベルの話だけでなく、機関投資家も余資運用に際しては、資金の流動性を非常に重視しています。

逆に、流動性が非常に低い資産への投資には、極めて慎重です。

では、投資信託を運用する側にとって、流動性の高さは正義かというと、決してそうではありません。運用者は出来るだけ長く、ファンド内に資金が止まることを常に望んでいます。加えて言えば日々、資金流出入が繰り返されるなかで、資金流入額が資金流出額を上回る状態が続けば良いと考えているでしょう。その方が良い運用成績を維持しやすいからです。

もし、解約が急増し、資金流入額に比べて資金流出額が多くなると、そのファンドはポートフォリオの一部を取り崩さなければなりません。その際、保有している株式や債券を売却するためのコストが掛かります。

またマーケットが下げた時、安い値段で株式や債券を仕込もうとしても、資金が流出していると難しくなりますが、安定的に資金が流入していれば、安値で思い切り仕込めます。これが、次の上昇局面において、大きな差となって表れてきます。当然、安値で組入銘柄をたくさん仕込めたファンドの方が、運用成績は良くなる可能性が高まります。

「投資信託は長期保有で」と言われる根本的な理由が、ここにあります。仮にマーケットの環境が悪化し、基準価額が大きく下げたとしても持ち続ける。よほど手元資金に困った時以外は解約しない。受益者一人ひとりがそういう意識を強く持ち、マーケットが乱高下しても淡々と保有し続けられれば、そのファンドの運用成績は、資金流出が激しいファンドに比べて着実に良くなります。まさに受益者一人ひとりの意識が、受益者全員の資産形成を支えているのです。

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