【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンインベストメントアドバイザーは悪地合いで急落したが売られ過ぎ感、中期成長力に対して評価不足

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)<7172>(東マ)はオペレーティング・リース、環境エネルギーファンドといった金融ソリューション事業を主力に、中期成長に向けてPE投資やIR支援など事業領域拡大戦略を推進している。株価は悪地合いの影響で上場来安値近辺まで急落したが売られ過ぎ感が強い。15年12月期増収増益基調や中期成長力を考慮すれば評価不足だろう。

■オペレーティング・リースを主力に投資銀行分野へ積極展開

設立(06年9月)時からのオペレーティング・リース事業を主力として、07年2月M&Aアドバイザリー事業、14年5月太陽光発電の第1号ファンドを組成して環境エネルギーファンド事業に参入した。さらに14年12月には投資銀行本部を設置し、投資銀行分野に事業領域を拡げて金融ソリューション事業を展開している。

主力のオペレーティング・リース事業は、11年8月設立の子会社JPリースプロダクツ&サービシイズ(JLPS)が第二種金融商品取引業登録業者として、航空機や海運コンテナを主対象に展開している。なお米CAI社(NY証券取引所上場)と07年1月合弁で設立したCAIJ社(コンテナ・オペレーティング・リース事業)を持分法適用関連会社としている。

オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業の組成・販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱だ。なお当社の会計上の売上高認識基準は、顧客(投資家)から案件ごとに募集している出資金の販売すべてが終了した時点において、出資金に含まれる手数料を売上高として計上する。

14年9月の東証マザーズ上場によって知名度・信用力が向上し、資金調達力や営業力も向上した。一方で、主要顧客である中堅・中小企業の収益改善や法人実効税率の段階的引き下げ実施期待も背景として、全国に広がる顧客(投資家)の投資意欲は高水準である。

■中期成長に向けて環境事業を拡大、PE投資やIR支援にも進出

オペレーティング・リース事業、M&Aアドバイザリー事業、太陽光発電の環境エネルギーファンド事業といった金融ソリューション事業を拡大させるとともに、中期成長に向けてM&Aも活用しながら、PE投資やIR支援など事業の多角化を加速している。

15年5月にLEシステム(福岡県)の株式を取得して資本業務提携した。同社の電力備蓄用バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)は太陽光発電の出力抑制に有効な蓄電システムとして期待されている。さらにバイオマス発電に関するノウハウも豊富であり、当社の投資ネットワークやファイナンス技術との補完によって、再生エネルギー分野でのシナジー効果を創出する。

今後LEシステムへの出資比率引き上げも含めて、環境エネルギー事業を一段と拡大させる方針だ。

なお9月4日付の日本経済新聞電子版ニュースでは「LEシステムが17年をメドにバナジウムレドックスフロー電池を製品化する方針」と報じている。主要材料である電解液の安価な製造法など独自技術の開発に成功したとしている。製品化した大容量電池を再生エネルギー取扱業者などに販売するほか、災害時の非常用電源として自治体などからの需要を見込み、電解液を他のメーカーに供給することも検討しているようだ。

15年8月にはプライベート・エクイティ(PE)投資事業に本格的に進出するため、100%出資のPEファンドJPE第1号を設立してバリューアップ投資を開始すると発表した。当面は3億円を上限として当社100%出資で運営するが、将来的には投資家からの資金も受け入れる予定だ。

そして第1号案件として、日本マンパワーのグループ会社で人材派遣・紹介事業を展開するNMPスペシャリストの全株式を取得した。NMPスペシャリストは当社グループ入りと同時に日本マンパワーと包括的業務提携を締結し、当社の主要顧客である全国の優良な中堅・中小企業向け人材供給、ならびに人材育成・教育やキャリアアップへの参画を図る。3年後の上場を目指すとしている。

また9月1日には日本証券新聞および日本証券新聞リサーチの全株式を取得して子会社化(8月13日公表)した。両社を通じて新聞・出版・広告を中心としたメディア関連事業、およびIR(投資家向け広報)支援事業に進出する。当社が持つ金融機関や会計事務所などとのネットワークを最大限活用し、さまざまな金融情報の提供、全国の上場会社へのIR支援業務を積極的に展開する方針だ。

なお9月2日付の日刊工業新聞は「ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)が企業に社外取締役候補の紹介とマッチングする事業を月内にも始める」と報じている。グループ会社で人材派遣などを手がけるNMPスペシャリストを通じて中小企業診断士を紹介する。企業側に対しては、IR支援サービスで上場企業と幅広い接点がある日本証券新聞リサーチなど、JIAグループのネットワークを活用して提案する。

■15年12月期増収増益基調(7月29日に増額修正)

今期(15年12月期)の連結業績予想(7月29日に増額修正)は、売上高が前期比2.1倍の22億21百万円、営業利益が同95.7%増の10億45百万円、経常利益が同60.1%増の10億90百万円、そして純利益が同54.8%増の6億55百万円としている。配当予想については無配継続としている。オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業とも案件組成および出資金販売が大幅伸長する。

第2四半期累計(1月~6月)は、売上高が前年同期比52.5%増の7億80百万円だったが、営業利益が同0.4%減の2億79百万円、経常利益が同39.8%減の1億66百万円、純利益が同36.1%減の1億07百万円だった。

販管費の増加で営業利益が微減となり、営業外費用の増加(支払利息、支払手数料、為替差損の増加)も影響して経常減益、最終減益だった。しかしオペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業とも、案件組成および出資金販売が大幅に伸長した。

組成は航空機2件(組成金額222億93百万円)、コンテナ1件(同36億24百万円)、太陽光発電3件(同18億25百万円)の合計6件、販売は航空機4件(販売金額49億63百万円)、コンテナ2件(同17億72百万円)、太陽光発電3件(同16億65百万円)の合計9件(同84億01百万円)だった。また第2四半期末の商品在庫として航空機4件(募集総額98億74百万円)、コンテナ1件(同11億22百万円)の組成を完了している。

販売ネットワークは新たに地方銀行8行、税理士・会計事務所13事務所とビジネスマッチング契約を締結し、累計提携先は地方銀行19行、証券会社6社、税理士・会計事務所80事務所となった。また資金調達枠(コミットメントライン融資枠・当座貸越契約等)は14年12月期末比30.0億円増加の52.3億円となった。

なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)4億30百万円、第2四半期(4月~6月)3億50百万円、営業利益は第1四半期1億85百万円、第2四半期94百万円だった。

通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が35.1%、営業利益が26.7%、経常利益が15.2%、純利益が16.3%と低水準の形だが、下期(7月~12月)に多くの案件を抱えているため、特に第4四半期(10月~12月)に売上高が膨らむ見込みとしている。通期ベースで増収増益基調に変化はないだろう。

■案件供給、販売とも需要は高水準推移

案件供給面では、オペレーティング・リース事業における航空機部門、海運コンテナ部門とも、レッシー(賃借人)からの引き合いが途絶えることなく、潜在需要が豊富な状態が続いている。また環境エネルギーファンド事業においても潜在的な案件数は豊富である。

販売面では、知名度・信用力向上に伴って全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社等からの顧客紹介が一段と増加傾向だ。航空機オペレーティング・リースはレッシー(賃借人)が欧米のナショナルフラッグ・キャリアと呼ばれる一流航空会社であることも好評の一因である。

また為替リスクがない太陽光発電ファンドも、安定利回り商品として投資家ニーズが高く、販売開始から短期間で完売している。15年12月期は太陽光発電ファンドの組成も大幅に増加させる方針だ。

■純利益ベースで毎期50%以上の成長を計画

中長期成長戦略として、第1ステージは航空機・オペレーティング・リース事業での競争力の高い商品供給による規模の拡大、第2ステージは参入障壁が比較的高く、物件価値が比較的安定しているコンテナ・オペレーティング・リース事業でのラインナップ充実、第3ステージはオペレーティング・リースの代替商品として、太陽光発電を中心とした環境エネルギーファンド事業の強化を推進してきた。

そして今後の第4ステージでは、当社の優良中堅・中小企業の顧客基盤を十分に拡充しつつ、M&Aアドバイザリー事業、プライベート・エクイティ(PE)投資事業、不動産投資事業、事業承継・再生ファンド事業、ウェルス・マネジメント事業、中小企業に対する人材紹介事業など、金融ソリューション事業を中心にM&Aも積極活用して事業領域を広げる方針だ。

オペレーティング・リース事業の継続的強化、環境エネルギーファンド事業の拡大、全国に広がる幅広い投資家層ニーズにマッチングした最適な金融商品とソリューションの提供に向けて、組成面では旺盛な投資家ニーズに対応した案件供給、新規賃借人の開拓、安定かつ機動的な資金調達力の確保、運用型商品の開発、販売面では全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社などとの連携による販売ネットワークの拡充を推進する。

白岩直人代表取締役社長は「当社の商品は現在検討されている税制改正に対する準備ができているため有利な状況だ」「顧客の投資意欲は旺盛であり、顧客ニーズに対応した競争力の高い商品の提供や事業領域の拡大を加速する」と述べている。さらに「M&Aも積極活用して事業多角化やシナジー創出という成長戦略を推進し、純利益ベースで毎期50%以上の成長を計画している」と高成長に自信を見せている。

主力のオペレーティング・リース事業は高水準の需要を背景として一段の拡大が予想される。さらに環境エネルギー事業やPE投資事業なども本格化して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は悪地合いで売られ過ぎ感、中期成長力に対して評価不足

株価の動き(15年1月1日付で株式5分割)を見ると、悪地合いの影響を受けて1400円~1800円近辺のレンジから下放れた。そして8月25日には885円まで急落し、14年9月の上場来安値870円に接近する場面があった。ただしその後は1100円~1200円近辺に戻して売り一巡感を強めている。

9月4日の終値1087円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS58円86銭で算出)は18~19倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS122円78銭で算出)は8.9倍近辺である。

日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率は17%であり、依然として売られ過ぎ感の強い水準だ。また週足チャートで見ると14年9月の上場来安値を割り込まずに反発し、急落場面で下ヒゲをつけて調整一巡感を強めている。15年12月期増収増益基調や中期成長力を考慮すれば評価不足の印象が強い。

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