【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エム・ディ・エムは急反発して年初来高値圏に回帰、16年3月期業績の増額余地を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本エム・ディ・エム<7600>(東1)は整形外科分野の医療機器商社でメーカー機能を強化している。株価は急落した8月25日の直近安値494円から急反発し、600円台を回復して年初来高値圏に回帰した。9月以降の悪地合いの影響は限定的だ。16年3月期業績予想の増額余地を評価して2月の年初来高値659円、そして14年11月高値698円を試す展開だろう。

■整形外科分野の医療機器商社、メーカー機能を強化して自社製品比率上昇

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器商社である。メーカー機能の強化によって高収益体質への転換を推進している。ジョンソン・エンド・ジョンソンとの販売契約が13年3月期に終了したが、米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品の拡販、自社製品比率上昇による売上原価率低下効果で収益改善基調だ。米ODEV社製の人工膝関節製品は中国でも薬事承認を取得している。

 自社製新製品の動向としては、米国で14年1月に米ODEV社製の人工膝関節製品「BKS-Momentum」と「E-Vitalize」を販売開始した。日本では14年5月に人工膝関節製品「BKSオフセットティビアルトレイ」を販売開始した。

 14年9月には米ODEV社製の人工股関節大腿骨ステム「OVATION Tributeヒップシステム」と、ステムヘッド「ODEV BIOLOX deltaセラミックヘッド」を販売開始した。また米ODEV社は人口膝関節製品「KASM」の米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得して販売開始している。

 15年5月には米ODEV社製の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」の販売を開始した。より深い膝関節の屈曲を可能としたHigh-Flexタイプの人工膝関節である。現在販売中の「バランスド・ニー・システム」シリーズにHigh-Flexタイプの製品が加わることで人工膝関節製品の販売拡大が期待される。

 15年7月にはMaterialise社(ベルギー)と、3D技術を用いた人工股関節置換術に使用する患者毎の手術器械PMIに関して取引契約を締結した。17年から順次販売予定で、注力分野である人工股関節製品の販売拡大に寄与するとしている。

 15年8月には、オズール社(アイスランド)製造のハローベストシステム「ReSolveハローシステムCE」の販売開始を発表した。3.0T-MRI診断装置による撮影を行えることが特徴で15年9月から順次発売する。

■16年3月期は増収増益・増配予想で増額余地

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)26億32百万円、第2四半期(7月~9月)26億87百万円、第3四半期(10月~12月)31億59百万円、第4四半期(1月~3月)33億77百万円、営業利益は第1四半期2億39百万円、第2四半期2億53百万円、第3四半期5億38百万円、第4四半期2億65百万円だった。

 整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、当社の業績も下期の構成比が高い傾向があるとしている。

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の利益予想について、7月30日に営業利益と経常利益を各1億50百万円、純利益を80百万円増額修正した。売上原価や減価償却費が計画を下回る見通しとなった。修正後の会社予想は売上高が前年同期比14.7%増の61億円、営業利益が同1.5%増の5億円、経常利益が同1.3%減の4億円、純利益が同7.3%減の2億円としている。

 通期の連結業績予想は前回予想(4月30日公表)を据え置いて、売上高が前期比12.2%増の133億円、営業利益が同8.1%増の14億円、経常利益が同10.4%増の12億円、純利益が7億円(前期は3億91百万円の赤字)としている。配当予想は同1円増配の年間6円(期末一括)で予想配当性向は22.7%となる。

 米ODEV社製の人工股間接製品「オベーションヒップシステム」や脊椎固定器具「Pagodaスパイナルシステム」、当社と米ODEV社が共同開発した骨接合材料製品「MODE」シリーズなど、主力製品の販売が日本および米国において好調に推移する。

 14年12月発売の脊椎固定器具「IBISスパイナルシステム」や15年5月発売の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」も寄与する。自社製品比率上昇も寄与して増収増益予想だ。

 純利益は繰延税金資産取崩の影響一巡も寄与する。想定為替レートは1ドル=120円(15年3月期は1ドル=110円30銭)としている。なお6月末に米国ArthroCare Corporationとの日本国内販売代理店契約を終了したが、業績への影響は軽微としている。

 品目別売上高の計画は、人工関節が同16.2%増の85億10百万円、骨接合材料が同4.8%増の30億20百万円、脊椎固定器具が同26.3%増の13億50百万円、その他が同28.0%減の4億20百万円で、このうち自社製品売上高は同20.0%増の113億90百万円(自社製品比率は前期比5.6ポイント上昇の85.6%)としている。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比15.7%増の30億46百万円、営業利益が同37.7%増の3億29百万円、経常利益が同41.8%増の2億81百万円、純利益が同62.2%増の1億81百万円だった。

 日本では米ODEV社製の人工関節製品や骨接合材料製品が堅調に推移し、脊椎固定器具製品が大幅に伸長した。米国では人工関節製品が順調に推移し、ドル高・円安に伴う換算額増加も寄与した。自社製品売上比率は同4.2ポイント上昇して84.0%となった。

 ドル高・円安の影響などで売上総利益率が同1.3ポイント低下し、販管費も米ODEV社の販売拡大に伴う支払手数料増加などで同10.2%増加したが、販管費比率は60.3%で同3.0ポイント低下した。

 品目別の売上高は、人工関節が同15.2%増の19億09百万円(日本が同3.0%増収、米国が同28.8%増収)、骨接合材料(日本)が同3.9%増の6億58百万円、脊椎固定器具が同55.6%増の3億44百万円(日本が同71.3%増収、米国が同0.7%減収)だった。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が22.9%、営業利益が23.5%、経常利益が23.4%、純利益が25.9%である。下期の構成比が高い収益構造であることを考慮すれば高水準であり、通期業績の会社予想に増額余地があるだろう。

■中期経営計画で18年3月期ROE8.0%目指す

 15年4月に発表した16年3月期~18年3月期の新中期経営計画「MODE2017」では、経営目標数値に18年3月期売上高160億円、営業利益20億円、経常利益18億円、ROE8.0%を掲げている。

 中期経営指針を「成長領域への積極投資を通じ新たなステージへ成長を加速させる」として、顧客ニーズに対応した自社新製品の開発強化、10品目以上の自社開発新製品群の継続的市場投入、整形外科領域周辺・隣接分野での調達力強化、製品ラインナップの強化、北米市場での販売拡大、自社製造能力(米ODEV社)の拡大と製造コストのさらなる低減、品質管理の強化、製造から販売・市販後まで一貫した安全管理体制の整備、などの施策を推進する。

 高齢化社会到来も背景として、利益率の高い自社製品の拡販が牽引して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は8月の直近安値から急反発して年初来高値圏

 株価の動きを見ると、悪地合いで急落した8月25日の直近安値494円から急反発の展開となり、600円台を回復して年初来高値圏に回帰した。9月以降の悪地合いの影響は限定的だ。

 9月9日の終値627円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS26円45銭で算出)は23~24倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS409円70銭で算出)は1.5倍近辺である。また時価総額は約166億円である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると8月下旬の急落場面は長い下ヒゲをつけて切り返し、上向きの13週移動平均線がサポートラインの形となった。16年3月期業績予想の増額余地を評価して、2月の年初来高値659円、そして14年11月高値698円を試す展開だろう。

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