【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インテージホールディングスは8月の直近安値から切り返し、16年3月期3期連続増配も評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インテージホールディングス<4326>(東1)は市場調査の最大手で、国内外におけるM&Aも積極活用して業容を拡大している。株価は8月25日の直近安値1680円から切り返して1900円台で推移している。9月以降の悪地合いの影響は限定的のようだ。16年3月期営業増益および3期連続増配も評価して、15年4月の上場来高値2260円を目指す展開だろう。

■市場調査事業を主力にシステムソリューションなども展開

 13年10月に持株会社へ移行した。小売店パネル調査や消費者パネル調査などの市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも事業展開している。

 収益力強化に向けてグループ再編も進めている。14年6月には子会社アスクレップの臨床開発事業を承継したエーケーピーを伊藤忠商事<8001>に譲渡した。アスクレップは医薬情報事業を継続する。また15年4月にはコンサルティング事業を強化するため子会社インテージコンサルティングを設立した。

 16年3月期からセグメント区分を、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業(事業会社インテージ、インテージリサーチ、アクセス・ジェービー、海外子会社)、ヘルスケア分野のマーケティング支援事業(事業会社アンテリオ、アスクレップ、医療情報総合研究所、プラメド)、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンス事業(事業会社インテージテクノスフィア)とした。

 なお8月21日には、アメリカマーケティング協会の「Marketing News」誌に「AMA GOLD GLOBAL TOP50 Report」(グローバルマーケティングリサーチ企業トップ50)が発表され、インテージグループは前年に続いて世界9位にランクインしたと発表している。

■M&A・アライアンスも活用して業容拡大

 国内外における積極的なM&A戦略で業容を拡大している。11年9月ベトナムの市場調査会社FTA、12年9月医療情報総合研究所、12年11月医療関連インターネット調査会社プラメド、13年8月香港の市場調査会社CSG香港を子会社化し、14年5月には子会社INTAGE INDIAがインドの市場調査会社RSMRS社の株式を取得してグループ化した。

 アライアンス戦略では、12年4月NTTドコモ<9437>と合弁会社ドコモ・インサイトマーケティングを設立、13年10月韓国の業界4位の市場調査会社Hankook Researchと包括的事業協力を締結、13年11月インドネシアの市場調査会社DEKA社と合弁会社を設立した。

 14年10月には世界的な情報・調査企業であるニールセンの消費者購買行動分析部門ニールセン・カンパニー合同会社と、小売店パネル調査の相互販売を可能にするパートナーシップを締結した。そして新たな広告効果測定ソリューション開発を目指してインテージ・ニールセン・デジタルメトリクスを設立した。また14年10月には医薬品有害事象情報システムの京都コンステラ・テクノロジーズと資本業務提携した。

 15年7月には、子会社インテージテクノスフィアがクロスコンパス・インテリジェンス(東京都)と、人工知能情報処理技術を活用した企業向け事業に関する資本業務提携契約を締結した。人工知能情報処理技術を当社顧客企業のビジネス課題に適用し、当該技術のシステム実装および運用を行う企業向け事業を展開する方針だ。

■16年3月期営業増益・3期連続増配予想

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)91億78百万円、第2四半期(7月~9月)101億60百万円、第3四半期(10月~12月)107億98百万円、第4四半期(1月~3月)137億89百万円、営業利益は第1四半期2億71百万円、第2四半期10億46百万円、第3四半期12億52百万円、第4四半期10億02百万円だった。期後半の構成比が高い収益構造だ。

 15年3月期のROEは14年3月期比3.3ポイント上昇して13.4%、自己資本比率は同8.8ポイント上昇して59.3%となった。また配当性向は24.5%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期比4.7%増の460億円、営業利益が同6.4%増の38億円、経常利益が同9.4%増の37億70百万円、純利益が同2.6%減の24億円としている。純利益は関係会社売却益が一巡して減益予想だが、市場調査の好調が牽引して増収、営業増益、経常増益予想だ。

 配当予想は同2円50銭増配の年間32円50銭(期末一括)としている。3期連続の増配で予想配当性向は27.2%となる。利益配分については、連結業績をベースに配当と内部留保のバランスを考慮した利益配分を行うことを基本として、連結配当性向の目標は30%を目安としている。

 セグメント別の計画を見ると、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業は売上高が同6.3%増の308億円、営業利益が同3.3%増の19億80百万円、ヘルスケア分野のマーケティング支援事業は売上高が同3.1%増の97億円、営業利益が同17.5%増の13億58百万円、ビジネスインテリジェンス事業は売上高が同1.0%減の55億円、営業利益が同7.5%減の4億62百万円としている。

 パネル調査ではインテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)、i-SSP(インテージシングルソースパネル)、医療情報総合研究所の処方情報分析サービス、カスタムリサーチではアンテリオのヘルスケア関連インターネット調査などが好調に推移する。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比1.6%増の93億27百万円、営業利益が同48.2%増の4億02百万円、経常利益が同69.8%増の4億18百万円だった。純利益は関係会社売却益29億11百万円が一巡して同84.0%減の2億40百万円だった。

 消費財・サービス分野のマーケティング支援事業は売上高が同6.5%増の60億22百万円、営業利益が同55.0%減の53百万円だった。インターネット調査などが好調だったが、コミュニケーション分野に係る開発費用が増加して減益だった。

 ヘルスケア分野のマーケティング支援事業は売上高が同1.0%減の22億14百万円で、営業利益が3億43百万円(前年同期は6百万円の赤字)だった。EDC(電子的臨床検査情報収集)の受注やアンテリオのカスタムリサーチの受注が増加し、アスクレップの一部事業譲渡に伴うコスト削減や業務効率化の効果で営業損益が大幅に改善した。

 ビジネスインテリジェンス事業は売上高が同15.4%減の10億90百万円、営業利益が同96.6%減の5百万円だった。大型案件が一巡した。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が20.3%、営業利益が10.6%、経常利益が11.1%、純利益が10.0%である。低水準の形だが期後半の構成比が高い収益構造であり、現時点ではネガティブ要因とはならない。通期ベースでも好業績が期待される。

 第11次中期経営計画では、重点課題として主力事業再強化による市場価値向上、「モバイル&シングルソース」「グローバル」「ヘルスケア」領域の着実な成長、リサーチの枠にとらわれない新たなビジネスモデルの模索と確立、最適化の視点による戦略立案・推進のマネジメント強化を掲げ、17年3月期売上高520億円、営業利益46億円を目標としている。M&Aやグループ再編も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は8月の直近安値から切り返し

 株価の動きを見ると、悪地合いの影響で急落する場面があったが、8月25日の直近安値1680円から切り返し、足元は概ね1900円台で推移している。9月以降の悪地合いの影響は限定的のようだ。

 9月9日の終値1930円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円25銭で算出)は16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間32円50銭で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS989円01銭で算出)は2.0倍近辺である。時価総額は約388億円である。

 8月の直近安値から切り返し、日足チャートで見ると25日移動平均線、また週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を回復する動きを強めている。16年3月期営業増益および3期連続増配を評価して、15年4月の上場来高値2260円を目指す展開だろう。

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