【アナリスト水田雅展の銘柄診断】Jトラストは調整の最終局面、積極的な業容拡大戦略を評価して切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 Jトラスト<8508>(東2)の株価は、11月28日の1163円から12月16日の978円まで調整した。全般地合い悪化も影響したようだ。ただし10月と11月の直近安値圏950円近辺に接近して調整の最終局面であり、積極的な業容拡大戦略を評価して切り返しのタイミングだろう。

 M&Aや債権承継などを積極活用して業容拡大戦略を推進し、金融サービス事業(事業者向け貸付、消費者向け貸付、クレジット・信販、信用保証、債権買取)、不動産事業、アミューズメント事業、海外金融事業(消費者金融業、貯蓄銀行業)、その他事業(システム開発など)を展開している。

 国内金融分野では、日本保証(12年3月ロプロが武富士の消費者金融事業を承継、12年9月ロプロと日本保証が合併)、KCカード(11年8月楽天KCを子会社化)、クレディア(12年7月子会社化)、個品割賦事業のNUCS(14年3月子会社化)、国内不動産分野・アミューズメント分野ではアドアーズ<4712>(12年6月子会社化)を傘下に置いている。

 なおKCカードは15年1月5日付で「KCブランド」事業をヤフー<4689>とソフトバンク・ペイメント・サービスに譲渡する。これに伴ってNUCSの「NUCSブランド」事業をKCカードに承継させ、グループのクレジットカード事業を「NUCSブランド」として継続し、KCカードは15年1月5日付でJトラストカードに商号変更する。

 海外金融分野では韓国での事業基盤確立を推進している。11年4月に消費者金融の韓国・ネオラインクレジット貸付を子会社化した。12年10月に貯蓄銀行認可を受けた韓国・親愛貯蓄銀行は未来貯蓄銀行の一部資産・負債を承継し、13年1月韓国・ソロモン貯蓄銀行から、13年6月韓国・エイチケー貯蓄銀行から消費者信用貸付債権の一部を譲り受けた。

 14年3月には韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付を子会社化し、14年8月には韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付および韓国・ネオラインクレジット貸付の貸付事業を韓国・親愛貯蓄銀行に譲渡した。今後は韓国・親愛貯蓄銀行の相対的に低金利の預金を原資として事業を運営し、グループ全体として収益構造の改善を進める。

 なお14年6月に韓国スタンダードチャータードキャピタルおよび韓国スタンダードチャータード貯蓄銀行の買収を発表し、株式取得を9月下旬予定としていたが、10月28日に未だ株式取得を行っていないと発表した。株式譲渡契約に基づいて引き続き検討するが、詳細が判明しだい速やかに公表するとしている。

 また11月6日には、自動車割賦金融業を展開する韓国・亜州キャピタルの株式売却に係る優先交渉権を取得したと発表している。売渡人と諸条件について協議を行い、公表すべき詳細が判明しだい速やかに公表するとしている。

 アジアへの展開は13年12月子会社Jトラスト・アジア(シンガポール)がインドネシアのマヤパダ銀行と資本業務提携した。そして14年11月にはインドネシアの商業銀行であるムティアラ銀行の株式99.0%を取得して連結子会社化した。残りの1%も一定の条件が満たされた後に取得する。

 アミューズメント分野では14年9月、子会社アドアーズが韓国でカジノ事業を展開するJBアミューズメント(JBA、韓国KOSDAQ市場上場)の第三者割当増資を引き受けて第2位株主(出資比率9.49%)となった。韓国・済州新羅ホテルでカジノ事業を行うマジェスターを含むJBAグループと協力関係を構築し、アミューズメント事業におけるシナジー創出や事業拡大を目指す。

 不動産分野では14年9月、子会社Jトラストアジアを通じて、シンガポールの不動産開発会社LCD(シンガポール証券取引所上場)の株式29.5%を取得して筆頭株主となった。LCDはタイ、イギリス、ベトナムなどに著名なホテルやサービスアパートメントを保有している。LCDと戦略的協業関係を構築するとともに、シンガポールを拠点として東南アジアに総合的な不動産業を展開する方針だ。なおLCDの商号をJトラスト・インターナショナルに変更予定としている。

 今期(15年3月期)の連結業績見通しは前回予想(8月13日公表)を据え置いて、営業収益(売上高)が前期比11.9%増の692億91百万円、営業利益が同80.7%減の26億56百万円、経常利益が同79.5%減の27億38百万円、純利益が同0.8%増の112億39百万円、そして配当予想(5月14日公表)が前期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。なお韓国スタンダードチャータードキャピタルおよび韓国スタンダードチャータード貯蓄銀行の株式取得に伴う負ののれん発生益を見込んでいる。

 第2四半期累計(4月~9月)は、国内不動産事業の好調、海外事業での新規連結や事業譲受などが寄与して前年同期比10.9%増収だったが、不良債権売却に伴う債権売却損計上などで営業費用が増加し、さらに販管費でKCカードにおける利息返還損失引当金繰入額の増加、海外事業における貸倒引当金繰入額の増加なども影響して営業利益、経常利益、純利益は赤字だった。

 中期成長向けてM&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、今期は一時的に営業費用が増加して営業減益、経常減益の見通しとしている。第2四半期累計は不良債権売却による債権売却損計上や不良資産整理に備えた貸倒引当金積み増しを行ったため赤字だったが、黒字化を見据えた一時的な損失計上であり、今後は収益構造の着実な改善が見込めるとしている。当面はM&A、事業再編、一時的利益・費用の計上などに伴って収益が大幅に変動する可能性があるが、積極的な業容拡大戦略で中期的には収益拡大基調だろう。

 なお11月26日に、子会社クレディアに対する訴訟について和解が成立したと発表している。クレディアが和解金28億50百万円を支払うが、第一審判の言い渡しがあったことに伴い、14年3月期第3四半期連結決算において訴訟損失引当金29億51百万円を計上済みのため、本件訴訟に関して新たな負担が生じることはないとしている。

 株価の動きを見ると、11月28日の直近高値1163円から反落して12月16日の978円まで調整し、上値を切り下げる形となった。全般地合い悪化も影響したようだ。ただし10月と11月の直近安値圏950円近辺に接近して調整の最終局面だろう。

 12月16日の終値987円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS95円24銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.0%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1502円54銭で算出)は0.7倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を割り込んだが、10月と11月の直近安値圏950円近辺が下値支持線だ。また週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、2月の年初来安値905円水準まで下押す動きは見られず、下値固め完了感も強めている。調整のほぼ最終局面であり、積極的な業容拡大戦略を評価して切り返しのタイミングだろう。

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