【アナリスト水田雅展の銘柄分析】カナモトは15年10月期利益減額修正で急落したが売られ過ぎ感

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 カナモト<9678>(東1)は建設機械レンタル大手で海外展開も強化している。株価は15年10月期利益減額修正に対する失望感で急落したが、売られ過ぎ感を強めている。中期的に事業環境は良好であり、1桁台に低下した予想PERも見直して反発のタイミングだろう。

■建設機械レンタルの大手

 建設機械レンタルを主力として、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタルなども展開している。

 北海道を地盤として東北、関東、中部、近畿、九州にも営業拠点網を拡充して全国展開するとともに、12年6月に道路建機レンタルと道路工事施工のユナイトを子会社化して業容を拡大している。

 15年7月には三郷営業所(埼玉県三郷市)と敦賀営業所(福井県敦賀市)を開設し、営業拠点数は177拠点、子会社・アライアンスを含めると359拠点となった。

 また15年7月には有限会社ヱーワ商会(埼玉県)の全株式を取得して子会社化した。同社は大手ゼネコン向け汎用小型建設機械レンタルを主力としている。非連結子会社となるため業績面への直接的な影響はないが、東京都内および関東地域におけるサービス拡大や営業基盤強化に繋がるとしている。

 8月21日には、理工系研究開発要員をメーカー等に派遣している連結子会社カナモトエンジニアリングの全株式を、技術者派遣会社のトラスト・テック<2154>に譲渡すると発表した。15年10月期連結業績への影響は軽微としている。

■17年10月期ROE10%以上目標、成長エンジンとして海外展開強化

 14年9月発表の新長期ビジョンおよび中期経営計画では、55期の19年を見据えたグループの目指す姿を新長期ビジョン「BULL55」として示した。そして実行計画である3ヵ年中期経営計画「BULL53」では、経営目標数値として17年10月期売上高1500億円、営業利益190億円、ROA5.0%以上、ROE10%以上などを掲げた。

 海外では15年1月にインドネシアの現地法人が営業を開始した。新長期ビジョン「BULL55」で海外展開強化を今後の成長エンジンと位置付けており、インドネシアへの進出はその一環としている。

 そして15年6月にはベトナムにおける現地パートナー企業との合弁会社(当社出資比率80%)が営業開始し、15年7月にはタイにおける現地パートナー企業との合弁会社(当社出資比率49%)が営業開始した。

 なお環境保全設備や地下施設建設機械などの製造・レンタル事業を展開する子会社KGフローテクノは、14年4月に中国・上海に現地法人を設立している。

■15年10月期利益予想を減額修正

 14年10月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(11月~1月)331億48百万円、第2四半期(2月~4月)310億64百万円、第3四半期(5月~7月)284億45百万円、第4四半期(8月~10月)328億98百万円で、営業利益は第1四半期56億51百万円、第2四半期44億21百万円、第3四半期27億41百万円、第4四半期36億41百万円だった。

 また14年10月期の配当性向は13.6%だった。ROEは13年10月期比3.5ポイント上昇して15.8%、自己資本比率は同1.4ポイント上昇して33.6%だった。

 9月4日発表の今期(15年10月期)第3四半期累計(11月~7月)連結業績は、売上高が前年同期比6.8%増の989億56百万円、営業利益が同2.5%減の124億98百万円、経常利益が同0.9%増の125億46百万円、純利益が同4.2%増の74億99百万円だった。

 建設需要については、東北の震災復興工事関連や首都圏の開発工事関連などは好調に推移したが、公共投資の減少や地域間格差の顕在化などで、全体としてはやや弱含みとなったようだ。

 建設関連事業は売上高が同5.7%増の918億13百万円、営業利益(連結調整前)が同3.6%減の119億92百万円だった。一部地区において公共工事予算減少の影響を受けたが、東北地区の震災復興工事を中心に総じてレンタル売上が堅調に推移した。中古建機販売も増収だった。ただし全国的な舗装工事の減少で一部の連結子会社の業績が低迷した。

 その他事業は、売上高が同23.7%増の71億43百万円、営業利益が同65.7%増の2億27百万円だった。民間需要の回復で鉄鋼製品が想定以上に大幅伸長した。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(11月~1月)363億27百万円、第2四半期(2月~4月)319億80百万円、第3四半期(5月~7月)306億49百万円、営業利益は第1四半期63億06百万円、第2四半期43億46百万円、第3四半期18億46百万円だった。

 通期の連結業績予想については、第3四半期累計の業績および今後の見通しを踏まえて、9月4日に売上高を増額、利益を減額修正した。前回予想(12月10日公表)に対して、売上高は24億30百万円増額して前期比4.4%増の1310億30百万円、営業利益は10億10百万円減額して同3.1%減の159億50百万円、経常利益は9億50百万円減額して同2.6%減の156億60百万円、純利益は1億80百万円減額して同0.4%増の93億40百万円とした。

 配当予想は前回予想(12月10日公表)を据え置いて、前期比5円減配の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)としている。ただし前期の年間35円には会社設立50周年記念配当15円(第2四半期末に5円、期末に10円)が含まれているため、普通配当ベースでは10円増配となる。予想配当性向は11.6%となる。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.5%、営業利益が78.4%、経常利益が80.1%、純利益が80.3%である。東北や首都圏以外の建設需要は財政支出減少傾向で公共工事に不透明感があり、技能労働者不足による入札不調や着工遅延などの懸念もあるが、通期ベースで増収営業増益が期待される。

■中期的に事業環境は良好

 国内では震災復興関連工事、激甚災害現場復旧工事、防災・減災・耐震化関連工事、老朽化インフラ補修・更新関連工事、都市再開発関連工事などが活発であり、リニア新幹線関連工事や20年東京夏季五輪関連工事も本格化する。

 中期的に良好な事業環境に変化はなく、建機レンタル需要は高水準で推移することが予想される。海外展開強化も寄与して収益拡大基調だろう。

■株価は急落したが売られ過ぎ感

 なお15年8月、JPX日経インデックス400の構成銘柄に新たに選定された。

 また8月6日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限70万株、取得価額総額の上限25億円、取得期間15年8月7日~16年2月5日)については、9月11日(約定ベース)時点で累計取得株式総数70万株、累計取得価額総額20億7219万7887円となって終了した。

 株価の動きを見ると、8月6日発表の自己株式取得も好感して8月19日に3460円まで上伸する場面があったが、15年10月期利益予想の減額修正に対する失望感で9月4日終値3115円から急落し、さらに悪地合いも影響して9月24日の年初来安値2159円まで調整した。

 9月24日の終値2159円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS259円16銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1758円24銭で算出)は1.2倍近辺である。なお時価総額は約779億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形となって調整局面だ。ただし日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が20%を超えて売られ過ぎ感を強めている。15年10月期の利益予想を減額したが中期的に事業環境は良好であり、1桁台に低下した予想PERも見直して反発のタイミングだろう。

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