【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォマートの中期成長シナリオに変化なく、調整一巡して高値圏目指す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インフォマート<2492>(東マ)はフード業界向け企業間(BtoB)電子商取引プラットフォームをベースに各種システムを提供している。株価は悪地合いも影響して7月の戻り高値から一旦反落したが、9月7日の直近安値から切り返す動きだ。15年12月期増収増益基調であり、中期成長シナリオに変化はなく、調整が一巡して高値圏を目指す展開だろう。

■フード業界向け企業間ECプラットフォームが主力

 フード業界向けの企業間(BtoB)電子商取引(EC)プラットフォーム「FOODS info Mart」をベースとして、ASP受発注システム(飲食店チェーンと食材卸売の間の受発注)、ASP規格書システム(食の安全・安心の商品仕様書DB)、ASP商談システム(BtoB専用の販売・購買システム)などをネット経由で提供している。

 14年11月には全ての業界・企業に対応し、企業間の請求書を電子化して請求業務をWeb上で行える「BtoB電子請求書プラットフォーム」(旧名称ASP請求書システム)を開始した。そして15年9月には支払通知書を電子化した「通知書機能」を追加リリースした。

 さらにサービス拡充の一環として、フード業界企業向け総合マーケティングサービス「BtoB F-Marketing」や、フード業界向け情報発信の総合ポータルサイト「フーズチャネル」も開始している。

 なお15年12月期から事業セグメント区分を変更してASP受発注事業(ASP受発注システム)、ASP規格書事業(ASP規格書システム)、ES事業(ASP商談システム、BtoB電子請求書プラットフォーム)、その他(クラウドサービス事業、海外事業)とした。

 子会社はインフォライズがクラウドサービス事業、インフォマートインターナショナル(香港)が海外「FOODS info Mart」事業を展開している。なお15年3月に日立システムズとの合弁事業契約を解消し、インフォライズに対する日立システムズ出資分49%を譲り受けてインフォライズを完全子会社化した。

■利用企業数、取引高、そして月額システム使用料収入は増加基調

 15年6月末時点の「FOODS info Mart」利用企業数(海外事業除く)は、14年12月末比959社増加の3万8119社(売り手企業が同956社増加の3万875社、買い手企業が同3社増加の7244社)となった。また15年6月末の利用事業所数は20万834事業所で、フード業界全体118万6312事業所に対するシェアは16.9%となった。

 そして「FOODS info Mart」年間取引高は14年に13年比1188億円増加の9806億円となり、外食産業における仕入金額ベースのシェアは13年の12.4%から14年の13.6%に上昇した。また15年1月~6月の取引高は5378億円となり、中期目標として掲げた年間システム取引高1兆円は15年に達成が濃厚となっている。

 なお15年6月末時点のBtoB電子請求書プラットフォームの利用企業数は14年12月末比285社増加の581社(受取モデル企業が同225社増加の424社、発行モデル企業が同60社増加の157社)となった。

 顧客企業はネット環境さえあれば月々低料金で最新サービスを利用できるため、大手の食材卸売企業や外食・中食チェーンも利用し、電話やFAXからWebに切り替えて受発注する企業・店舗が増加基調だ。そして利用企業数の増加に伴って月額システム使用料収入が増加するストック型収益構造である。

■業界標準化に向けたシステム連携や他業界向けプラットフォームも推進

 中期成長を加速させる戦略として、業界標準化に向けたシステム連携によるフード業界向けBtoBビジネスの強化、ASP受発注システムの業態およびエリアの拡大、他業界BtoB展開としての美容業界向け「BEAUTY info Mart」や医療業界向け「MEDICAL info Mart」による事業領域拡大、次世代BtoB&クラウドプラットフォームの拡販、顧客ニーズに対応した新機能・サービスのリリース、そして海外事業などを推進している。

 アライアンス戦略では13年5月にJFEシステムズ<4832>、13年6月に東芝テック<6588>、13年11月に東京システムハウス、14年10月にヤマトホールディングス<9064>傘下のヤマトシステム開発とデータ連携している。

 15年1月には全国の商工会議所・商工会等が運営する「ザ・ビジネスモール(B-MALL)」の事務局を務める大阪商工会議所と、全国の企業へ電子請求を推進することを目的として業務提携した。BtoB電子請求書プラットフォームによる企業のコスト削減・効率化で企業の利益アップを応援する。

 15年4月には企業の受発注・請求業務の生産性向上を提供するため、内田洋行<8057>やミロク情報サービス<9928>など19社24ソリューションが提供する販売管理・会計・店舗管理システムとのデータ連携を強化した。利便性の高いビジネスインフラの提供を目指して今後も連携サービスを拡大し、3年後までに利用企業数100万社を目指すとしている。

 さらに企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を提供し、BtoB標準のプラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化している。15年8月には、ICSパートナーズのICS会計ERP「OPEN21de3」シリーズ、マネーフォワードの「MFクラウド会計・確定申告」とシステム連携した。

 また8月20日に15年1月~6月のECO実績を発表した。当社が提供しているBtoBプラットフォームの利用増加による15年1月~6月のECO実績は、A4紙伝票数約8953万枚で、杉の木45万6952本のCO2削減効果となった。

■ストック型収益構造で15年12月期も増収増益基調

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)11億57百万円、第2四半期(4月~6月)12億06百万円、第3四半期(7月~9月)12億66百万円、第4四半期(10月~12月)13億48百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期4億17百万円、第3四半期5億46百万円、第4四半期5億57百万円だった。

 利用企業数の増加に伴ってシステム使用料収入が積み上がるストック型収益構造であり、売上高、利益とも拡大基調だ。また14年12月期の配当性向は49.1%、ROEは13年12月期比11.7ポイント上昇して32.3%、自己資本比率は同5.5ポイント上昇して70.8%だった。

 今期(15年12月期)の連結業績予想(2月13日公表)は、売上高が前期比19.5%増の59億48百万円で、営業利益が同17.4%増の22億83百万円、経常利益が同16.2%増の22億79百万円、そして純利益が同19.3%増の14億04百万円としている。

 各システムの利用拡大に伴ってシステム使用料が順調に増加し、サーバ増強に伴うデータセンター費の増加、新システムリリースに伴うソフトウェア償却費の増加、事業成長に向けた人員増に伴う人件費増加などを吸収して2桁増収増益見通しだ。

 セグメント別売上高の計画は、ASP受発注事業が同12.5%増の33億13百万円、ASP規格書事業が同31.8%増の9億77百万円、ES事業が同28.3%増の15億39百万円、その他が同29.3%増の1億19百万円としている。

 配当予想(2月13日公表)については年間11円76銭(第2四半期末5円88銭、期末5円88銭)としている。15年1月1日付の株式2分割を考慮すると実質的に前期比2円07銭増配で予想配当性向は50.6%となる。配当方針は個別業績に応じた基本配当性向50%としている。

 第2四半期累計(1月~6月)は、売上高が前年同期比14.8%増の27億14百万円で、営業利益が同17.5%増の9億88百万円、経常利益が同18.8%増の9億91百万円、純利益が同21.8%増の6億12百万円だった。全体として計画をやや下回ったが、システム使用料が順調に増加して償却費や人件費(新卒採用中心)の増加などを吸収した。

 セグメント別の売上高は、ASP受発注事業が同13.6%増の15億91百万円、ASP規格書事業が同30.3%増の4億54百万円、ES事業が同10.6%増の6億24百万円、その他が同4.0%減の64百万円だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)13億10百万円、第2四半期(4月~6月)14億04百万円、営業利益は第1四半期5億11百万円、第2四半期4億77百万円だった。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が45.6%、営業利益が43.3%、経常利益が43.5%、純利益が43.6%である。低水準の形だが、システム使用料収入が積み上がるストック型収益構造であることを考慮すれば、概ね順調な水準と言えるだろう。各システムの利用企業数、システム取引高とも順調に増加して、システム使用料収入は増加基調であり、増収増益基調に変化はない。

 今期の重点施策として、フード業界BtoBのシェア拡大を加速して「FOODS info Mart」利用企業数4万社を目指し、電子請求プラットフォームのデファクト化を推進する方針だ。業界標準化の進展、システム連携の強化、サービスの拡充、ホテル・給食業界への利用企業開拓、さらに新規分野への事業展開なども寄与して中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は9月の直近安値から切り返して調整一巡

 なお9月1日に当社に対する訴訟提起(15年8月4日付)を発表した。ASP規格書システムの開発において業務提携したeBASE<3835>から一方的に提起されたが、本システムの著作権が当社に帰属している等の事実に基づき、裁判で粛々と当社の正当性を明らかにするとしている。

 株価の動きを見ると、悪地合いも影響して7月の戻り高値1668円から一旦反落したが、9月7日の直近安値1004円から切り返す動きだ。14日には1300円まで戻している。調整が一巡したようだ。

 9月24日の終値1212円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円26銭で算出)は52倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間11円76銭で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS66円75銭で算出)は18倍近辺である。なお時価総額は約736億円である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線割れ水準から急反発した。9月の直近安値で下値を確認した形だ。15年12月期増収増益基調であり、中期成長シナリオに変化はなく、調整が一巡して高値圏を目指す展開だろう。

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