【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ブイキューブはレンジ下限から切り返し、中期成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

Web会議のブイキューブ<3681>(東マ)の株価は、11月28日の3910円から反落して直近安値圏の3100円台まで調整した。ただし10月以降は概ね3200円~4200円近辺でのボックス展開であり、中期成長力を評価してレンジ下限から切り返しの展開だろう。

TV会議・Web会議・オンラインセミナー・営業支援・遠隔教育・遠隔医療・映像配信といったビジュアルコミュニケーションツールおよびソリューションサービスの企画・開発・販売・運用・保守を企業向けに提供している。

Web会議「V-CUBE」はWebカメラ、ヘッドセット、ネット環境があれば世界中いつでも、どこでも、だれでも、スマートフォンやタブレット端末でも利用可能なビジュアルコミュニケーションサービスである。200社以上の国内販売パートナーと連携して4000社を超える納入実績を持ち、国内Web会議市場シェアで7年連続首位を達成している。14年6月には世界経済フォーラム主催ジャパン・ミーティング2014に「V-CUBE」が利用された。

主力のクラウド型はサービス提供に伴う月額利用料、官公庁や金融機関向けが中心のオンプレミス型はサーバ・ライセンス販売に伴う導入費用や月額保守料が収益柱である。14年9月には1契約でV-CUBEミーティングやV-CUBEセミナーなどのサービス群から最適なサービスを選択して利用できるビジュアルコミュニケーションプラットフォーム「V-CUBE One」、および「V-CUBE」の知名度向上や使い方普及に向けて無料の法人専用テキストチャットサービス「V-CUBE Gate」の提供を開始した。

スマートデバイスの急速な普及に伴って、ビジュアルコミュニケーション市場はオンラインミーティングやオンラインセミナーなど国内外で拡大基調が予想され、中期成長戦略として国内シェア拡大と潜在市場開拓、アジアNO.1を目指した海外展開、B2B2C型プラットフォームモデルの展開を推進している。海外は米国、マレーシア、タイ、シンガポール、インドネシア、香港、中国に展開し、14年3月には韓国でもサービスを開始した。

14年5月には、パイオニア<6773>の子会社でオンプレミス型Web会議システム国内トップ首位のパイオニアソリューションズ(現パイオニアVC)の株式51%を取得して子会社化した。同社が強みを持つ電子黒板システムを中心とする文教分野では、教育のIT化に向けた環境整備4ヵ年計画で市場拡大が予想されるため、業界特化ソリューションを強化する。

パイオニアVCの協働学習支援システムは、14年春から佐賀県が全県立高校に導入した「1人1台の学習者用パソコン」8507台に採用され、11月には滋賀県草津市が全小中学校に導入したタブレット端末3200台の授業活用に採用された。なお10月には同社のビジュアルコラボレーションサービス群を「xSync(バイシンク)」ブランドに統一している。

B2B2C型プラットフォームモデルでは14年3月、受講者に対して有料オンライン講座や有料オンラインセミナーなどを課金ライブ配信できるマーケットプレイス「V-CUBE MARKET」を開始した。そして11月には企業がWebセミナーを開催・配信できる専用スタジオ「Studio Octo」を恵比寿ガーデンプレイスに開設した。専門スタッフがサポートして双方向性の高いWebセミナーで世界に情報配信できる。

国内シェア拡大と潜在市場開拓に向けて、M&AやOEMの活用、業界特化ソリューション提供の拡大も推進する。14年3月にはエムスリー<2413>と合弁でエムキューブを設立し、医療従事者や製薬企業などメディカルヘルスケア分野の業界特化ソリューションを強化している。また6月には大日本印刷<7912>とデジタルサイネージやWeb会議システムなどを連携した業務効率化支援サービスで提携し、7月にはビットアイル<3811>とWeb会議などのビジュアルコミュニケーションサービス領域において協業した。

10月には子会社パイオニアVC、大日本印刷、日本ユニシス<8056>の3社が災害危機管理ソリューションで協業し、各社のソリューションを連携した「緊急対応システム」の提供を開始すると発表した。さらに11月にはワイヤレス・ブロードバンドサービスを提供するワイヤレスゲート<9419>との包括的業務提携を発表した。両社のノウハウを融合し、さらなる競争力の向上と付加価値の高いサービスの提供を目指すとしている。

今期(14年12月期)の連結業績見通し(パイオニアVCの連結子会社化に伴って3月24日に売上高を増額修正)は、売上高が前期比86.3%増の47億05百万円、営業利益が同90.6%増の5億27百万円、経常利益が同2.0倍の5億34百万円、純利益が同40.1%増の3億22百万円としている。国内需要が伸長し、パイオニアVCの新規連結(5月~12月の8ヵ月分)や中国での大型案件も寄与する。

地域別売上高の計画は、国内が同78.3%増の40億75百万円(クラウド型が同22.7%増の23億84百万円、オンプレミス型が同2.5倍の6億12百万円、アプライアンス型が8億42百万円、その他が同2.4倍の2億37百万円)で、オンプレミス型とアプライアンス型(小中学校向け電子黒板)はパイオニアVCの新規連結が寄与する。海外は中国が同3.2倍の4億62百万円、中国以外が同78.7%増の1億68百万円としている。

第3四半期累計(1月~9月)は前年同期比86.3%増収、同52.9%営業増益、同2.1倍経常増益、同1.7%最終増益だった。純利益は特別損失に自己新株予約権評価損を計上したため小幅な伸びだが、クラウド型サービスの伸長やパイオニアVCの新規連結で大幅増収となり、営業外での為替差益も寄与して営業利益と経常利益は大幅増益だった。

通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.0%、営業利益が37.6%、経常利益が47.6%、純利益が28.3%と低水準だが、ポート数と利用時間は増加基調であり、ストック型の収益構造や円安進行なども考慮すれば通期ベースでも好業績が期待される。さらに来期(15年12月期)はパイオニアVCの収益寄与も本格化して増収増益が期待される。

中期的な経営目標値としては売上高100億円、経常利益30億円の早期達成を掲げている。ビジュアルコミュニケーションサービス市場は拡大基調であり、システム競争力の高さ、規模の優位性、積極的な事業展開などで中期成長期待が高まる。

なお12月11日に株式分割を発表した。14年12月31日を基準日(効力発生日15年1月1日)として1株を2株に分割する。

株価の動きを見ると、11月28日の3910円から反落して直近安値圏の3100円台まで調整した。ただし10月以降は概ね3200円~4200円近辺でのボックス展開であり、レンジ下限に到達した形だ。

12月16日の終値3185円を指標面(株式2分割前)で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS70円48銭で算出)は45倍近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS830円93銭で算出)は3.8倍近辺である。週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面の形だが、ボックスレンジ下限に到達した。中期成長力を評価して切り返しの展開だろう。

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