【編集長の視点】三菱商事は中間配当の権利取りに下げ過ぎ訂正買いが加わって反発

編集長の視点

三菱商事<8058>(東1)は、27円高の2104円と3営業日ぶりに反発して始まっており、1月16日につけた年初来安値2000円に並ぶ安値水準から底上げしている。きょう25日が今3月期の中間配当の権利付き最終日で、年間配当利回りが2.6%と市場平均を上回ることを評価して権利取りの買い物が再燃し、同時に下げ過ぎ訂正買いも加わっている。配当権利落ち後には、資産形成の長期投資セオリーの複利運用の「配当の再投資」による需給好転思惑や、前日24日の米国市場で、原油先物(WTI)価格が、0.43ドル高の1バーレル=44.91ドルと反発して返ってきたことも、支援材料視されている。

■2段階の株式還元方式を基本に減配も配当利回りは市場平均を上回る

同社の配当政策は、2段階の株主還元方式をとり、利益水準に関係ない「安定配当」を50円とするうえに、連結純利益が、3500億円を超える利益を原資に「業績連動配当」を加えることを基本としている。前2015年3月期は、純利益が、4005億7400万円(前々期比10.9%増)となったことから、この業績連動配当を10円とし、さらに創立60周年の記念配当10円を加え、年間70円(前々期実績68円)と増配した。今期は、業績連動配当を6円として年間56円に減配を予定している。それでも年間配当利回りは、きょう25日高値換算でも2.66%と東証1部全銘柄平均の1.71%を大きく上回る。

また同社は、この配当政策に加え今年5月に上限を4500万株(発行済み株式数の2.8%)、取得金額を1000億円とする自己株式取得を発表、今年8月3日までに約3696万株、約1000億円の取得を終了、8月31日に自己株式約3395万9900株(同2.09%)を消却する株主還元策も実施した。

業績は、前期に増収増益と続伸して過去最高更新となったが、今期は、原油価格(ドバイ原油)の想定価格を前期の1バーレル=83.5ドルから65.0ドルと見込んだことから業績の伸び悩みを予想した。同社の予想業績開示は、純利益のみとなっているが、今3月期は、3600億円(全引き10.1%減)と前期の過去最高からの減益転換を予想している。

■「配当の再投資」による需給好転思惑も強めPER9倍台の割安修正に弾み

株価は、今期純利益の減益転換予想より同時発表の自己株式取得を歓迎して年初来高値2830円をつけ、資源価格の下落、ギリシャの債務問題、中国景気の減速懸念などが重なって2058.5円まで調整、年初来安値水準は下げ過ぎとして25日移動平均線水準までリバウンドし、年初来安値を前の強力な下値抵抗感を強めた。配当取りのインカム・ゲインに加え、配当権利落ち後安値からの「配当の再投資」期待も加わり、PER9倍台の割安修正で上放れ一段の戻りにトライしよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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