【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アルコニックスは調整一巡して下値切り上げ、割安感や中期成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アルコニックス<3036>(東1)は商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指している。9月3日に第2四半期累計(4月~9月)純利益を減額したが、16年3月期通期業績予想に変更はない。株価は悪地合いの影響で急落する場面があったが、調整一巡して下値を切り上げる動きだ。16年3月期業績の会社予想は増額含みであり、指標面の割安感も強い。中期成長力を評価して出直り展開だろう。

■商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」

 軽金属・銅製品(伸銅品、銅管、アルミフィン材など)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社である。

 レアメタル分野に強みを持つことも特徴だが、中期成長に向けて商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

 13年1月金属・化成品メーカーの米ユニバーティカル社を子会社化、13年3月アルミ合金スクラップ販売の大阪アルミセンターを子会社化、13年4月産業機械用精密加工部品メーカーの大羽精研を子会社化、14年4月住宅建設関連資材メーカーのケイ・マックを持分法適用関連会社化した。

 14年11月には子会社アルミ銅センター(大阪アルミセンターが14年9月1日付で商号変更)が、稲田商会(福岡県北九州市)の銅リサイクル事業を譲り受けた。

 15年7月には当社100%出資の中間持株会社アルコニックス・トーカイを設立し、アルコニックス・トーカイが東海溶業(愛知県豊田市)の全株式を取得して子会社化した。

 東海溶業は溶接材料の製造ならびに溶射加工事業を展開して、特に金型用肉盛溶材および溶射加工において業界で高い地位を確保している。また国内主要自動車メーカーを筆頭に優良大手企業を取引先として、安定した収益基盤を確立している。当社グループの製造・加工分野に溶接・溶射加工という新たな事業基盤が加わることになる。

 なお15年3月に非鉄金属専門商社の平和金属(大阪市)の株式60.5%を新たに取得(4月30日予定、すでに1%を保有しているため今回の株式取得後の出資比率61.5%)して連結子会社化すると発表したが、15年4月に、株式譲渡契約書における詳細取り決めについて協議継続中のため、株式取得時期が予定より遅れていると発表した。

 そして9月3日、株式譲渡に係る契約内容ならびに条件面で合意に至ったと発表している。なお株式取得実行時期については、独占禁止法に係る公正取引委員会への届出(9月4日)から待機期間(30日)満了後の10月9日予定で、連結子会社化は16年3月期第3四半期(10月~12月)となる。

■16年3月期第2四半期累計の純利益を減額したが通期予想に変更なし

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)484億04百万円、第2四半期(7月~9月)485億96百万円、第3四半期(10月~12月)546億06百万円、第4四半期(1月~3月)499億37百万円で、経常利益は第1四半期17億13百万円、第2四半期13億95百万円、第3四半期13億02百万円、第4四半期7億95百万円だった。

 また15年3月期の配当性向は14.6%だった。ROEは14年3月期比2.5ポイント低下して14.9%、自己資本比率は同5.0ポイント上昇して29.3%だった。

 9月3日に今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の純利益を減額修正した。平和金属の連結子会社化が第3四半期となり、負ののれん益の特別利益計上も第3四半期に変更となったため、前回予想(5月15日公表)の24億60百万円から7億円減額して17億60百万円とした。

 通期の連結業績予想は前回予想(5月15日公表)に変更はなく、売上高が前期比7.2%増の2160億円、営業利益が同5.1%減の43億50百万円、経常利益が同7.8%減の48億円、純利益が同14.1%増の40億円としている。配当予想は同4円増配の年間44円(第2四半期末22円、期末22円)で予想配当性向は14.1%となる。

 売上面では自動車関連、スマホ・タブレット関連を中心に好調に推移して増収見込みだ。経常利益は前期計上したケイ・マックの持分法適用関連会社化に伴う負ののれん発生益が一巡して減益見込みだが、純利益については平和金属の連結子会社化により、同社の収益と特別利益に計上する負ののれん発生益が寄与して増益見込みだ。

 セグメント別利益(経常利益)の計画は、軽金属・銅製品が同17.7%減の24億70百万円、電子・機能材料が同15.3%増の20億円、非鉄原料が同21.6%減の2億10百万円、建設・産業資材が同42.0%減の1億20百万円としている。なお軽金属・銅製品はケイ・マックの負ののれん発生益一巡の影響を除けば実質的に増益となる。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比9.3%増の529億30百万円となり、営業利益が同28.2%増の12億32百万円、経常利益が同25.8%減の12億71百万円、純利益が同39.5%減の7億90百万円だった。

 前期の持分法投資利益に計上したケイ・マックの負ののれん発生益が一巡して経常減益、最終減益だったが、売上面では銅スクラップ、銅管、アルミ箔、アルミフィン材、プラント・船舶用チタン、半導体製造装置用精密研削加工部品などが好調に推移して増収、そして大幅営業増益だった。

 セグメント別利益(経常利益)を見ると、軽金属・銅製品は同33.2%減の7億67百万円だったが、売上面は同11.5%増収と好調で、ケイ・マックの負ののれん発生益一巡の影響を除けば増収増益だった。

 電子・機能材は同22.0%減の3億93百万円だった。スマホ・タブレット関連需要は堅調だったが、国内の太陽光発電関連需要が減速し、レアメタル・レアアースの市況低迷も影響した。

 非鉄原料は同2.9倍の76百万円だった。主力のアルミ再生塊はやや低調だったが、14年11月に営業譲り受けた連結子会社の銅スクラップが寄与した。建設・産業資材は同19.2%増の41百万円だった。国内は低調だったが、円安に伴う配管機材の輸出や海外取引が好調だった。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が24.5%、営業利益が28.3%、経常利益が26.5%、純利益が19.8%である。純利益については第3四半期に、平和金属の連結子会社化に伴って特別利益に負ののれん発生益を計上する。通期会社予想は保守的な印象が強く増額含みだろう。

■新中期経営計画で18年3月期ROE13~15%程度目標

 15年5月に新中期経営計画(16年3月期~18年3月期)を発表した。1年ごとに見直すローリング方式で、経営目標値として18年3月期の経常利益65億円超、純利益43億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度を掲げ、3年間の投融資総額はM&Aを中心に200億円の計画としている。

 セグメント別には軽金属・銅製品が売上高982億円、経常利益34億50百万円、電子・機能材が売上高1008億円、経常利益23億80百万円、非鉄原料が売上高360億円、経常利益3億10百万円、建設・産業資材が売上高180億円、経常利益3億60百万円としている。

 商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、アクションプランとして、業容拡大に向けた川上・川中・川下等のM&A推進および新規事業投資案件の発掘推進、成長著しいレアメタルおよび電子・機能材料分野のさらなる強化、アルコニックスグループの商いの基盤をなすアルミ・銅分野の維持・拡大、環境問題に対応したリサイクル分野の強化、海外店ネットワークのさらなる充実による顧客ニーズ対応および地場取引・三国間取引の拡大に向けた商社機能の発揮としている。

 積極的なM&A戦略も奏功し、グループのシナジー効果を高めて中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して下値切り上げ

 株価の動きを見ると、6月の上場来高値2198円から反落し、悪地合いも影響して水準を切り下げた。しかし8月25日の年初来安値1472円から反発して下値を切り上げている。調整が一巡したようだ。

 9月25日の終値1611円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS311円43銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は2.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2053円83銭で算出)は0.8倍近辺である。なお時価総額は約207億円である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んだが、8月の急落場面で長い下ヒゲをつけ、その後は下値を切り上げて調整一巡感を強めている。また日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。16年3月期業績の会社予想は増額含みであり、指標面の割安感も強い。出直り展開だろう。

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