【アナリスト水田雅展の銘柄分析】綿半ホールディングスは直近安値から下値切り上げ、16年3月期業績は増額の可能性

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 綿半ホールディングス<3199>(東2)はホームセンター事業や建設事業などを展開するグループの持株会社である。株価は悪地合いの影響を受ける場面があったが、直近安値から下値を切り上げる展開だ。ホームセンター既存店売上が好調に推移して16年3月期業績予想は増額の可能性が高い。1桁台の予想PER、1倍割れ水準の実績PBRと指標面の割安感も強い。8月17日の上場来高値1035円を目指す展開だろう。

■ホームセンター事業や建設事業などを展開するグループ持株会社

 1949年設立(綿半銅鉄金物店、現綿半ホールディングス)で、03年に持株会社へ移行して14年12月東証2部に新規上場した。1598年(慶長3年)に初代・綿屋半三郎が長野県飯田市で創業した綿商いから400年以上の歴史を有している。

 現在は事業会社の綿半ホームエイドが長野県中心にチェーン展開するホームセンター事業、綿半鋼機および綿半テクノスが展開する建設事業、10年に子会社化したミツバ貿易が医薬品原料などを輸入販売する貿易事業を展開している

 15年3月期の売上構成比は、ホームセンター事業が54.7%、建設事業が40.5%(内訳は内外装工事が43.9%、立体駐車場が14.9%、鉄構分野が21.2%、建設資材販売が13.0%など)、貿易事業が4.5%、その他事業(不動産賃貸事業)が0.3%である。

■ホームセンター事業は長野県中心にスーパーセンター業態を積極展開

 綿半ホームエイドがチェーン展開するホームセンター事業は、1977年にホームセンター業態1号店(長池店)をオープンし、07年からは生鮮食品や惣菜など食品の品揃えを強化したスーパーセンター業態の出店を開始して積極展開している。

 15年3月期末の店舗数はスーパーセンター業態8店舗、ホームセンター業態8店舗の合計16店舗(長野県15店舗、愛知県1店舗)で、15年5月に「綿半スーパーセンター豊科店」をオープンして合計店舗数は17店舗となった。さらに15年11月には18店舗目「綿半スーパーセンター塩尻店」のオープンを予定している。

 長野県内で唯一生鮮食品を扱うホームセンターであり、NB商品を中心に地域特性に合わせた豊富な品揃え、価格競争力、ブルーカード(長野県内の主要な小売業やサービス業が加盟するポイントカード)による顧客囲い込みなど、ELP戦略を武器とした個店競争力の高さを強みとしている。サービス面ではカーピットを併設してカー用品取り付け・タイヤ交換やメンテナンスを行っていることも特徴だ。

 なお品目別売上構成比を見ると、09年2月期は食品が30.2%、非食品が69.8%だったが、15年3月期は食品が50.3%、非食品が49.7%で食品が非食品を上回った。スーパーセンター業態の新規出店によって食品の売上構成比が上昇している。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み

 綿半鋼機と綿半テクノスは、建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開している。長尺屋根工事などの外装改修工事および自走式立体駐車場工事に強みを持つ。

 長尺屋根工事では、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行うWKカバー工法で特許を取得し、企業の工場・倉庫・物流センター、商業施設、駅舎関連などに豊富な工事実績を誇っている。自走式立体駐車場工事では、柱の少ない認定品「ステージダブル」など国土交通省の認定を多数有していることが強みであり、大型SCの立体駐車場などの工事実績が豊富である。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを輸入販売

 10年に子会社化したミツバ貿易は、医薬品・化成品向け天然原料の輸入専門商社で、ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など、特定分野に強みを持っている。

 また製造部門も有しており、医薬品分野ではHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。メキシコではキャンデリラワックスの精製工場を保有している。宝飾品部門は15年3月に撤退した。

■16年3月期業績の会社予想は増額の可能性

 なお15年3月期の配当性向は9.6%だった。配当についてはグループの業績や内部留保の充実などを勘案したうえで、安定的な配当を継続して実施することを基本方針としている。またROEは14年3月期比1.6ポイント上昇して15.4%、自己資本比率は同4.5ポイント上昇して15.4%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月14日公表)は売上高が前期比5.4%増の881億01百万円、営業利益が同11.2%増の11億32百万円、経常利益が同10.0%増の12億52百万円、純利益が同13.9%減の11億48百万円としている。配当予想は前期と同額の年間15円(期末一括)で予想配当性向は12.9%となる。

 純利益は繰延税金資産計上効果が減少(15年3月期は6億円計上、16年3月期は2億円計上予定)して減益見込みだが、ホームセンター事業と建設事業が好調に推移して増収、営業増益、経常増益予想だ。なおホームセンター事業の新規出店は、5月の「綿半スーパーセンター豊科店」および11月の「綿半スーパーセンター塩尻店」のスーパーセンター業態2店舗の計画だ。

 売上面では消費増税や天候不順の影響一巡も寄与してホームセンターの既存店が好調に推移する。15年5月オープンの新店「綿半スーパーセンター豊科店」も本格寄与する。利益面ではホームセンターの出店コストが増加するが、ホームセンター事業の増収と売上総利益率上昇に加えて、採算重視の受注を進めている建設事業の完成工事総利益率上昇も寄与する。なお15年11月オープン予定の「綿半スーパーセンター塩尻店」は来期(17年3月期)に本格寄与する。

 セグメント別(全社費用等調整前)計画は、ホームセンター事業の売上高が同10.5%増の504億84百万円、営業利益が同15.3%増の3億47百万円、建設事業の売上高が同0.2%増の339億37百万円、営業利益が同13.6%増の13億43百万円、貿易事業の売上高が同9.4%減の34億19百万円、営業利益が同12.1%減の3億35百万円としている。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が208億22百万円、営業利益が2億98百万円、経常利益が3億53百万円、純利益が1億93百万円だった。前年同期は連結財務諸表を作成していないため比較はできないが、ホームセンター事業の好調が牽引して計画を上回ったようだ。

 セグメント別に見ると、ホームセンター事業は売上高が121億56百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が1億28百万円だった。消費マインド改善や好天も背景として、日用雑貨、加工食品、飲料、園芸用品などが好調に推移した。15年4月リニューアルオープンした新フォーマット1号店の小型スーパーセンター「綿半ホームエイド川中島店」や、15年5月オープンした新店「綿半スーパーセンター豊科店」も寄与した。食品ロス管理徹底の効果などで売上総利益率も計画以上に上昇しているようだ。

 建設事業は売上高が78億30百万円で営業利益が2億88百万円だった。前期から繰り越されている大型工事物件の施工進捗で増収となり、採算性を重視した営業活動の効果で完成工事総利益率も上昇しているようだ。受注面では自走式立体駐車場建設にかかる大型商業施設関連も寄与して受注残高が増加した。

 貿易事業は新商品拡販や新規取引先開拓などで売上高が7億75百万円、営業利益が1億03百万円となった。その他事業(不動産賃貸事業)は売上高が59百万円、営業利益が23百万円だった。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.6%、営業利益が26.3%、経常利益が28.2%、純利益が16.8%である。建設事業は第4四半期(1月~3月)の構成比が高い収益構造であることを考慮すれば高水準と言えるだろう。なお第2四半期累計(4月~9月)予想に対する進捗率は売上高が50.3%、営業利益が148.3%、経常利益が126.1%、純利益が100.5%で、各利益は計画を超過達成している。

 ホームセンター事業の月次売上状況(前年同月比、速報値)を見ると、15年8月は全店106.6%、既存店101.6%で、15年4月~8月累計は全店107.9%、既存店104.2%と好調に推移している。通期業績の会社予想は増額の可能性が高いだろう。

■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す

 中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。

 ホームセンター事業では、近隣県への進出も含めて本格的な多店舗展開(当面の目標100店舗体制)に向けた体制作りの期間として、出店スピード加速のための体制整備や新フォーマット店舗の開発に取り組んでいる。

 体制整備では、店舗オペレーションの効率化、パートナーのプロ化(パートのスキルアップ)、発注精度の向上、物流ネットワークの整備・強化、本部バックアップ体制の整備などを推進する。

 新フォーマット店舗の開発では、限られた売場面積の中で地域特性に合わせた品揃えを強化するため、小型スーパーセンター業態や超小型店業態の開発を推進している。15年4月にはホームセンター業態の「綿半ホームエイド川中島店」(売場面積2000㎡)に生鮮食品を加えて、小型スーパーセンター業態としてリニューアルオープンした。

 また商品面では、長野ブランド(健康・自然)を活かした商品政策(健康を意識した商品政策、長野県ブランドを活かした商品開発)にも取り組む。

 建設事業では、デザインセンターを活用した提案営業や施主に対する直接営業の強化、技術ノウハウを活かした新製品の継続的開発や付加価値の提供などで、採算を重視しながら受注拡大に繋げる。また遠隔地の案件に対しては、施工代理店方式(当社が開発した冶具・ノウハウを提供)も活用して、エリア・顧客基盤の拡大に取り組む方針だ。

 リニア新幹線の停車駅となる長野県飯田市を発祥とする老舗企業であり、高い信用力を背景として、リニア新幹線・駅舎および周辺関連工事の受注も期待される。

 貿易事業では、利益率の高い医薬品分野を中心として、ニッチ市場における新商品の開発を強化する。

 中期経営計画は未策定だが、中長期ビジョンとして売上高1000億円、経常利益20億円程度を当面の目標としてイメージしているようだ。政府の「地方創生戦略」なども追い風であり、ホームセンター事業における新フォーマット開発や多店舗展開が牽引して、中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は直近安値から反発して下値切り上げ、8月高値目指す

 なお8月12日に株主優待制度の導入を発表した。毎年9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、3点(ホームエイド店舗で利用できるポイント2倍カード、2000円相当の長野県特産品1点、社会貢献活動への2000円寄付)の中から1点を選択する。15年9月30日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として開始する。

 株価の動きを見ると、悪地合いの影響で8月17日の上場来高値1035円から8月25日の781円まで急反落したが、その後は反発して下値を切り上げる展開だ。9月14日には戻り高値となる956円まで上伸する場面があった。悪地合いに伴う目先的な売りは一巡したようだ。

 9月25日の終値910円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS116円42銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1009円63銭で算出)は0.9倍近辺である。なお時価総額は約90億円である。

 週足チャートで見ると8月の急落は26週移動平均線近辺で長い下ヒゲをつけて反発し、その後は13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。強基調を維持したようだ。16年3月期業績の会社予想は増額の可能性が高く、1桁台の予想PER、1倍割れ水準の実績PBRと指標面の割安感も強い。8月17日の上場来高値1035円を目指す展開だろう。

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