なお信頼性を欠く相場環境下では足元重視の投資セオリー通りに好決算発表期待銘柄に逆行高の素地=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

よくもまあこれだけ悪材料が続くものだ。しかも内憂というより外患である。9月相場の最大のイベントであるFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)は、「ゼロ金利の継続」で何とか通過したと思ったら、今度は、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)の不正排気ガス試験事件の発覚である。わが東京市場でも、東芝<6502>(東1)の不正会計問題という企業スキャンダルが起こったが、VWの不祥事は、事件のスケールも衝撃度もまるで別次元で、世界の株式市場を揺るがした。8月、9月の夏相場は、世界同時株安から、世界同時波乱に変わって、日中の上げ幅、下げ幅の振れは大きくなったが、この止めにVWのスキャンダルが発生し、相場トレンドは迷走し、銘柄物色の方向感も決まらず相場のコア銘柄も浮上してこなかった。

こうした「リスクオフ」のセンチメントが長引き、なお先行きの信頼性の欠ける相場環境下では、足元重視が投資セオリーである。先行きより目先、中長期より短期、あしたよりきょう優先である。現に前週末25日は、日米両市場でこの投資セオリー通りの相場推移となった。東京市場では、前週末25日が3月期決算会社の9月中間配当の配当権利付き最終日に当たり、日経平均株価は、たった1日だけの権利取りの買い物により308円高と大型連休を挟んで3営業日ぶりに反発した。同じく米国市場でも、ニューヨーク・ダウ工業株30種平均が、一時263ドル高と4日ぶりに急反発したものの、大引けでは113ドル高と上げ幅を縮める乱気流のなか、好決算を発表したスポーツ用品メーカーのナイキは、1銘柄だけでNYダウを68ドルも押し上げた。

実質10月相場入りするきょう28日から週末まで1週間の足元の株価材料といえば、経済指標と企業業績の各発表がある。経済指標では、10月1日に日銀短観(全国企業短期経済観測調査)、中国の9月の製造業・非製造業購買担当者景気指数、10月2日に米国の9月の雇用統計の各発表などまたまた重要イベントが目白押しで、この結果次第ではまたまた株価は乱高下する可能性がなくはない。そのなかで存在感を発揮するのは、もう一つの足元材料の企業業績だろう。「森を見ずに木を見る」逆行高をサポートする展開も想定され、東京市場でも「第2のナイキ」への期待を高めるはずだ。東京市場でのきょう28日からの決算発表は、3月期決算会社の4~9月期(第2四半期、2Q)業績の開示にはまだ半月ばかり待たなくてはならないが、2月決算会社の3~8月期(第2四半期、2Q)業績や、11月期決算会社の2014年12月~2015年8月期(第3四半期、3Q)業績の開示が相次ぐ。このなかには、すでに複数回にわたって今期業績を上方修正した銘柄が含まれており、決算発表で好決算の再確認、再々確認、あるいは業績の再々々上方修正などにつながるかもしれず、株価を刺激する展開が有力になる。

このリード株候補は、9月30日に今2月期2Q累計決算を発表予定のアダストリア<2685>(東1)である。同社は、今年6月、9月と2度も今期2Q累計業績を上方修正し、2月通期業績については、下期業績見通しを精査したうえで、2Q累計決算開示時に発表するとしてきた。猛暑特需で夏物衣料が好調に推移し、連続猛暑日の記録が途絶えた途端に気温が低下して初秋物販売が好スタートしたことが上方修正要因となっており、再々上方修正された2Q利益は、すでに期初予想の通期業績をオーバーしているだけに、今度は通期業績の上方修正の確度は高く、要マークである。もちろんPER評価は、小売株全般と同様に市場平均を上回って割高だが、年初来高値から8%超も調整しているだけに、投資チャンスが拡大し、一段の戻りを試すようなら今度は「第2のアダストリア」探しとして類似銘柄への連想を高めよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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