【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エイジアは下値切り上げて戻り歩調、16年3月発売予定の新製品の名称正式決定

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 エイジア<2352>(東マ)はメール配信システムの大手でeコマース関連分野を強化している。29日には16年3月発売予定の新製品BtoC企業向けマーケティングオートメーションツールの正式名称決定を発表した。株価は8月の年初来安値から反発して下値を切り上げている。戻り歩調の展開だ。指標面に割高感はなく、16年3月期増収増益・連続増配予想を評価して続伸展開だろう。

■メール配信システム「WEBCAS」のアプリケーション事業が主力

 自社開発のメールマーケティング・プラットフォーム「WEBCAS」シリーズを提供するアプリケーション事業を主力として、システム受託開発やマーケティングコンサルティングなどのサービスソリューション事業も展開している。

 01年に発売した自社開発のメール配信システム「WEBCAS e-mail」は、顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。総合通販企業、メーカー、生命保険、情報サービス会社など多様な業界の企業や官公庁に導入され、国内メール配信パッケージ市場でのシェアは1位である。

 メールマーケティングシステム「WEBCAS」シリーズは、メール配信システム「WEBCAS e-mail」を中心に、アンケートシステム「WEBCAS formulator」やメール共有システム「WEBCAS mailcenter」などをラインナップに抱えるe-CRMアプリケーションシリーズである。

 15年5月にはメールマーケティングシステム「WEBCAS」シリーズの導入企業が2500社を突破した。そしてトヨタ自動車<7203>、三井物産<8031>、陸上自衛隊、求人情報サイト運営のインディバル、テンプホールディングス<2181>などの導入事例を公開し、9月29日にはNTT西日本のアンケートシステムの導入事例を公開した。

 15年8月には、日本最大級のクラウドソーシングサービスを運営するランサーズのメール配信基盤として、メール配信システム「WEBCAS e-mail」クラウド版の提供を発表した。ランサーズがサービスインフラとして利用するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)上の環境と連携して本格稼働した。

■M&A・アライアンスも活用してeコマース関連分野を拡大

 中期成長戦略として「メールアプリケーションソフトのエイジア」から、販売促進・マーケティング支援分野に事業領域を拡大して「eコマースの売上UPソリューションを世界に提供するエイジア」への発展を目指し、クラウドサービス(ASP、SaaS)の強化、新製品・サービス開発の推進、サービスソリューション事業の拡大に取り組んでいる。

 M&A・アライアンス戦略では、12年4月ECサイト構築・運営事業拡大に向けてシステムインテグレータ<3826>と資本・業務提携、12年12月メールマーケティングコンサルティング事業拡大に向けてメールマガジン制作・運用支援のグリーゼと資本・業務提携、13年10月メールマガジン戦略立案・企画・制作・分析サービスのFUCAを連結子会社化、14年1月Webサイトソーシャル化支援サービスのフィードフォース社と業務提携した。

 14年6月にはデータベース作成システム「WEBCAS DB creator」を発売し、ジェイモードエンタープライズと共同開発した電子レシートメール送信サービス「レシートメール」も発売した。15年5月にはSMS配信システム「WEBCAS SMS」の販売を開始した。マイナンバー関連などの需要を見込んでいる。さらにカンタンCRM「WEBCAS CRM」の販売も開始した。

 15年5月にはソフトフロントやホオバルなど異業種各社と協業して、女性の起業をサポートする「コロコニ・プロジェクト」を発足した。女性の起業家に対して技術サポートおよびサービスの提供を共同で行っていく。

 15年7月には「WEBCAS」シリーズとWebコンテンツ制作をセットにしたWebキャンペーン運営支援サービス「WEBCASキャンペーン支援パック」の発売を開始し、VOYAGE MARKETINGのデジタルギフトサービス「ギフビー」とも連携した。

 また新製品BtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCASマーケティングオートメーション(仮称)」を16年3月に発売する予定だ。複雑化したデジタルマーケティングを簡単に実現して効果を高めるためのBtoC企業向けマーケティング・プラットフォームである。マーケティング活動を自動化するマーケティングオートメーション市場は米国を中心に急速に拡大し、日本でも市場拡大が期待されている。

 そして9月29日には、16年3月発売予定の新製品BtoC企業向けマーケティングオートメーションツールの名称を「WEBCAS Auto Relations(ウェブキャス・オート・リレーションズ)」に決定し、Webサイトをオープンしたと発表した。なお9月30日~10月2日開催(東京ビッグサイト)の「ITpro EXPO 2015」で新製品を発表する。

■16年3月期増収増益・連続増配予想

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2億22百万円、第2四半期(7月~9月)2億65百万円、第3四半期(10月~12月)2億67百万円、第4四半期(1月~3月)2億77百万円で、営業利益は第1四半期14百万円、第2四半期51百万円、第3四半期54百万円、第4四半期59百万円だった。下期の構成比が高い収益構造だ。

 また15年3月期の配当性向は26.6%だった。ROEは14年3月期比4.7ポイント低下して12.4%、自己資本比率は同0.6ポイント上昇して79.0%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月11日公表)は、売上高が前期比9.6%増の11億30百万円、営業利益が同23.2%増の2億20百万円、経常利益が同21.5%増の2億20百万円、純利益が同28.6%増の1億40百万円としている。配当予想は同2円増配の年間17円(期末一括)で予想配当性向は23.7%となる。

 セグメント別売上高の計画は、アプリケーション事業が同15.7%増の9億90百万円、サービスソリューション事業が同20.0%減の1億40百万円としている。アプリケーション事業はクラウド関連やライセンス販売が好調に推移する。サービスソリューション事業は開発要員を、アプリケーション事業の新製品「WEBCAS Auto Relations」の開発に投入するため減収だが、子会社FUCAと連携したコンサルティングサービスは強化する。

 重点戦略としてアプリケーション事業では、マーケティング担当者が抱える課題を解決する新製品「WEBCAS Auto Relations」の開発に注力するとともに、利益率の高いクラウドサービスのマーケティング戦略を強化する方針だ。またサービスソリューション事業では子会社FUCAおよびグリーゼとの連携を強化する。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比13.0%増の2億51百万円、営業利益が同74.9%増の25百万円、経常利益が同76.2%増の27百万円、純利益が同87.4%増の17百万円だった。主力のアプリケーション事業が好調に推移して大幅増益だった。

 セグメント別に見ると、アプリケーション事業は売上高が同16.0%増の2億10百万円で、売上総利益率は同6.6ポイント上昇して70.7%となった。メールマーケティングシステム「WEBCAS」シリーズの導入企業が2500社を突破し、クラウドサービス関連が同22.5%増収と好調に推移した。

 サービスソリューション事業は売上高が同0.6%減の40百万円で、売上総利益率は同27.9ポイント低下して9.2%となった。子会社FUCAと連携したコンサルティングサービスは同40.7%増収と好調だったが、受託開発・デザイン売上が減少した。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が22.2%、営業利益が11.4%、経常利益が12.3%、純利益が12.2%である。低水準の形だが下期の構成比が高い収益構造であり、期初時点で下期偏重の計画だ。開発の効率化や生産性の向上も寄与して通期ベースでも増収増益基調だろう。

■株価は8月の年初来安値から反発して下値切り上げ、戻り歩調

 株主優待制度については15年2月に新設を発表した。毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。15年3月期末から実施した。

 なお7月3日付の大量保有報告書の提出に基づいて筆頭株主の異動を発表した。フュージョンパートナー<4845>が議決権数に対して30.43%を保有する筆頭株主となった。

 株価の動きを見ると、悪地合いで急落した8月25日の年初来安値879円から反発して下値を切り上げている。売り一巡して戻り歩調の展開だ。

 9月29日の終値1158円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS71円44銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS472円09銭で算出)は2.5倍近辺である。なお時価総額は約27億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。8月の年初来安値から下値を切り上げて強基調に転換する動きだ。指標面に割高感はなく、16年3月期増収増益・連続増配予想を評価して続伸展開だろう。

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