【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本スキー場開発は富士山初冠雪、スキーシーズンを迎えて注目度高まる

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本スキー場開発<6040>(東マ)は関東甲信越を中心にM&Aで取得したスキー場の再生・運営事業を展開している。10月11日には富士山が初冠雪した。スキーシーズン入りを迎えて注目度が高まりそうだ。株価は直近安値圏で下値固め完了感を強めている。16年7月期増収増益予想を評価して反発展開だろう。

■関東甲信越を中心にM&Aで取得したスキー場の再生・運営事業

 日本駐車場開発<2353>の連結子会社(05年12月設立)で、関東甲信越を中心にスキー場運営事業を展開している。M&Aで取得したスキー場を再生して収益を積み上げるビジネスモデルで、スキー場運営専業として国内初の上場企業である。

 15年7月時点で長野県・HAKUBA VALLEYエリアの4スキー場(白馬八方尾根スキー場、白馬岩岳スノーフィールド、栂池高原スキー場、鹿島槍スキー場)、長野県・竜王スキーパーク、群馬県・川場スキー場、および岐阜県・めいほうスキー場の7スキー場を運営している。

 スキー場運営の子会社は、鹿島槍(06年9月取得、鹿島槍スキー場)、北志賀竜王(09年11月取得、竜王スキーパーク)、川場リゾート(10年10月取得、川場スキー場)、白馬観光開発(12年11月取得、白馬八方尾根スキー場、白馬岩岳スノーフィールド、栂池高原スキー場)、めいほう高原開発(14年10月取得、めいほうスキー場)である。

 また付随サービスとして、スキー・スノーボード用品や登山用具などのレンタル(13年4月取得の子会社スパイシーなど)や、飲食店舗運営なども展開している。

■ウィンターシーズンの構成比が高い収益構造

 ウィンターシーズン(スキー場の営業開始日~営業終了日)は、リフト券の販売、料飲の提供、スキー・スノーボードなどの用品レンタル、土産物の販売などを行う。またグリーンシーズン(ウィンターシーズン以外の期間)は、リフト券の販売、料飲の提供、登山用具のレンタル、土産物の販売などを行う。

 収益面で見ると、ウィンターシーズン(通常11月~4月)にあたる第2四半期(11月~1月)と第3四半期(2月~4月)の構成比が圧倒的に高く、グリーンシーズンにあたる第1四半期(8月~10月)と第4四半期(5月~7月)は営業赤字となる収益構造だ。そして冬の降雪量過多または不足などの天候リスク、地震・噴火などの自然リスクも影響しやすい。

 ただしグリーンシーズンの収益化が冬の天候リスク吸収や雇用の安定化にも繋がるため、新規事業などの施策によりグリーンシーズンの売上構成比30%(13年7月期実績11.0%%、14年7月期実績21.7%、15年7月期実績16.9%)を目指している。

■地域活性化の中心的な役割を担う存在としてスキー場を再生・運用

 事業再生・運営のプロ集団として、貴重な自然を最大限活用したスキー場運営の再デザインを目指し、スキー場取得とバリューアップの相乗効果で成長する独自のビジネスモデルを推進している。

 スキー場の再生というと投資ファンド的な印象を受けるが、スキー場を投資・投機・転売対象の不動産としてではなく、中長期的な視点でスキー場を基点とする地域活性化・地方創生を目指し、地元パートナーや地域社会と一体となったハンズオンスタイルで、スキー場の再生・運営に取り組んでいることが特徴だ。

 そして豊富なノウハウをベースとして、スキー場運営における非効率性の改善や新規事業を推進し、スキー場運営事業の適正な収益化と持続的な成長の実現を目指している。

■オールシーズン化と世界からのインバウンド需要取り込み戦略を推進

 持続的な成長に向けた戦略として、ウィンターシーズンにおけるスキー場への集客力を高めるだけでなく、グリーンシーズンも集客するオールシーズン収益化戦略、そしてジャパンパウダーを求める世界中の顧客を日本のスキー場へ集客するインバウンド戦略を基本方針としている。

 ウィンターシーズンにおけるスキー場への集客策としては、国内外でのスキー・スノーボードに関係する大規模な催事・展示会への出展強化、スキー場の認知度向上に向けたTV・ラジオCMなど広告宣伝の強化、シャトルバスや自社運営直通バスなどによるアクセスの強化、HAKUBA VALLEY共通券などによる利便性の向上、旅行会社などと連携した商品企画、外国観光業への販路開拓などを実施している。

 また魅力的なスキー場づくりとして、上級者が楽しめるゲレンデの設営、ファミリー層向けに子どもが安全に雪遊びできるキッズパークの増設、初心者向けにソリ遊びを中心としたゲレンデの設営、週末・祝日の来場者層に合わせたゲレンデ企画の実施、飲食テナントの充実などの施策を強化している。

 10月7日にはバーガーキング・ジャパンとのフランチャイズ契約締結を発表した。15年12月中旬に、長野県内およびスキー場内1号店となる「バーガーキング栂池雪の広場店」を、栂池高原スキー場内のフードコートである雪の広場にオープンする。

 グリーンシーズンにおける集客については、高山植物園、キャンプなどの自然体験、音楽イベントや国際交流イベントの誘致、キャンドルナイトの開催、サバイバルゲームフィールドやスケートパークの設置など、自然を活かした施設への積極投資と販売強化を推進している。鹿島槍では子供向け合宿団体の大型受注に成功し、15年7月期のグリーンシーズン来場者数が前期比2.2倍に増加した。

 世界中の顧客を日本のスキー場へ集客するインバウンド戦略については15年5月、長野県のHAKUBA VALLEY(長野県白馬村・小谷村・大町市に所在する10ヶ所のスキー場からなる日本最大のスノーリゾート)が、世界的に著名なスキーリゾートのみで構成されるTMC(The Mountain Collective)から、日本で唯一のパートナーと承認され、アジアから初めて参加した。HAKUBA VALLEY10ヶ所のスキー場のうち、当社グループが4ヶ所を運営している。

■15年7月期は過去最高の業績、外国人来場者数も増加傾向

 15年7月期は、白馬エリアにおいてウィンターシーズンに長野県神城断層地震、グリーンシーズンにおいて天候不順の影響を受けたが、めいほうスキー場のグループ化に加えて、インバウンド需要の取り込み、各スキー場での単価改善や業務効率化も寄与して、売上高・各利益とも過去最高を記録した。

 15年7月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(8月~10月)5億54百万円、第2四半期(11月~1月)23億59百万円、第3四半期(2月~4月)25億28百万円、第4四半期(5月~7月)4億40百万円、営業利益は第1四半期1億74百万円の赤字、第2四半期6億46百万円、第3四半期8億07百万円、第4四半期3億73百万円の赤字だった。

 来場者数(その他施設含む)は、ウィンターシーズンが子会社化しためいほうスキー場も寄与して同11.0%増の156.0万人、グリーンシーズンが同7.8%減の29.2万人、そして合計が同7.5%増の185.2万人だった。

 白馬八方尾根スキー場における外国人来場者数の割合は12年12月~13年5月には10.9%だったが、13年12月~14年5月に12.6%、そして14年12月~15年5月には20.6%と増加傾向を強めている。外国人来場者は豪州などからの来場者が中心であり、中国からの来場者数の割合はまだ小さいようだ。

 なお9月18日に、10月27日開催予定の定時株主総会に資本準備金の額の減少および剰余金処分を付議すると発表した。15年7月期末時点での繰越利益剰余金に欠損が生じているため、欠損の補填を目的として資本準備金の額の減少および剰余金の処分を行う。なお本件は「純資産の部」内の資本準備金を減少させ、その他資本剰余金に振り替えるものであり、当社の純資産額に変動はなく、1株当たり純資産額にも変動は生じない。

■16年7月期増収増益予想

 今期(16年7月期)の連結業績予想(9月3日公表)は、売上高が前期比11.5%増の65億59百万円、営業利益が同14.3%増の10億35百万円、経常利益が同17.4%増の9億93百万円、純利益が同1.6%増の7億18百万円としている。配当予想は無配継続としている。

 純利益は税金費用の増加で小幅増益にとどまるが、新規のM&Aを織り込まず、白馬エリアにおける集客増加策などで既存7スキー場の来場者数増加を見込み、さらに単価改善や業務効率化などの効果も寄与して2桁増収・営業増益予想だ。

 国内外におけるセールスプロモーション効果で、ウィンターシーズンでは外国人来場者が増加基調であり、長期滞在の傾向も強めている。またグリーンシーズンでは多くの登山客に加えて、宿泊施設を活用した自然体験学校の合宿、スポーツ関係者の合宿などの需要も増加しているようだ。16年7月期も増収増益基調だろう。

■M&A投資額は順調に回収、さらにポートフォリオ拡充

 M&Aで取得した7スキー場はいずれも収益性が改善し、7スキー場取得費用累計26億67百万円に対して、15年7月期までの営業利益累計が25億04百万円となった。M&A投資額をほぼ回収している状況だ。

 スキー場に対する「目利き力」の醸成、再生・運営・危機対応などのノウハウの蓄積、再生トラックレコード(実績)の積み上げで、さらなるスキー場および関連事業の取得・再生に繋げる。

 IPOによる知名度や信用力の向上も背景として、エリア分散、収益性、雪不足リスク、雪質、アクセス、グリーンシーズンにおける改善余地などを意識しながら、スキー場・関連事業を継続的に取得するM&A戦略を質・量ともに加速する。年1件程度ペースでポートフォリオ拡充戦略を推進する方針だ。

■中期的に収益拡大基調、22年中国・北京冬季五輪も追い風

 国内のスキー人口は、スキーブームと呼ばれたバブル期の80年代~90年代をピークとして長期減少傾向が続いた。しかし近年はスノーボード愛好者の増加や、バブル世代ファミリー層のゲレンデ回帰などで下げ止まり感を強めている。

 さらにジャパンパウダーを求める世界中のインバウンド顧客が急増し、滞在長期化傾向も強めている。22年冬季五輪開催地が中国・北京に決定したことを契機に中国でスキー人口が増加すれば、雪質の良い日本のスキー場でスキーを楽しむ中国人旅行客が一段と増加する可能性もあるだろう。

 一方では、スキー場の淘汰などでスキー場数の減少傾向は続いている。スキー場の新規開発はなく、大手不動産・鉄道会社においてもノンコア事業となったスキー場運営事業から撤退する動きも見られる。

 このためスキー場数と来場者数の需給バランスが改善傾向を強め、特にアクセス、ホスピタリティ、雪質に優れたスキー場には残存者利益が期待できる状況となっているようだ。こうした事業環境の好転も追い風であり、スキー場再生・運営専業企業としての強みを活かして、中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は下値固め完了して切り返し

 株主優待制度については15年7月期から実施している。毎年7月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、日本スキー場開発グループが運営するスキー場の割引チケット5枚(1枚で4名利用可)、および日本駐車場開発が運営・管理している時間貸し駐車場の1日駐車料金30%割引券5枚を贈呈する。

 株価の動きを見ると、決算発表直後の目先的な売りで水準を切り下げたが、8月25日の直近安値4200円を割り込むことなく、4500円近辺で推移して下値固め完了感を強めている。

 10月9日の終値4640円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS179円50銭で算出)は25~26近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1168円37銭で算出)は4.0倍近辺である。なお時価総額は約186億円である。

 週足チャートで見ると8月の直近安値を割り込まずに切り返す動きを強めている。富士山が初冠雪してスキーシーズン入りが接近していることも注目点であり、16年7月期増収増益予想を評価して反発展開だろう。

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