【アナリスト水田雅展の銘柄診断】アルコニックスは調整一巡して切り返し、16年3月期増配予想や指標面の割安感を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アルコニックス<3036>(東1)は商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指している。13日には平和金属の連結子会社化完了を発表した。株価は調整が一巡して切り返す動きだ。16年3月期増配予想や指標面の割安感を見直して6月の高値圏を目指す展開だろう。なお11月6日に第2四半期累計(4月~9月)の業績発表を予定している。

■商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」

 軽金属・銅製品(伸銅品、銅管、アルミフィン材など)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社である。

 レアメタル分野に強みを持つことも特徴だが、中期成長に向けて商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

 13年1月金属・化成品メーカーの米ユニバーティカル社を子会社化、13年3月アルミ合金スクラップ販売の大阪アルミセンターを子会社化、13年4月産業機械用精密加工部品メーカーの大羽精研を子会社化、14年4月住宅建設関連資材メーカーのケイ・マックを持分法適用関連会社化した。

 14年11月には子会社アルミ銅センター(大阪アルミセンターが14年9月1日付で商号変更)が、稲田商会(福岡県北九州市)の銅リサイクル事業を譲り受けた。

 15年7月には当社100%出資の中間持株会社アルコニックス・トーカイを設立し、アルコニックス・トーカイが東海溶業(愛知県豊田市)の全株式を取得して子会社化した。

 東海溶業は溶接材料の製造ならびに溶射加工事業を展開して、特に金型用肉盛溶材および溶射加工において業界で高い地位を確保している。また国内主要自動車メーカーを筆頭に優良大手企業を取引先として、安定した収益基盤を確立している。当社グループの製造・加工分野に溶接・溶射加工という新たな事業基盤が加わることになる。

 なお10月13日には、非鉄金属専門商社の平和金属(大阪市)の株式取得(連結子会社化)が10月9日付で完了したと発表している。株式取得時期が当初の予定より遅れたが、所有割合78.35%で、16年3月期第3四半期(10月~12月)から連結対象となる。

■収益はM&Aも寄与

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)484億04百万円、第2四半期(7月~9月)485億96百万円、第3四半期(10月~12月)546億06百万円、第4四半期(1月~3月)499億37百万円で、経常利益は第1四半期17億13百万円、第2四半期13億95百万円、第3四半期13億02百万円、第4四半期7億95百万円だった。

 レアメタル・レアアースの市況、持分法投資損益、そしてM&Aに伴うのれん償却や負ののれん益なども収益変動要因となるが、積極的なM&Aの効果も寄与して収益拡大基調だ。また15年3月期の配当性向は14.6%だった。ROEは14年3月期比2.5ポイント低下して14.9%、自己資本比率は同5.0ポイント上昇して29.3%だった。

■株式取得遅れで第2四半期累計純利益減額だが、16年3月期予想変更なし

 9月3日に今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の純利益を減額修正した。平和金属の株式取得(連結子会社化)が第3四半期となり、負ののれん益の特別利益計上も第3四半期に変更となったため、純利益は前回予想(5月15日公表)の24億60百万円から7億円減額して17億60百万円とした。

 通期の連結業績予想は前回予想(5月15日公表)に変更はなく、売上高が前期比7.2%増の2160億円、営業利益が同5.1%減の43億50百万円、経常利益が同7.8%減の48億円、純利益が同14.1%増の40億円としている。配当予想は同4円増配の年間44円(第2四半期末22円、期末22円)で予想配当性向は14.1%となる。

 売上面では自動車関連、スマホ・タブレット関連を中心に好調に推移して増収予想だ。経常利益は前期計上したケイ・マックの持分法適用関連会社化に伴う負ののれん発生益が一巡して減益見込みだが、純利益については平和金属の連結子会社化により、同社の収益と特別利益に計上する負ののれん発生益が寄与して増益予想だ。

 セグメント別利益(経常利益)の計画は、軽金属・銅製品が同17.7%減の24億70百万円、電子・機能材料が同15.3%増の20億円、非鉄原料が同21.6%減の2億10百万円、建設・産業資材が同42.0%減の1億20百万円としている。なお軽金属・銅製品はケイ・マックの負ののれん発生益一巡の影響を除けば実質的に増益となる。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比9.3%増の529億30百万円となり、営業利益が同28.2%増の12億32百万円、経常利益が同25.8%減の12億71百万円、純利益が同39.5%減の7億90百万円だった。

 前期の持分法投資利益に計上したケイ・マックの負ののれん発生益が一巡して経常減益、最終減益だったが、銅スクラップ、銅管、アルミ箔、アルミフィン材、プラント・船舶用チタン、半導体製造装置用精密研削加工部品などが好調に推移して増収、大幅営業増益だった。

 セグメント別利益(経常利益)を見ると、軽金属・銅製品は同33.2%減の7億67百万円だったが、売上面は同11.5%増収と好調で、ケイ・マックの負ののれん発生益一巡の影響を除けば増収増益だった。

 電子・機能材は同22.0%減の3億93百万円だった。スマホ・タブレット関連需要は堅調だったが、国内の太陽光発電関連需要が減速し、レアメタル・レアアースの市況低迷も影響した。

 非鉄原料は同2.9倍の76百万円だった。主力のアルミ再生塊はやや低調だったが、14年11月に営業譲り受けた連結子会社の銅スクラップが寄与した。建設・産業資材は同19.2%増の41百万円だった。国内は低調だったが、円安に伴う配管機材の輸出や海外取引が好調だった。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が24.5%、営業利益が28.3%、経常利益が26.5%、純利益が19.8%である。純利益がやや低水準の形だが、第3四半期に平和金属の連結子会社化に伴う負ののれん発生益を特別利益に計上する予定だ。

■新中期経営計画で18年3月期ROE13~15%程度目標

 15年5月に新中期経営計画(16年3月期~18年3月期)を発表した。1年ごとに見直すローリング方式で、経営目標値として18年3月期の経常利益65億円超、純利益43億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度を掲げ、3年間の投融資総額はM&Aを中心に200億円の計画としている。

 セグメント別には軽金属・銅製品が売上高982億円、経常利益34億50百万円、電子・機能材が売上高1008億円、経常利益23億80百万円、非鉄原料が売上高360億円、経常利益3億10百万円、建設・産業資材が売上高180億円、経常利益3億60百万円としている。

 商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、アクションプランとして、業容拡大に向けた川上・川中・川下等のM&A推進および新規事業投資案件の発掘推進、成長著しいレアメタルおよび電子・機能材料分野のさらなる強化、アルコニックスグループの商いの基盤をなすアルミ・銅分野の維持・拡大、環境問題に対応したリサイクル分野の強化、海外店ネットワークのさらなる充実による顧客ニーズ対応および地場取引・三国間取引の拡大に向けた商社機能の発揮としている。

 積極的なM&A戦略も奏功し、グループのシナジー効果を高めて中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して切り返し、16年3月期増配予想や割安感を見直し

 株価の動きを見ると、悪地合いの影響を受けた8月25日に年初来安値となる1472円、そして9月末の配当権利落ちも影響した9月29日に1506円まで調整したが、その後は切り返しの動きを強めている。10月9日と13日には1740円まで上伸した。調整が一巡したようだ。10月3日には16年3月期純利益が従来予想を下回ると一部で報道されたが、ネガティブ反応は見られず、逆に上げ足を速めている。

 10月13日の終値1711円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS311円43銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2053円83銭で算出)は0.8倍近辺である。なお時価総額は約220億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。そして25日移動平均線が上向きに転じてきた。また週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して強基調に転換する動きのようだ。16年3月期増配予想や指標面の割安感を見直して6月の高値圏を目指す展開だろう。

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