【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンインベストメントアドバイザーは船舶対象オペレーティング・リース第1号案件の組成完了

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)<7172>(東マ)はオペレーティング・リース、環境エネルギーファンドを中心に金融ソリューション事業を展開し、M&Aも活用して純利益毎期50%以上の成長を目指している。14日には船舶対象オペレーティング・リース第1号案件の組成完了を発表した。株価は戻り歩調の展開だ。中期成長力を評価して水準切り上げの展開だろう。なお10月29日に第3四半期累計(1月~9月)の業績発表を予定している。

■オペレーティング・リース主力に金融ソリューションを展開

 設立(06年9月)時からのオペレーティング・リース事業を主力として、07年2月にM&Aアドバイザリー事業、14年5月に太陽光発電第1号ファンドを組成して環境エネルギーファンド事業を開始した。14年12月には投資銀行本部を設置して金融ソリューション事業を本格展開している。

■オペレーティング・リース事業の対象領域を拡大

 主力のオペレーティング・リース事業は、11年8月設立の子会社JPリースプロダクツ&サービシイズ(JLPS)が第二種金融商品取引業登録業者として、航空機や海上輸送用コンテナを主対象に展開している。また米CAI社(NY証券取引所上場)と07年1月合弁で設立したCAIJ社(コンテナ・オペレーティング・リース事業)を持分法適用関連会社としている。

 10月6日には航空機を対象としたパーツアウト・コンバージョン事業の開始を発表した。パーツアウト事業は退役航空機を解体し、その各部品を在庫管理し、世界の整備会社・リース会社・航空会社等へ販売する事業、コンバージョン事業は機齢の経った旅客機を輸送機等に改造してリサイクルする事業である。営業利益率20%前後と比較的高い収益性が期待できるとしている。

 10月14日には船舶を対象とした日本型オペレーティング・リース第1号案件の組成完了を発表した。リース開始日は15年10月13日、リース対象物件はリベリア船籍1隻(96年製、積載容量約4200立米)、賃借人はケミカルタンカーオペレーター大手である。これにより対象物件として航空機・船舶・海上輸送用コンテナのすべての領域をカバーすることになった。投資対象の多様化という顧客ニーズに応えて収益拡大を加速する。

■中期成長に向けて環境事業を拡大

 主力のオペレーティング・リース事業に加えて、中期成長に向けてM&Aも積極活用しながら環境関連事業を拡大する方針だ。

 15年5月にLEシステム(福岡県)の株式を取得して資本業務提携した。同社の電力備蓄用バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)は太陽光発電の出力抑制に有効な蓄電システムとして期待されている。さらにバイオマス発電に関するノウハウも豊富であり、当社の投資ネットワークやファイナンス技術との補完によって、再生エネルギー分野でのシナジー効果を創出する。今後LEシステムへの出資比率引き上げも含めて、環境エネルギー事業を一段と拡大させる方針だ。

 なお9月4日付の日本経済新聞電子版ニュースでは「LEシステムが17年をメドにバナジウムレドックスフロー電池を製品化する方針」と報じている。主要材料である電解液の安価な製造法など独自技術の開発に成功したとしている。製品化した大容量電池を再生エネルギー取扱業者などに販売するほか、災害時の非常用電源として自治体などからの需要を見込み、電解液を他のメーカーに供給することも検討しているようだ。

 15年9月には、あすかグリーンインベストメント(AGI)の株式を取得(発行済株式数600株のうち300株)して資本・業務提携した。AGIはウクライナ、カザフスタンなど主に中央アジア、南アジアにおいて再生可能エネルギーや省エネルギー事業を展開している。AIGの環境ビジネスのノウハウと当社のファイナンス技術などとのシナジー効果を創出して、相互の事業発展を目指す方針だ。

■PE投資やIR支援にも進出

 プライベート・エクイティ(PE)投資や、上場企業のIR支援などにも進出して、事業の多角化も加速している。

 15年8月にはプライベート・エクイティ(PE)投資事業に本格的に進出するため、100%出資のPEファンドJPE第1号を設立してバリューアップ投資を開始すると発表した。当面は3億円を上限として当社100%出資で運営するが、将来的には投資家からの資金も受け入れる予定だ。

 第1号案件として日本マンパワーのグループ会社で人材派遣・紹介事業を展開するNMPスペシャリストの全株式を取得した。NMPスペシャリストは当社グループ入りと同時に日本マンパワーと包括的業務提携を締結し、当社の主要顧客である全国の優良な中堅・中小企業向け人材供給、ならびに人材育成・教育やキャリアアップへの参画を図る。3年後の上場を目指すとしている。

 15年9月には日本証券新聞および日本証券新聞リサーチの全株式を取得して子会社化した。両社を通じて新聞・出版・広告を中心としたメディア関連事業、およびIR(投資家向け広報)支援事業に進出する。当社が持つ金融機関や会計事務所などとのネットワークを最大限活用し、さまざまな金融情報の提供、全国の上場会社へのIR支援業務を積極的に展開する方針だ。

 またIR支援サービスの日本証券新聞リサーチと、人材派遣・紹介事業のNMPスペシャリストが連携して、人材難に悩む企業に対して中小企業診断士や社外取締役などを紹介・マッチングする事業なども展開するようだ。

■案件組成・出資金販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱

 オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業の組成・出資金販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱である。会計上の売上高認識基準は、顧客(投資家)から案件ごとに募集している出資金の販売すべてが終了した時点において、出資金に含まれる手数料を売上高として計上する。

 なお従来は営業費用に計上していた紹介手数料および案件組成に係る弁護士費用、営業外費用に計上していた案件組成に係る金融費用について、売上との直接的な対応関係を明確にするため、15年12月期から売上原価に計上している。

■15年12月期増収増益基調(7月29日に増額修正)

 今期(15年12月期)の連結業績予想(7月29日に増額修正)は、売上高が前期比2.1倍の22億21百万円、営業利益が同95.7%増の10億45百万円、経常利益が同60.1%増の10億90百万円、そして純利益が同54.8%増の6億55百万円としている。配当予想については無配継続としている。オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業とも案件組成および出資金販売が大幅伸長する。

 第2四半期累計(1月~6月)は前年同期比52.5%増収、同0.4%営業減益、同39.8%経常減益、同36.1%最終減益だった。販管費の増加で営業微減益となり、営業外費用の増加(支払利息、支払手数料、為替差損の増加)も影響して経常減益、最終減益だった。しかしオペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業とも、案件組成および出資金販売が伸長して大幅増収だった。

 組成は航空機2件(組成金額222億93百万円)、コンテナ1件(同36億24百万円)、太陽光発電3件(同18億25百万円)の合計6件、販売は航空機4件(販売金額49億63百万円)、コンテナ2件(同17億72百万円)、太陽光発電3件(同16億65百万円)の合計9件(同84億01百万円)だった。また第2四半期末の商品在庫として航空機4件(募集総額98億74百万円)、コンテナ1件(同11億22百万円)の組成を完了している。

 販売ネットワークは新たに地方銀行8行、税理士・会計事務所13事務所とビジネスマッチング契約を締結し、累計提携先は地方銀行19行、証券会社6社、税理士・会計事務所80事務所となった。また資金調達枠(コミットメントライン融資枠・当座貸越契約等)は14年12月期末比30.0億円増加の52.3億円となった。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)4億30百万円、第2四半期(4月~6月)3億50百万円、営業利益は第1四半期1億85百万円、第2四半期94百万円だった。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が35.1%、営業利益が26.7%、経常利益が15.2%、純利益が16.3%である。低水準の形だが下期(7月~12月)に多くの案件を抱えているため、特に第4四半期(10月~12月)に売上高が膨らむ見込みとしている。通期ベースで増収増益基調に変化はないだろう。

■案件供給・販売とも需要は高水準

 14年9月の東証マザーズ上場によって知名度・信用力が向上し、資金調達力や営業力も向上した。そして案件供給面では、オペレーティング・リース事業における航空機部門、海運コンテナ部門とも、賃借人からの引き合いが途絶えることなく、潜在需要が豊富な状態が続いている。また環境エネルギーファンド事業においても潜在的な案件数は豊富である。

 販売面では知名度・信用力の向上に伴って、全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社等からの顧客紹介が増加している。そして主要顧客である中堅・中小企業の収益改善や法人実効税率の段階的引き下げ実施期待も背景として、全国に広がる顧客(投資家)の投資意欲は高水準だ。航空機オペレーティング・リースは賃借人が欧米の一流航空会社であることも好評の一因のようだ。太陽光発電ファンドも為替リスクのない安定利回り商品として投資家ニーズが高い。

■純利益ベースで毎期50%以上の成長を計画

 中長期成長戦略として、第1ステージは航空機・オペレーティング・リース事業での競争力の高い商品供給による規模の拡大、第2ステージは参入障壁が比較的高く、物件価値が比較的安定しているコンテナ・オペレーティング・リース事業でのラインナップ充実、第3ステージはオペレーティング・リースの代替商品として、太陽光発電を中心とした環境エネルギーファンド事業の強化を推進してきた。

 そして今後の第4ステージでは、当社の優良中堅・中小企業の顧客基盤を十分に拡充しつつ、M&Aアドバイザリー事業、プライベート・エクイティ(PE)投資事業、不動産投資事業、事業承継・再生ファンド事業、ウェルス・マネジメント事業、中小企業に対する人材紹介事業など、金融ソリューション事業を中心にM&Aも積極活用して事業領域を広げる方針だ。

 オペレーティング・リース事業の継続的強化、環境エネルギーファンド事業の拡大、全国に広がる幅広い投資家層ニーズにマッチングした最適な金融商品とソリューションの提供に向けて、組成面では旺盛な投資家ニーズに対応した案件供給、新規賃借人の開拓、安定かつ機動的な資金調達力の確保、運用型商品の開発、販売面では全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社などとの連携による販売ネットワークの拡充を推進する。

 白岩直人代表取締役社長は「オペレーティング・リースの市場規模は今年度末に2500億円程度になると推測している。当社のシェアは現在10%程度だが早期に20%程度まで伸ばしていきたい。顧客の投資意欲は旺盛であり、当社の商品は現在検討されている税制改正に対する準備ができているため有利な状況だ」と述べている。そして「M&Aも積極活用して事業多角化やシナジー創出という成長戦略を推進し、純利益ベースで毎期50%以上の成長を目指す」と高成長に自信を見せている。

 主力のオペレーティング・リース事業は高水準の需要を背景として一段の伸長が予想される。さらに環境エネルギー事業やPE投資事業なども本格化して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は戻り歩調に変化なし

 株価の動き(15年1月1日付で株式5分割)を見ると、8月25日の年初来安値885円から急反発して戻り歩調の展開だ。10月13日には1849円まで上伸した。

 10月14日の終値1781円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS58円86銭で算出)は30~31倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS122円78銭で算出)は14~15倍近辺である。なお時価総額は約198億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。そして13週移動平均線が上向きに転じて強基調への転換を確認した形のようだ。日足チャートで見ると25日移動平均線に対するプラス乖離率が16~17%程度に拡大して目先的にはやや過熱感もあるが、戻り歩調に変化はなく中期成長力を評価して水準切り上げの展開だろう。

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