【アナリスト水田雅展の銘柄分析】IBJは10月15日に自己株式取得、アベノミクス「新3本の矢」少子化対策関連

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

IBJ<6071>(東1)は日本最大にして唯一の婚活総合サービス企業である。アベノミクス「新3本の矢」の少子化対策関連の主力銘柄だ。10月14日にToSTNeT-3による自己株式取得(10月15日実施)を発表した。会員数増加基調で15年12月期業績予想は再増額が濃厚であり、創業15周年および東証1部指定で増配期待も高まる。積極的な株主還元姿勢も評価材料だ。株価は調整一巡して戻りを試す展開だろう。なお11月11日に第3四半期累計(1月~9月)の業績発表を予定している。

■日本最大にして唯一の婚活総合サービス企業

婚活サイト、お見合いパーティー、結婚相談(婚活ラウンジおよび結婚相談所)から、ライフデザインサービスや地方自治体の婚活支援研修まで、ネットとリアルを最大限に活用して、各事業のシナジー効果を高めながら婚活に関するサービスを幅広く展開している。日本最大にして唯一の婚活総合サービス企業である。

00年に日本初のインターネット結婚情報サービス(婚活サイト)を本格開始、03年に「Yahoo!JAPAN」の婚活サービスを構築、そして04年には国家公務員共済組合連合会(KKR)の福利厚生サービスを受託した実績を持つ。

主力事業は、日本最初の婚活サイト「ブライダルネット」運営のコミュニティ事業、婚活パーティー「PARTY☆PARTY」や合コン「Rush」運営のイベント事業、IBJ直営9店舗で展開する婚活ラウンジ「IBJメンバーズ」のラウンジ事業、およびIBJ正規加盟店「日本結婚相談所連盟」に加盟する全国1000社超の結婚相談所に対するお見合いシステム提供、ビッグデータも活用した婚活会員向け広告サービス、ブライダル関連企業への会員カップル送客(紹介)のコーポレート事業(15年8月に組織変更)である。

15年6月には「ブライダルネット」の新機能「お相手紹介サービス」をリリースした。成婚率約52%の婚活ラウンジ「IBJメンバーズ」でノウハウを積み上げた会員サポート専任スタッフ「婚シェル」が、推奨コメント付きでユーザーが気になる異性にアプローチするサービスだ。大手結婚相談所の30分の1の価格で利用できる。さらに今後は、初デートやプロポーズのセッティングサービスの追加を予定するなど、婚活サイトのサービスを一段と進化させる。

日本結婚相談所連盟に加盟する相談所を含めたIBJグループ全体の婚活会員数は15年9月末時点で39.5万人(オンライン会員数33.9万人+オフライン会員数5.6万人)であり、IBJグループ全体で創出する年間結婚カップル数は約4000組に達している。日本最大規模の集客力と会員数を誇る婚活総合サービス企業だ。

■会員数増加に伴って収益拡大するストック型ビジネスモデル

収益は、コミュニティ事業では「ブライダルネット」月会費課金者からの月会費、イベント事業ではイベント参加費、ラウンジ事業では登録料・活動サポート費・月会費および成果報酬の成婚料、コーポレート事業では加盟結婚相談所からの加盟金と月額システム利用料、広告収入、およびブライダル関連企業からの手数料収入である。

なお事業セグメント区分は、メディア部門(コーポレート事業、コミュニティ事業、イベント事業)、およびサービス部門(ラウンジ事業)としている。

婚活会員数や加盟結婚相談所の増加などに伴って収益が拡大するストック型のビジネスモデルである。またイベント事業のイベント開催回数・動員数および売上高は、クリスマスムードが高まる第4四半期(10月~12月)の構成比が高いという季節要因もあるようだ。

■IBJブランド力の強化と事業領域の拡大を推進

中期的には日本の国策や市場ニーズに貢献する企業として、年間6000組(日本の成婚組数の1%)の成婚をIBJグループで創出することを目指している。また周辺領域事業の拡大も推進して、成長イメージとして18年12月期の会員数100万人、売上高100億円企業を目指すとしている。

成長戦略としては、クオリティ向上によるIBJブランド力の強化、既存事業の一段の強化に加えて、行政・地方自治体との連携強化、ライフデザイン領域への事業領域拡大などを推進する方針だ。

行政・地方自治体との連携では、国家公務員共済組合連合会(KKR)からの福利厚生サービス受託に加えて、山形・山梨・富山・岐阜・和歌山・京都・高知・徳島の8府県と連携し、結婚支援研修・セミナーや相談員育成サービスなどを実施している。

事業領域の拡大については、結婚式場やジュエリーなどブライダル関連企業21社(15年6月末時点)と提携し、会員カップルを送客(紹介)している。送客数は増加基調である。さらに不動産、保険、転職などライフデザイン分野の企業とも提携して送客領域を拡大する計画だ。

海外については、14年4月に台湾最大のオンラインマッチングサービス会社Sunfun Info社と台湾に合弁会社IBTを設立し、14年8月には自社店舗でのパーティー運用を開始して動員数が急速に増加している。そして15年6月時点で、直営婚活パーティーにおいて2組の成婚カップルが誕生した。台湾でもIBJブランド力の向上が期待される。

■国策である少子化問題解決に向けた活動を強化

なお15年1月には、大手企業による少子化対策プロジェクトとして民間事業者協議会「婚活サポートコンソーシアム」を発足させた。日本の少子化問題に対する社会意識向上を目的として、婚活サポートの立場から調査・分析に基づいた情報発信などを行う。現在13社が参画しており、順次参画企業を増やして問題解決への取り組みの輪を広げていく方針だ。

活動の一環として、4月13日「婚活における身だしなみとファッション」に関する調査レポート、5月28日「結婚前後の住まい」に関する調査レポート、7月1日「結婚後の出産育児」に関する調査レポート、8月5日「婚活と結婚式」に関する調査レポート、9月14日「結婚後の女性の働き方」に関する調査レポートを発表している。

なお15年6月には、小泉進次郎衆議院議員など最前線で活躍する著名人をゲストコメンテーターに迎えて「第1回婚活シンポジウム」を開催した。

また15年6月には、15年7月11日から開催される歌手のクリス・ハートによる全国ツアー「47都道府県Tour2015-2016~続く道~presented by IBJ」(約10万名動員予定)のメイン公式スポンサー契約を締結した。ツアーの成功を応援するとともに、コンサートに招待する「ご成婚おめでとう!IBJ特別シートツアー」など、自社婚活サービスに関連する6大キャンペーンを実施する。

■15年12月期業績予想は再増額が濃厚、会社創業15周年で増配期待

今期(15年12月期)の非連結業績予想(6月26日に増額修正)は、売上高が前期比21.6%増の40億33百万円、営業利益が同32.7%増の8億53百万円、経常利益が同34.3%増の8億46百万円、そして純利益が同34.5%増の5億44百万円としている。8期連続の増収予想だ。なお配当予想は未定としている。

婚活会員(オンライン・オフライン)数、ブライダルネット月会費課金者数、PARTY☆PARTYやRushのイベント動員数、日本結婚相談所連盟の加盟相談所数、および成婚数が増加基調であり、6月リリースした「ブライダルネット」新機能「お相手紹介サービス」などの新サービスや、送客ビジネスの拡大も寄与する。

第2四半期累計(1月~6月)は、売上高が前年同期比27.6%増の19億49百万円で、営業利益が同36.3%増の3億94百万円、経常利益が同35.4%増の3億89百万円、純利益が同41.3%増の2億45百万円だった。会員数や成婚数の増加に伴って全事業が順調に推移し、人件費や広告宣伝費などの増加を吸収して大幅増収増益だった。

セグメント別(連結調整前)に見ると、メディア部門は売上高が同35.6%増の13億79百万円、営業利益が同46.0%増の5億32百万円、サービス部門は売上高が同13.6%増の6億25百万円、営業利益が同3.0%増の2億47百万円だった。

なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)9億27百万円、第2四半期(4月~6月)10億21百万円、営業利益は第1四半期1億94百万円、第2四半期1億99百万円だった。四半期ベースでも増収増益基調である。

15年6月末のブライダルネット月会費課金者数は1万4384名で前年同期比5488名(61.7%)増加した。第2四半期(4月~6月)のイベント開催回数は8274回で前年同期間比2254回(37.4%)増加、イベント動員数は9万6421名で前年同期間比2万5690名(36.3%)増加した。また第2四半期のラウンジ事業における成婚数は260名で前年同期間比56名(27.5%)増加した。成婚数は四半期ベースで初めて250名を超えた。

なお最新(10月7日公表)の月次データによると、15年9月末時点の婚活会員数は14年12月期末比7.7万人増加の39.5万人(オンライン会員数が同7.4万人増加の33.9万人、オフライン会員数が同0.3万人増加の5.6万人)、日本結婚相談所連盟加盟相談所数は同94社増加の1083社、ブライダルネット月会員課金者数は同0.6万人増加の1.6万人となった。

婚活イベント動員数は3.4万人だった。前年同月の2.5万人、14年の月間平均数2.4万人を大幅に上回り、好調だった8月(3.5万人)並みの集客を維持した。また第3四半期(7月~9月)合計の婚活イベント動員数は10.1万人となり、四半期ベースで初めて10万人を突破した。婚活会員数、そしてイベント動員数とも増加基調に変化はない。

通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.3%、営業利益が46.2%、経常利益が46.0%、純利益が45.2%である。ストック型の収益構造であり、イベント事業は第4四半期の構成比が高いことを考慮すれば高水準である。婚活会員数、イベント動員数とも増加基調であり、通期業績の会社予想は再増額が濃厚だろう。また15年は会社創業15周年であり、東証1部指定も達成した。配当についても増配期待が高まる。

■国策、社会的認知度向上、そしてサービス充実で収益拡大基調

未婚化・晩婚化による婚姻数の減少、生涯未婚率の上昇、さらに出生率低下で日本の少子化問題が深刻化しているため、一般的に婚活・ウェディング市場の縮小懸念があり、婚活ブームのピークアウトを指摘する見方もあるようだ。

しかし一方では、若者層の間に「いずれは結婚したい」という声が多く、婚活サービスの潜在市場規模は約1兆円とされる有望市場だ。

そして女性活用・子育て支援・少子化対策はアベノミクス成長戦略の重点分野に位置づけられる国策である。安倍晋三首相は9月24日の記者会見で「新3本の矢」として、あらためて少子化対策に取り組む意欲を示した。このため関連ビジネスとして、結婚~出産~子育て支援の前段階に位置付けられる婚活サービスに対する期待感も高まる。

また婚活サービス市場では中小規模事業者が多いため、サービス内容・情報に対する信頼感や料金体系に対する不透明感なども指摘されている。しかしネット大手の参入や、15年6月開催の「第1回婚活シンポジウム」などによって、婚活サービス業界に対する信頼感や社会的認知度・イメージが高まり、サービス利用者が増加して市場が拡大する効果が期待される。

ネット大手の参入は中小規模事業者を淘汰する一方で、規模の大きい優良事業者にとっては追い風となりそうだ。また15年7月に東証1部市場指定となったことなどにより、当社に対する社会的認知度・イメージ・信用力も一段と高まっている。日本最大規模の会員数を誇る優位性を活かし、さらに一段のサービス充実も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して戻りを試す、積極的な株主還元姿勢も評価

株主優待制度については毎年12月31日現在の株式1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。株主優待内容は100株以上~500株未満保有株主に対して特製QUOカード500円分および「IBJメンバーズ」などで利用できる株主優待券1枚、500株以上保有株主に対して特製QUOカード1000円分および「IBJメンバーズ」などで利用できる株主優待券3枚を贈呈する。

なお10月14日に自己株式取得を発表し、10月15日の東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)において買い付け委託を行った。買付価格は10月14日終値1311円で、取得した株式総数は14万9,100株であった。

株価の動き(15年1月1日付で株式2分割、15年7月17日付で東証1部)を見ると、8月下旬~9月下旬の直近安値圏1200円台で下値固めが完了し、10月上旬には1500円台まで戻す場面があった。アベノミクス「新3本の矢」の少子化対策関連としても注目されたようだ。その後は利益確定売りで一旦反落したが戻り歩調に変化はないだろう。

10月14日の終値1311円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS43円74銭で算出)は30倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS116円37銭で算出)は11倍近辺である。中期成長力を考慮すれば割高な水準とは考えられない。なお時価総額は約163億円である。

週足チャートで見ると1200円台から下値を切り上げて、13週移動平均線と26週移動平均線を突破する動きを強めている。会員数増加基調で15年12月期業績の会社予想は再増額が濃厚であり、創業15周年および東証1部指定で増配期待も高まる。アベノミクス「新3本の矢」少子化対策関連や中期成長力、積極的な株主還元姿勢を評価して戻りを試す展開だろう。

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