【アナリスト水田雅展の銘柄分析】京写は業績予想減額で急落したが売られ過ぎ感、次世代無線通信技術に注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 京写<6837>(JQS)はプリント配線板の大手メーカーである。株価は16年3月期業績予想の減額修正を嫌気して急落したが売られ過ぎ感を強めている。自動車ヘッドライトのLED化進展や、京都大学との次世代無線通信技術「カオスCDMA」の共同研究が注目される。反発のタイミングだろう。

■プリント配線板の大手メーカー

 プリント配線板の大手メーカーで、世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を収益柱として、実装治具関連事業も展開している。

 プリント配線板は防塵対策基板、高熱伝導・放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持ち、生産は国内および中国、インドネシアに拠点展開している。また実装治具関連事業も強化し、14年10月にはキクデンインターナショナルからフロー半田付け搬送キャリア事業を譲り受けた。


 15年3月期の製品用途別売上構成比は自動車関連が29.4%、家電製品が26.3%、事務器が12.8%、映像関連が7.0%、アミューズメントが5.6%、その他が18.9%だった。幅広い用途と顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得し、さらにLED照明関連の需要拡大も背景として、製品サイクルの長い自動車関連や家電関連を一段と強化している。

■LED照明関連は自動車ヘッドライトのLED化進展も期待

 中期経営計画では目標数値として、最終年度16年3月期売上高200億円(片面プリント配線板100億円、両面プリント配線板85億円、実装治具関連事業15億円)、売上高営業利益率6%(既存製品の営業利益率は6.5%以上)、ROE15%以上、ROA6%以上を掲げている。

 重点戦略としては、LED照明関連など環境対応製品の強化、ボリュームゾーンである片面プリント配線板分野における圧倒的トップシェアの獲得、グローバル戦略強化と海外生産の拡大、技術革新やコスト対応による収益力向上、基板・実装関連に次ぐ第3の事業の確立に取り組んでいる。LED照明関連については直管型LED照明の普及に加えて、自動車ヘッドライトのLED化進展も期待されている。

■京都大学と次世代無線通信技術「カオスCDMA」を共同研究

 15年7月に京都大学との共同研究契約締結を発表した。梅野健教授(京都大学大学院情報学研究科)の研究室と、次世代無線通信技術の「カオスCDMA」の産業利用化を目的として共同研究する。

 梅野健教授がカオス理論を用いて開発した「カオスCDMA」は、非常に高い通信安定性、高速通信、限られた周波数帯域で、多数の端末の同時アクセスを可能にする周波数共有技術である。有線通信と同等の性能を持ち、セキュリティ上重要な機密性も非常に高い無線技術で、信頼性や安定性の面で無線LANの課題を解決できるとされている。

 この技術の実用化が実現した場合、産業機器などのように、これまで有線通信が前提だった製品の無線通信化が可能になるため、配線の束が不要になるなどコストダウンや利便性の向上が図られる。また通信分野での利用のほか、工作機械、監視カメラ、ドローン、自動車など、さまざまな用途への利用や製品展開も期待できるとしている。

■LED照明関連の市場拡大が収益に追い風

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)41億65百万円、第2四半期(7月~9月)44億41百万円、第3四半期(10月~12月)45億35百万円、第4四半期(1月~3月)45億36百万円、営業利益は第1四半期2億53百万円、第2四半期2億33百万円、第3四半期2億39百万円、第4四半期1億91百万円だった。

 自動車や家電などの生産動向の影響を受けるが、LED照明関連の市場拡大が追い風である。また15年3月期の配当性向は16.7%だった。ROEは14年3月期比0.3ポイント上昇して12.3%、自己資本比率は同3.2ポイント上昇して44.5%だった。

■16年3月期業績予想を減額修正

 9月30日に今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)および通期の連結業績予想を減額修正した。中国の景気減速を主因として市場環境が急速に悪化し、増収増益予想から一転して増収減益予想となった。売上面では中国において、家電製品向けを中心に片面プリント配線板の受注が減少し、中国の新規顧客向けの立ち上げ延期も影響する。コスト面では円安に伴う輸入コスト上昇も影響するようだ。

 修正後の第2四半期累計連結業績予想は、前回予想(4月30日公表)に対して、売上高が2億円減額して前年同期比8.1%増の93億円、営業利益が2億円減額して同38.3%減の3億円、経常利益が1億70百万円減額して同35.5%減の3億10百万円、そして純利益が1億30百万円減額して同33.3%減の2億40百万円とした。

 修正後の通期の連結業績予想については、前回予想(4月30日公表)に対して、売上高が10億円減額して前期比7.5%増の190億円、営業利益が5億円減額して同23.6%減の7億円、経常利益が4億70百万円減額して同25.0%減の7億円、純利益が3億20百万円減額して同15.3%減の5億80百万円とした。

 配当予想については前回予想(4月30日公表)を据え置いて、前期と同額の年間8円(期末一括)としている。予想配当性向は19.8%となる。

 なお第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比12.8%増の46億97百万円だったが、営業利益が同23.2%減の1億94百万円、経常利益が同16.9%減の2億06百万円、純利益が同7.2%減の1億77百万円だった。需要が高水準に推移して2桁増収だったが、片面プリント配線板の生産量減少、円安による原材料等調達コストの上昇や海外での人件費の増加などで減益だった。

■株価は急落したが売られ過ぎ感

 株価の動きを見ると、京都大学との次世代無線通信技術「カオスCDMA」共同研究契約を好感した8月の年初来高値849円から反落し、さらに16年3月期業績予想の減額修正を嫌気して急落した。10月20日には年初来安値となる388円まで下押す場面があった。ただし売られ過ぎ感も強めている。

 10月20日の終値401円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS40円47銭で算出)は10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS438円92銭で算出)は0.9倍近辺である。なお時価総額は約59億円である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線も割り込んで調整局面だが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が25%程度に拡大して売られ過ぎ感を強めている。今期予想PERには割安感があり、自動車ヘッドライトのLED化進展や、京都大学との次世代無線通信技術「カオスCDMA」の共同研究も注目される。反発のタイミングだろう。

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