【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クレスコは16年3月期業績・配当予想を増額修正、7月の年初来高値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クレスコ<4674>(東1)は独立系のIT企業でビジネス系ソフトウェア開発を主力としている。10月26日に16年3月期業績予想および配当予想の増額修正を発表した。株価は強基調に回帰している。指標面に割高感はなく7月の年初来高値2198円を試す展開だろう。なお11月6日に第2四半期累計(4月~9月)の業績発表を予定している。

■ビジネス系ソフトウェア開発が主力のIT企業

 ビジネス系ソフトウェア開発(アプリケーション開発、基盤システム構築)事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。15年3月期の顧客業種別売上構成比は、ソフトウェア開発の金融・保険関連41.2%、公共・サービス関連20.1%、流通・その他21.3%、組込型ソフトウェア開発のカーエレクトロニクス6.2%、通信システム3.8%、情報家電・その他6.9%だった。

 中期成長に向けた重点施策としては、品質管理とプロジェクトマネジメント力の向上、組込型ソフトウェア開発事業の再構築、新ビジネスモデル創出と事業領域拡大、クラウド関連ソリューションの展開、グループ連携強化による収益性改善、ニアショア開発・オフショア開発の推進(地方分散開発体制強化と海外開発体制整備)などを掲げている。

■オリジナル製品や次世代技術の開発を推進

 オリジナル製品・サービスに関しては「インテリジェントフォルダ」「クレアージュ」や、14年6月に開始したSAP基幹業務をモバイル化して業務効率を向上させる新ソリューション「モビック」の拡販を推進している。

 15年3月には、旅行などのシーンで行われる点呼確認作業をビーコンとスマートデバイスを使って自動化するソリューション「みんなのてんこ」を発表し、5月から販売開始した。訪日外国人旅行客に対するサービス向上を実現するため16カ国後に対応した適切な言語で通知する機能も備えている。

 15年5月にはBLE(Bluetooth Low Energy)技術に基づくIoT基盤のプラットフォーム「BeaconBridge(ビーコンブリッジ)」の開発を発表した。

 15年6月には、IoT基盤プラットフォーム「BeaconBridge(ビーコンブリッジ)」に対して、Skeed社(東京都)と共同で次世代技術の自律分散型P2Pネットワークを活用する取組に着手すると発表した。

 15年7月には子会社クレスコワイヤレスが丸紅情報システムズと共同開発した単3電池2本型のビーコン(Beacon)デバイスの販売開始を発表した。スマートフォンやタブレットPCなどとBLE通信を行うビーコンデバイスである。

 そして10月6日には、クレスコワイヤレスがAPPLIYA社とスタンプ型のビーコンデバイス「Switch Beacon」と共同開発し、APPLIYA社が販売開始したと発表している。

 なお15年7月には、ソフトバンクの「IBM Watsonエコシステムプログラム」の初期エコシステムパートナーに選定されたと発表している。テクノロジーパートナーとして、Pepperをはじめとするロボット、モバイル、パソコンに対するさまざまなアプリケーション開発を通じてWatsonによるビジネス変革を支援する。

 15年9月には、Kii社、KDDI<9433>、大日本印刷<7912>が設立した、IoT時代の新たな企業間連携を生み出す企業連合「Kiiコンソーシアム」に参加した。現在21社が参加している。

■中期成長に向けてアライアンス・M&Aも積極活用

 得意分野を持つビジネスパートナーとのアライアンス・M&A戦略も積極活用している。

 13年4月ソリューション事業のクリエイティブジャパンを完全子会社化、企業コンサルティング事業のエル・ティー・エスを持分法適用会社化、13年9月三谷産業<8285>とクラウドサービス事業で協業、14年3月ゴマブックスと提携して企業内文書デジタルサービスの提供開始、14年8月高速クラウド構築支援サービスでSkeed社と技術提携、14年12月受託ソフトウェア開発のエー・アイ・エム・スタッフを持分法適用会社化した。

 15年3月には技術提携先のSkeedの第三者割当増資を引き受けて(出資比率12.1%)提携関係を強化した。15年4月にはSAP社の基幹業務パッケージの導入支援を主力とするエス・アイ・サービスの株式100%取得して完全子会社した。ERP事業を一段と強化する。

 15年5月には子会社のクレスコ北陸がアップゾーン(東京都)と資本業務提携してモバイルポータル事業に参入した。アップゾーンが提供するスマホ向けアプリケーション作成プラットフォーム「misterPARK」を中核に置いた多面的なモバイルポータル事業を展開する。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)58億10百万円、第2四半期(7月~9月)61億89百万円、第3四半期(10月~12月)61億55百万円、第4四半期(1月~3月)69億09百万円、営業利益は第1四半期3億80百万円、第2四半期5億89百万円、第3四半期5億43百万円、第4四半期5億01百万円だった。

 第4四半期の構成比が高い収益構造で案件別の採算性も影響する。また15年3月期のROEは14年3月期比3.4ポイント上昇して14.1%、自己資本比率は同1.3ポイント上昇して60.8%、配当性向は28.5%だった。

■16年3月期業績・配当予想を増額修正

 10月26日に今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)と通期の連結業績予想、および配当予想の増額修正を発表した。金融セグメントを中心とする開発案件増加、販管費の抑制効果などが寄与したようだ。

 第2四半期累計は前回予想(5月8日公表)に対して、売上高が6億20百万円増額して前年同期比15.2%増の138億20百万円、営業利益が1億70百万円増額して同24.9%増の12億10百万円、経常利益が2億80百万円増額して同30.6%増の14億10百万円、純利益が2億72百万円増額して10億17百万円とした。

 通期の連結業績予想については、前回予想(5月8日公表)に対して、売上高が6億円増額して前期比10.1%増の276億円、営業利益が1億円増額して同14.3%増の23億円、経常利益が2億円増額して同16.1%増の26億円、純利益が2億10百万円増額して同26.7%増の17億80百万円とした。

 なお計算上は下期(10月~3月)を減額修正した形だが、通期の連結業績予想に関しては、来期(17年3月期)以降の継続的な成長に向けての教育投資、新技術開発に関連する技術研究投資、社内作業効率向上化に関連するシステム開発投資、受託開発案件増加に対応した事務スペース拡充等の施策を織り込んだとしている。

 配当予想については、前回予想(5月8日公表)に対して、第2四半期末に3円増額、期末に3円増額し、合計で6円増額して年間46円(第2四半期末23円、期末23円)とした。予想配当性向は29.1%で、前期との比較では8円増配となる。なお配当に関しては、特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額をメドとした配当を継続的に実現することを目指している。

 なお第1四半期(4月~6月)は、売上高が前年同期比13.0%増の65億64百万円で、営業利益が同11.3%増の4億23百万円、経常利益が同18.4%増の5億25百万円、純利益が同0.7%増の3億61百万円だった。受注高は同23.9%増72億86百万円で、第1四半期末の受注残高は同28.6%増の45億54百万円となった。売上総利益率は16.8%で同0.5ポイント低下したが、ソフトウェア開発事業、組込型ソフトウェア開発事業とも好調に推移した。

 また修正後の通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率を見ると、売上高50.1%、営業利益52.6%、経常利益54.2%、純利益57.1%と高水準である。修正後の通期会社予想には来期以降の成長に向けた先行投資を織り込んだとしているが、第4四半期の構成比が高い収益構造であることを考慮すれば、通期会社予想に再増額の余地があるだろう。

 国内のIT投資需要は、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などを背景として高水準に推移する見込みだ。中期的にも収益拡大基調だろう。

■株価は強基調に回帰、7月の年初来高値試す

 なお14年11月のドイツ銀行ロンドン支店を割当先とする自己株式を活用した第三者割当による第1回~第3回新株予約権の発行、および新株予約権買い取り契約(行使許可条項付・ターゲット・イシュー・プログラム「TIP・2014モデル」)について、3月12日に第1回新株予約権の権利行使が全て完了した。

 第2回新株予約権については3月18日、5月12日、6月11日、7月9日、7月24日、8月21日に行使許可を発表している。なお大量行使によって7月31日時点での第2回新株予約権の未行使は25万個(25万株)となった。

 株価の動きを見ると、直近安値圏1600円近辺で調整が一巡して水準を切り上げている。10月26日には戻り高値となる1950円まで上伸する場面があった。強基調に回帰したようだ。

 10月26日の終値1928円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS158円07銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間46円で算出)は2.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS990円11銭で算出)は1.9倍近辺である。なお時価総額は約231億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインとなった。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。調整が一巡して強基調に回帰したようだ。指標面に割高感はなく、16年3月期業績予想および配当予想の増額修正を評価して7月の年初来高値2198円を試す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る