【アナリスト水田雅展の銘柄分析】PALTEKは15年12月期業績は3回目の増額の可能性、FPGAに注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 PALTEK<7587>(JQS)はFPGAを主力とする半導体輸入商社である。そして受託設計・開発のデザインサービス事業も強化している。株価は戻り歩調の展開だ。15年12月期業績予想は3回目の増額修正の可能性が高い。世界的にFPGAをメインチップとする流れで、自動車の先進運転支援システム関連としても注目度が高まっている。なお11月5日に第3四半期累計(1月~9月)の業績発表を予定している。

■FPGAなどの半導体販売・技術支援事業が主力

 ザイリンクス社のFPGA(PLDの一種で設計者が手元で変更を行いながら論理回路をプログラミングできるLSI)を主力として、特定用途IC、汎用IC、アナログ、メモリなどを扱う半導体販売・技術支援事業、試作ボードや量産ボードなどを受託設計・開発・製造(ODM、EMS、OEM)するデザインサービス事業、さらに新規事業としてスマートエネルギー事業(病院・介護施設向け停電対策システム)を展開している。海外は香港に拠点展開している。

 主要仕入先はFPGAがザイリンクス社、汎用ICがNXPセミコンダクターズ社、マイクロチップテクノロジー社、アナログがリニアテクノロジー社、メモリがマイクロンテクノロジー社である。用途別には産業機器向けを主力としてFA機器、通信機器、放送機器、医療機器、車載機器向けなどに展開し、センサー分野のソリューションも強化している。主要販売先はNEC<6701>、京セラ<6971>、オリンパス<7733>などである。

■事業領域拡大も積極推進

 12年7月にはODM/EMS事業推進、および映像・画像処理関連の自社製品事業の本格展開に向けてエクスプローラを子会社化した。同社はレート制御機能搭載「H.264コーデック装置」を開発し、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のイノベーション実用化ベンチャー支援事業として「レート制御機能搭載4K対応H.265コーデック装置実用化開発」および「超低遅延8K対応HEVC-ECFによるハイブリッド配信装置」が採択されている。

 14年6月には子会社テクノロジー・イノベーションを設立した。サイミックス社から半導体事業およびMEMS(微小電気機械システム)事業を譲り受けて、特定顧客向け人感センサーの信号処理ICの開発を推進する。

 14年11月にはエクスプローラがフジテレビジョンと共同でH.264小型ライブ中継伝送装置「VideoCast Advance」を開発した。大規模な機材を使わず簡単にライブ中継することが可能になる。そして15年2月にはNHKと「H.264HD対応IP蓄積伝送装置」を共同開発した。火山噴火口、土砂流、津波などの監視を行う情報カメラで収録した映像を瞬時に活用することが可能になる。

 15年2月には超高精度衛星測位システムを開発するマゼランシステムズジャパンと総販売代理店契約を締結した。センサー分野のソリューション強化の一環として、センチメートル級の精度が要求される産業機器や農業機械の自動運転向けなどにRTK(リアルタイム・キネマティック)GNSSシステムを提供する。

 15年5月には赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の、赤外線カメラに関するセンサー製品の販売を開始すると発表した。検査機器、防災機器、セキュリティ用監視カメラなど、さまざまな分野で成長が期待される赤外線カメラに関するソリューションを提供することが可能になる。

 15年8月には、データ分析と予測サービスを提供して世界150ヶ国の企業と政府機関の意思決定と戦略策定を支援している米IHS社との販売代理店契約締結を発表した。これによって、顧客の製品企画や設計開発、迅速な電子部品・半導体の選定、半導体・電子部品の製造中止部品に対するリスク管理などに関するソリューションを提供することが可能になる。

 10月6日には、病院向け停電対策システム提供の一環として、透析施設向けに72時間以上の電力供給を実現するプロパンガス式自家発電システムの提供を開始すると発表した。

 また10月16日には、マゼランシステムズジャパンの「低コストで実現された、自動運転用高精度衛星測位モジュールとIMU(慣性演算装置)との高度カップリングシステム」が、CEATEC AWARD 2015ソーシャル・イノベーション部門グランプリに選出されたと発表している。

■15年12月期業績予想は3回目の増額の可能性

 今期(15年12月期)の連結業績予想(7月9日に2回目の増額)は、売上高が前期比18.8%増の275億円、営業利益が同19.0%増の12億円、経常利益が同8.8%増の11億45百万円、純利益が同30.5%増の7億35百万円としている。

 事業別売上高の計画は半導体事業が同6.2%増の258億50百万円(うちFPGAが同9.6%増の120億円、特定用途ICが同4.5%減の63億円、汎用ICが同14.7%増の33億50百万円、アナログが同9.1%増の20億50百万円、メモリが同7.5%増の21億50百万円)、デザインサービス事業が同横ばいの14億50百万円、その他が同横ばいの2億円としている。新規顧客案件も順調に伸長する。

 通期ベースでの売上総利益率の想定は同0.9ポイント低下の15.1%としている。新規顧客案件は取引開始当初の利益率が低下すること、競争激化などで全体として利益率が低下傾向であることを考慮している。また下期の為替影響を見込んでいない。ただし下期もドル高・円安傾向であり、仕入先に対するドル建て仕入値引き債権評価額を含む為替レート変動影響が増益要因となるだろう。

 第2四半期累計(1月~6月)は売上高が前年同期比14.0%増の133億08百万円で、営業利益が同78.8%増の7億47百万円、経常利益が同83.2%増の7億13百万円、純利益が同99.0%増の4億54百万円だった。

 事業別売上高は、半導体事業が同13.8%増の125億24百万円(うちFPGAが同25.0%増の53億33百万円、特定用途ICが同3.9%減の32億17百万円、汎用ICが同16.4%増の18億49百万円、アナログが同11.2%増の9億66百万円、メモリが同24.0%増の11億54百万円)、デザインサービス事業が同17.0%増の7億04百万円、その他が同20.3%増の79百万円だった。

 売上面では、主力のFPGAで産業機器関連の新規顧客との取引が増加して医療機器向けも堅調だった。汎用ICではオフィス機器向け、アナログでは医療機器向け、メモリでは産業機器向けなどが増加した。利益面では為替影響を含む売上総利益率が同1.9ポイント上昇して16.1%となり、販管費の増加を吸収して大幅増益だった。

 なお売上総利益率については、新規顧客案件が取引開始当初はやや低採算となるため為替影響を排除した段階では同1.0ポイント低下して13.4%となったが、ドル高・円安進行に伴い、仕入先に対するドル建て仕入値引き債権評価額を含む為替レート変動影響が増益要因として3億56百万円発生(前年同期は減益要因として31百万円発生)した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)65億08百万円、第2四半期(4月~6月)68億円、営業利益は第1四半期4億59百万円、第2四半期2億88百万円だった。第2四半期の営業利益は新規顧客案件が取引開始当初でやや低採算となったことや販管費の増加が影響した。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.4%、営業利益が62.3%、経常利益が62.3%、純利益が61.8%と高水準である。ドル高・円安傾向であることも考慮すれば、通期会社予想は3回目の増額の可能性が高いだろう。

 なお配当予想(2月12日公表)については前期と同額の年間8円(期末一括)を据え置いている。ただし業績予想の増額に伴って配当も増額の可能性がありそうだ。

■FPGAの市場拡大に注目

 中期的な収益向上に向けた取り組みとして、半導体事業では高付加価値製品の取り扱い拡大、中核製品であるFPGAのさらなる拡販、センサーおよびソフトウェア市場の開拓、医療・産業・通信・放送など成長分野への注力、デザインサービス事業では医療・放送・通信分野の受託設計・開発・ODM強化、自社製品の開発・販売強化、スマートエネルギー事業では病院・介護施設向け停電対策システムの構築・販売を強化する方針だ。

 中核製品のFPGAに関しては、通信・産業・放送・医療・車載機器分野において、新規顧客獲得を含めて拡販を強化する。FPGAは論理回路構成を自由に書き換えられるため、世界的なトレンドとしてプロセッサーを内蔵したFPGAをメインチップとする傾向を強めている。米インテルがFPGA大手の米アルテラを約167億ドル(約2兆7000億円)で買収したことでも注目された。そして今後は自動車の先進運転支援システム(ADAS)分野などを中心として市場拡大が予想されている。

 またセンサー関連市場に関しては、赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の赤外線カメラモジュールを、産業機器(検査機器、防災機器、産業向け携帯情報端末)やセキュリティ用監視カメラ向けに拡販する方針だ。高度なデザイン力やソリューション力を武器として中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は8月安値から切り返して戻り歩調、中期成長力を評価

 株価の動きを見ると、悪い合いも影響した8月の直近安値545円から切り返し、10月以降は700円近辺まで上伸している。調整が一巡して戻り歩調の展開だ。

 10月27日の終値695円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS66円21銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS766円18銭で算出)は0.9倍近辺である。なお時価総額は約82億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。そして25日移動平均線が上向きに転じてサポートラインとなった。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線突破の動きを強めている。指標面に割安感があり、15年12月期業績予想3回目の増額修正の可能性、さらに中期成長力を評価して出直り展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る