【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは下値切り上げて戻り歩調、16年5月期は営業損益改善基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信や店頭アフィリエイト広告ビジネスなどを展開している。株価は8月の年初来安値から下値を切り上げて戻り歩調だ。16年5月期の営業損益改善基調を評価して出直り展開だろう。

■コンテンツサービス事業とソリューション事業を展開

 交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム、メール、音楽などのコンテンツを制作してキャリアの定額制サービスで配信するコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開している。

 ライフスタイルコンテンツの分野では15年10月、子供が欲しいカップルの妊活ライフをサポートするアプリ「ラブめも」の配信を開始した。

 中国にも積極展開して、チャイナテレコムの携帯電話販売店運営や、電子コミック配信サービスなどを手掛けている。中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。

 なお10月20日、中国全土をカバーするコンテンツ配信ライセンスを保有する中国子会社の北京業主行網絡科技有限公司の出資金持分を売却(譲渡実行は15年12月予定)すると発表した。連結業績への影響は現在精査中としている。

 05年12月に子会社化して、中国の携帯通信事業者(チャイナモバイル、チャイナユニコム、チャイナテレコム)向けにモバイルコンテンツを配信してきたが、その後のコンテンツプラットフォームの多角化に伴って、ICPライセンス保有メリットが低下し、同社の損失計上が続いているため出資金持分の売却を決定した。

 また今後の中国における事業展開については、中国での経験やノウハウを活かして、携帯電話等販売事業(チャイナテレコムの携帯電話販売店2店舗の運営)、卸売をはじめとしたソリューション事業(銀潤控股集団有限公司に対するサンリオキャラクター商品の日本からの輸出など)、およびモバイルコンテンツ事業を積極的に展開するとしている。

■ネイティブアプリと法人向け業務支援サービスを収益柱に育成方針

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略としている。そしてアライアンスも活用して事業領域を広げ、ネイティブアプリや法人向け業務支援サービスを新たな収益柱に育成する方針だ。

 ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化に向けて、13年3月に音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月に子会社HighLabを設立、14年11月にアプリ開発の会津ラボを子会社化した。

 法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。また14年10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。

 子会社HighLabは15年6月、新機能「お絵かき通話」搭載したスマートフォン向け無料チャットアプリ「Fivetalk」最新版を公開した。

 15年5月にはスマートコミュニティ事業および太陽光発電・販売の合弁子会社として山口再エネ・ファクトリー設立(15年6月)を発表した。また子会社の会津ラボが、会津若松市「桜咲く会津プロジェクト実行委員会」が実施する「次世代型食品生産トライアル事業」へ、農作物の高品質化・高付加価値化を実現するアプリケーションならびにシステムを開発して提供すると発表した。ICTを活用してスマート農業を支援する。

 15年6月にはIDCフロンティアとクラウド分野で業務提携して、クラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービスを開始した。15年7月にはプロモートが実施する第三者割当増資を引き受けて子会社化した。拡大する受託開発案件への対応力強化、業務効率化ソリューションの販売促進などで事業領域拡大に繋げる方針だ。

 15年8月には、千葉県が少子化対策事業の一環として県民を支援するために提供するスマートフォンアプリ「ちばMy Style Diary」を、千葉県からの委託を受けて開発・運用開始した。

 15年9月には総合電子書籍サービス「BOOKSMART」PC版の提供を開始した。これまでスマホ・タブレット向けに提供してきたが、新たに未配信作品2万タイトルを追加投入してPC版サービスも開始する。

 また15年9月には子会社の会津ラボが、山口県周南市が運営する徳山動物園で、来園者を見たい動物の前まで道案内するナビゲーション「あるく動物ナビ」を開発し、サービス開始した。

■15年5月期はソリューション事業が大幅伸長したが原価率も上昇

 15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億16百万円、第2四半期(9月~11月)11億98百万円、第3四半期(12月~2月)12億26百万円、第4四半期(3月~5月)13億76百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円、第3四半期52百万円、第4四半期75百万円だった。

 15年5月期はソリューション事業の売上が大幅に伸長したが、原価率の上昇や販管費の増加などで営業損益がやや低調だった。15年5月期のROEは14年5月期比7.1ポイント低下して3.8%、自己資本比率は同5.9ポイント上昇して81.6%、配当性向は64.8%だった。

■16年5月期は営業損益改善基調

 今期(16年5月期)第1四半期(6月~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.2%増の13億19百万円、営業利益が同9.1%増の57百万円、経常利益が同5.6%増の60百万円、純利益が同88.7%減の24百万円だった。

 純利益は前年同期に計上した特別利益が一巡して減益だったが、ソリューション事業の大幅伸長が牽引して増収、営業増益、経常増益だった。売上高は第1四半期として過去最高を更新した。なおソリューション事業の大幅伸長に伴って原価率(55.2%)は同3.0ポイント上昇したが、広告宣伝費の減少などで販管費比率(40.4%)は同3.4ポイント低下した。

 セグメント別に見ると、コンテンツサービス事業は売上高が同7.1%減の6億01百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同25.1%増の1億81百万円だった。売上面ではエンターテインメント(ゲーム)関連が同8.1%増収と好調だったが、交通情報関連が同11.9%減収、ライフスタイル関連が同34.5%減収と低調だった。

 ソリューション事業は売上高が同7.4%増の7億18百万円、営業利益が同64.5%減の22百万円だった。売上面では広告関連が同46.5%減収と低調だったが、ソリューション(受託開発)関連が同84.7%増収、海外関連が同2.1倍増収と大幅伸長した。

 通期の連結業績予想は前回予想(7月10日公表)を据え置いて、売上高が前期比19.2%増の61億円、営業利益が同2.4倍の4億50百万円、経常利益が同2.3倍の4億70百万円、純利益が同7.0%増の1億90百万円としている。配当予想は前期と同額の年間3円(期末一括)で予想配当性向は64.0%となる。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が21.6%、営業利益が12.7%、経常利益が12.8%、純利益が12.6%である。やや低水準だが、コンテンツサービス事業では交通情報やゲームなど、ソリューション事業では「店頭アフィリエイト」や法人向けソリューションの好調を見込んでいる。15年5月期はコンテンツサービス事業における広告宣伝費の増加、ソリューション事業における原価率上昇などで減益だったが、16年5月期は増収効果で営業損益改善基調が期待される。

■株価は下値を切り上げて戻り歩調

 株価の動きを見ると、8月の年初来安値223円から切り返して戻り歩調の展開だ。10月1日には318円まで急伸する場面があった。その後は270円~280円で推移して徐々に下値を切り上げている。

 10月28日の終値269円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS4円69銭で算出)は57倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS126円65銭で算出)は2.1倍近辺である。なお時価総額は約109億円である。

 日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。16年5月期の営業損益改善基調を評価して出直り展開だろう。

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