【アナリスト水田雅展の銘柄診断】朝日ラバーは調整一巡して切り返し局面、15年3月期再増額の可能性も評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 車載照明用ゴム製品の朝日ラバー<5162>(JQS)の株価は、11月4日の戻り高値3400円から反落して12月17日の1575円まで調整した。マイクロ流体デバイスで人気化した8月下旬以降は乱高下する展開だが、10月17日の直近安値1401円を割り込むことなく調整一巡感を強めている。今期(15年3月期)業績見通し再増額の可能性も評価して切り返し展開だろう。

 自動車内装照明関連などの工業用ゴム製品、スポーツ用ゴム製品(卓球ラケット用ラバー)、医療・衛生用ゴム製品(点滴輸液バッグ用ゴム栓など)、機能製品のRFIDタグ用ゴム製品などを展開し、自動車関連の車載用小型電球の光源カラーキャップ「ASA COLOR LAMPCAP」や車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」を主力製品としている。

 シリコーンゴムや分子接着技術をベースにした製品開発力が強みである。車載用「ASA COLOR LED」は従来の高級車向けに加えて、小型車や軽自動車向けにも採用が拡大している。

 新製品では分子接着技術を活用した機能製品RFIDタグ用ゴムの増産を進め、医療分野の新製品プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)用ガスケットの量産を開始した。NEC<6701>のポータブルDNA解析装置向けマイクロ流体デバイスについては14年10月に量産開始した。分子接着技術を活用した製品でNEC向け以外の複数案件も商談が進行中のようだ。

 今期(15年3月期)の連結業績見通しについては11月10日に増額修正して、売上高が前期比6.6%増の60億50百万円、営業利益が同4.8%増の3億円、経常利益が同1.3%増の3億円、純利益が同11.8増の1億80百万円としている。減益見通しから一転して増益見通しとなった。配当予想は前回予想(5月13日公表)を据え置いて前期と同額の年間8円(第2四半期末3円、期末5円)としている。

 車載用「ASA COLOR LED」などの自動車関連、および機能製品のRFIDタグ用ゴム製品の受注が海外向けを中心に増加し、売上高が期初計画を上回るようだ。また利益面では増収効果で減価償却費の増加などを吸収して増益見通しとなった。修正後のセグメント別売上高の計画は、工業用ゴム事業が同8.8%増の49億13百万円、医療・衛生用ゴム事業が同2.2%減の11億37百万円としている。

 第2四半期累計(4月~9月)は前年同期比9.8%増収、同31.6%営業増益、同37.9%経常増益、同35.0%最終増益だった。工業用ゴム事業が同10.6%増収、医療・衛生用ゴム事業が同6.9%増収と好調に推移して売上高、利益とも計画を上回った。医療・衛生用ゴム事業の一部製品の品質管理に係るコスト増加は第1四半期(4月~6月)で一巡した。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が50.0%、営業利益が52.0%、経常利益が55.3%、純利益が57.8%である。会社見通しでは第3四半期(10月~12月)以降に自動車関連が在庫調整の影響で減速としているが、原価低減効果なども寄与して通期見通しには再増額の可能性があるだろう。

 14年5月発表の第11次3ヵ年中期経営計画(V-1計画)では、20年3月期を見据えた長期ビジョンを「AR-2020VISION」として、前半3ヵ年(15年3月期~17年3月期)を第1ステージ「V-1計画」、後半3ヵ年(18年3月期~20年3月期)を第2ステージ「V-2計画」としている。

 そして中期経営方針は、既存事業の質・量の継続的成長(国内事業は質的成長、海外事業は量的成長)、新市場・新分野への事業展開、20年に向けた事業基盤の強化・整備として、第1ステージ「V-1計画」の目標数値には17年3月期売上高80億円(自動車分野37億円、医療分野13億円、ライフサイエンス分野16億50百万円、その他13億50百万円)、営業利益8億円を掲げ、設備投資計画は3期間累計で24億50百万円としている。成長分野への積極投資で中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、11月4日の戻り高値3400円から反落して12月17日の1575円まで調整した。マイクロ流体デバイスで人気化した8月下旬以降は乱高下する展開だが、10月17日の直近安値1401円を割り込むことなく調整一巡感を強めている。

 12月19日の終値1753円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS39円58銭で算出)は44倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は0.5%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS705円77銭で算出)は2.5倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が20%を超えて売られ過ぎ感を強めている。また週足チャートで見ると26週移動平均線近辺で下ヒゲを付けた。サポートラインを確認した形だろう。今期業績見通し再増額の可能性も評価して切り返し展開だろう。

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