【アナリスト水田雅展の銘柄診断】テクマトリックスは下値は限定的、調整が一巡して出直り展開

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 情報サービス事業を展開するテクマトリックス<3762>(東1)の株価は、10月16日の直近安値590円から10月24日の705円まで一旦は急反発したが、その後は上値が重く概ね600円~650円近辺のレンジでモミ合う展開だ。ただし10月安値圏まで下押す動きは見られず、下値は限定的のようだ。調整が一巡して出直り展開だろう。

 ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスなどを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。

 重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実、ビッグデータ分析支援サービス、大規模EC事業者向けバックオフィスシステム構築ソリューション「楽楽ECインテグレーションサービス」などを強化している。

 グループ経営強化や中期成長に向けたM&A・アライアンス戦略も推進している。14年2月には連結子会社の沖縄クロス・ヘッドが台湾のデータセンター事業者eASPNetと事業協力についての覚書を締結、3月には連結子会社のクロス・ヘッドを完全子会社化、日本コンピュウェアと販売パートナー契約を締結、ラムダ・テクノロジーズとマレーシアにおける販売代理店契約を締結した。

 さらに7月には日本事務器(NJC)と医療情報クラウドサービス「NOBORI」に関する販売代理店契約を締結、8月には沖縄クロス・ヘッドが日本ヒューレットパッカード(日本HP)と業務提携、9月には米VERCODE社と販売代理店契約を締結、10月には子会社クロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、10月にはソフトバンクテレコムおよび電算と3社共同でクラウド型医療情報サービス「地域健康・医療情報プラットフォームサービス(HeLIP)」の提供を開始した。

 なお医療分野では、オンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へ、ビジネスモデルの変更を推進しているため、前期(14年3月期)から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが、他事業の成長でカバーする方針としている。

 今期(15年3月期)の連結業績見通しは前回予想(5月9日公表)を据え置いて、売上高が前期比5.5%増の183億円、営業利益が同3.7%増の11億60百万円、経常利益が同0.4%減の11億60百万円、純利益が同11.7%減の7億円、配当予想が前期と同額の年間15円(期末一括)としている。

 ストック型ビジネスの戦略的拡大に向けて人件費が増加し、純利益については前期の繰延税金資産追加計上の一巡も影響するが、情報基盤事業の好調が牽引して増収、営業増益見通しだ。セグメント別売上高の計画は、情報基盤事業が同9.0%増の122億円、アプリケーション・サービス事業が同0.9%減の61億円としている。情報基盤事業ではサイバー攻撃に対応した次世代ファイアウォール製品、アプリケーション・サービス事業では医療分野のクラウドサービスなどが好調に推移する。

 第2四半期累計(4月~9月)は前年同期比3.4%増収、同18.7%営業減益、同23.1%経常減益、同47.1%最終減益だった。医療分野のビジネスモデル変更の影響、ストック型ビジネスの戦略的拡大に向けた人件費の増加、繰延税金資産追加計上の一巡などで減益だったが、情報基盤事業の次世代ファイアウォール製品の好調、アプリケーション・サービス事業のクラウド契約件数の増加などが牽引して、第2四半期累計として過去最高の売上高となり、売上高、利益とも期初計画を上回った。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は低水準だが、四半期別営業利益を見ると、第1四半期(4月~6月)の63百万円に対して第2四半期(7月~9月)は2億86百万円と大幅に改善している。情報基盤事業の官公庁セキュリティ大型案件、医療クラウドサービスの大学病院向け大型案件なども寄与して通期ベースで好業績が期待される。

 株価の動きを見ると、10月16日の直近安値590円から10月24日の705円まで一旦は急反発したが、その後は上値が重く概ね600円~650円近辺のレンジでモミ合う展開だ。ただし10月安値圏まで下押す動きは見られず調整一巡感を強めている。

 12月19日の終値622円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS58円00銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は2.4%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS513円07銭で算出)は1.2倍近辺である。週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、下値は限定的であり、600円近辺が下値支持線のようだ。調整が一巡して出直り展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る