【アナリスト水田雅展の銘柄診断】チムニーは戻り高値圏で堅調、12月末の株主優待も注目、今期業績に対する期待感で4月高値目指す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 大手居酒屋チェーンのチムニー<3178>(東1)の株価は、12月1日に戻り高値2390円まで上値を伸ばし、その後も戻り高値圏2300円台で堅調に推移している。今期(14年12月期)好業績見通しを評価し、12月期末の株主優待も注目されているようだ。来期(15年12月期)業績に対する期待感も強く、4月高値2675円を目指す展開だろう。

 売上高が業界5位規模の大手居酒屋チェーンで、直営とFCの飲食事業の他に、受託食堂のコントラクト事業も展開している。漁業などの一次産業、食材加工などの二次産業、店舗で商品を提供する三次産業まで一括管理する「飲食業の六次産業化」に向けた取り組みを強化している。仕入面では子会社の魚鮮水産が愛媛県で漁業権を保有し、13年には新たに2つの買参権を取得している。

 飲食事業は居酒屋業態を直営とFCで展開し、主力の「はなの舞」「さかなや道場」に加えて、軍鶏(しゃも)をメインとする「龍馬軍鶏農場」や、新鮮な肉と魚の両方を浜焼きスタイルで楽しむ「豊丸水産」の新規出店や業態転換も積極推進している。13年7月には新業態を推進する子会社「めっちゃ魚が好き」を設立した。また今後の新規出店は、競合店が少なく高ROI(投資収益率)が見込める山陰・山陽道エリア、四国エリア、東北エリアへの出店を強化する方針だ。

 コントラクト事業は、居酒屋事業で培った店舗運営ノウハウを活用して、官公庁の施設内を中心に受託食堂を展開している。メニュー見直しや人員配置再構築で収益力強化を目指し、14年4月には船橋中央病院(千葉県船橋市)の食堂事業を受託した。さらに16年度の新規受託の準備を進めている。

 今期(14年12月期)の連結業績見通しは前回予想(2月7日公表)を据え置いて、売上高が464億24百万円、営業利益が32億60百万円、経常利益が33億07百万円、純利益が15億87百万円としている。連結初年度のため前期非連結ベースとの比較で見ると5.4%増収、5.2%営業増益、3.1%経常増益、10.9%最終増益となる。配当予想については前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。

 既存店売上高は前期比98.0%、グループ全体の売上高は同3.4%増の700億円、新規出店は直営30店舗、FC5店舗、閉店は直営12店舗、FC12店舗の計画としている。新規出店、業態転換による既存店活性化、仕入価格見直しやメニュー改定による原価安定化、業務効率化や経費コントロール徹底などの効果で増収増益見込みだ。

 第3四半期累計(1月~9月)は売上高が341億20百万円、営業利益が23億76百万円、経常利益が24億15百万円、純利益が12億32百万円となり、前年同期の非連結ベースとの比較で見ると5.7%増収、8.4%営業増益、8.9%経常増益、27.7%最終増益だった。

 新規出店、商品ロス低減、調理技術力向上、買参権活用による仕入効率化、メニューミックスによる原価低減などの効果で増収増益だった。売上総利益率は0.3ポイント上昇した。純利益については減損損失の減少も寄与した。

 月次売上動向(直営店全業態、前年比)を見ると、14年11月は既存店が98.3%、全店が99.1%だった。既存店売上高は3ヶ月ぶりに前年を割り込んだが、客単価の上昇は続いている。なお1月~11月累計では既存店が99.2%、全店が100.2%だった。

 11月の出店状況は、新規出店が直営5店舗、退店がFC2店舗、直営からFCへの転換が1店舗、FCから直営への転換が1店舗で、14年10月末の店舗数は直営408店舗(うちコントラクト100店舗)およびFC302店舗の合計710店舗となった。なお子会社の紅フーズコーポレーションの「新橋やきとん」は11月の退店1店舗で合計15店舗、めっちゃ魚が好きの「豊丸」「鶴金」は11月の出退店がなく合計12店舗である。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が73.5%、営業利益が72.9%、経常利益が73.0%、純利益が77.6%と順調な水準である。既存店売上高が想定を上回る水準で推移しており、第4四半期(10月~12月)が需要期となることも考慮すれば、通期見通しには増額の可能性があるだろう。親会社のやまや<9994>および第2位株主のアサヒビールとの連携強化の効果も期待され、中期的に収益拡大基調だろう。

 なお株主優待制度については、毎年6月末および12月末時点の株主を対象として実施している。100株~499株所有株主に対しては「お食事ご優待券500円券×10枚」または当社オリジナル商品、500株以上所有株主に対しては「お食事ご優待券500円券×30枚」または当社オリジナル商品を贈呈(詳細は会社ホームページを参照)している。

 株価の動きを見ると、10月の直近安値圏2100円近辺から切り返しの展開となり、12月1日には戻り高値2390円まで上値を伸ばした。その後も戻り高値圏2300円台で堅調に推移している。好業績見通しを評価し、12月期末の株主優待も注目されているようだ。

 12月19日の終値2350円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS84円38銭で算出)は27~28倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は0.9%近辺、実績PBR(前期実績の非連結ベースのBPS601円58銭で算出)は3.9倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって水準を切り上げている。強基調の形であり、来期(15年12月期)業績に対する期待感も強く、4月高値2675円を目指す展開だろう。12月末の株主優待制度の権利取りも注目される。

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