【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エストラストは下値固め完了、アベノミクス「地方創生戦略」も追い風

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

エストラスト<3280>(東1)は山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。16年2月期の分譲マンション引き渡し計画に対して第2四半期末時点の契約進捗率は96.2%に達している。株価は安値圏でモミ合う展開だが、アベノミクス「地方創生戦略」も追い風として中期成長シナリオに変化はなく、指標面の割安感も強い。下値固めが完了して反発展開だろう。

■山口県・福岡県を地盤とする不動産デベロッパー

山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。一次取得ファミリー型の新築分譲マンション「オーヴィジョン」シリーズ、およびハイクオリティ・ミドルプライスの新築戸建住宅「オーヴィジョンホーム」の不動産分譲事業を主力に、不動産賃貸事業、そして「オーヴィジョン」マンション管理受託の不動産管理事業(連結子会社トラストコミュニティ)も展開している。

15年2月期末時点で分譲マンション供給数は累計68棟・3389戸となった。そして14年のマンション販売実績は九州・山口エリアで5位、山口県では1位(13年に続いて2年連続)である。

重点エリアとしている福岡県での事業展開加速に向けて、13年6月に第三者割当増資によって、ふくおかフィナンシャルグループ<8354>傘下の福岡銀行との関係を強化している。また14年3月には山口県内最大のオフィス街に立地する下関第一生命ビルディング(山口県下関市)を取得して、不動産賃貸事業の収益基盤を強化した。

■引き渡し物件によって四半期収益は変動

15年2月期の四半期推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)3億60百万円、第2四半期(6月~8月)48億84百万円、第3四半期(9月~11月)49億65百万円、第4四半期(12月~2月)17億32百万円で、営業利益は第1四半期2億12百万円の赤字、第2四半期6億50百万円、第3四半期7億32百万円、第4四半期8百万円だった。

引き渡し物件によって四半期収益が変動する構造だ。また15年2月期のROEは14年2月期比8.7ポイント低下して21.3%、自己資本比率は同6.3ポイント上昇して28.5%、配当性向は9.6%だった。

なお15年1月に「オーヴィジョン下関海峡テラス」「オーヴィジョン広島パークサイド」「オーヴィジョン飯塚本町」の各プロジェクト、15年4月に「オーヴィジョン新下関駅南」プロジェクト、15年5月に「オーヴィジョン新山口駅ネクシア」「オーヴィジョン青山グランテラス」の各プロジェクト、15年6月に「オーヴィジョン舞鶴」プロジェクト、15年8月に「オーヴィジョン防府駅天神口」プロジェクト、そして15年11月には「オーヴィジョン西小倉」プロジェクトが始動した。

■16年2月期営業微減益の会社予想だが、契約進捗率は高水準

今期(16年2月期)第2四半期累計(3月~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比18.5%増の62億11百万円で、営業利益が同33.3%増の5億84百万円、経常利益が同81.9%増の4億93百万円、純利益が同85.3%増の3億07百万円だった。

不動産事業における引き渡し戸数は分譲マンション3物件166戸(前年同期比18戸減少)、分譲戸建20戸(同4戸増加)、合計186戸(同18戸減少)だったが、分譲マンション開発目的で取得した不動産の売却が寄与して大幅増収だった。

セグメント別の売上高は、不動産分譲事業が同19.2%増の59億68百万円、不動産管理事業が同1.7%増の1億40百万円、不動産賃貸事業が同8.1%増の98百万円、その他(不動産仲介など)が同32.0%減の3百万円だった。不動産管理事業のマンション管理戸数は2139戸(同240戸増加)で順調に増加している。

利益面では、増収効果などで売上総利益率(20.8%)が同0.3ポイント上昇、販管費比率(11.4%)が同0.8ポイント低下した。さらに前年同期の営業外費用に計上した固定資産除売却損や、東証1部への市場変更費用が一巡したことも寄与して大幅増益だった。

なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)17億01百万円、第2四半期(6月~8月)45億10百万円、営業利益は第1四半期2億32百万円、第2四半期3億52百万円だった。

今期(16年2月期)の連結業績予想(4月9日公表)は、売上高が前期比9.7%増の131億円、営業利益が同3.3%減の11億40百万円、経常利益が同1.7%増の9億70百万円、純利益が同2.4%増の6億円としている。

配当予想は年間8円(第2四半期末4円、期末4円)としている。予想配当性向は8.2%となる。前期比2円減配の形だが、前期の年間10円には第2四半期末の市場変更記念配当2円を含んでいるため、普通配当ベースでは前期と同額である。

通期ベースでの不動産販売事業における引き渡し予定戸数は、分譲マンションが同59戸減少の370戸、分譲戸建が同29戸増加の65戸としている。そして分譲マンション引き渡し予定戸数370戸に対して、第2四半期末時点で356戸が契約済みで契約進捗率は96.2%に達している。

売上高の計画はマンション分譲が同3.4%増の108億78百万円、戸建が同84.6%増の17億20百万円である。なお9月には分譲戸建「オーヴィジョンガーデンフォーラス王司2」(下関市)全10邸が完売した。

通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.4%、営業利益が51.2%、経常利益が50.8%、純利益が51.1%である。引き渡し物件によって四半期収益が変動する構造のため進捗率は参考程度だが、第2四半期累計の分譲マンション引き渡し戸数166戸は、通期引き渡し予定戸数370戸に対して進捗率が44.9%であることを考慮すれば、概ね順調な水準と言えるだろう。

16年2月期は分譲マンション引き渡し戸数の減少、分譲マンション建設費の上昇、プロジェクト先行費用などを考慮して、会社予想は増収ながら営業利益は微減益としている。ただし分譲マンションの契約進捗率は高水準である。契約済みの分譲マンションおよび戸建住宅の引き渡しが順調に進み、不動産管理事業の管理戸数増加や不動産賃貸事業のポートフォリオ充実も寄与する。会社予想は保守的な印象も強く増額余地があるだろう。

■九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指す

中期経営計画では九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指し、福岡県および九州主要都市への進出加速、九州・山口エリアでのマンション年間供給500戸体制構築、山口県での戸建住宅年間供給100戸体制の構築、ストック型ビジネスとなる不動産管理事業でのマンション管理戸数拡大、不動産賃貸事業での収益物件長期保有による収益基盤強化などを推進している。

目標値としては16年2月期の新築分譲マンション引き渡し戸数494戸、売上高130億円、営業利益12億50百万円、経常利益12億円、純利益7億20百万円を掲げている。

16年2月期業績の会社予想では、分譲マンション引き渡し戸数および利益が計画未達成の形となるが、約3年分の供給物件(事業用地取得済プロジェクト17棟、計画戸数1186戸、総売上高305億円、および分譲開始プロジェクト6棟、分譲中プロジェクト488戸、分譲中売上高124億円)を確保済みである。中期成長シナリオに変化はないだろう。

事業展開の重点エリアとしている福岡市では、国家戦略特区に指定されたことも背景として、一段と人口増加傾向を強めることが予想される。日銀の金融緩和やアベノミクス重点戦略「地方創生」も追い風だ。成長市場への事業展開を加速して中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は下値固め完了感、指標面の割安感も見直し

株価の動き(10月21日付で貸借銘柄)を見ると、9月安値495円からの反発力がやや鈍く、概ね安値圏500円~550円近辺でモミ合う展開だ。ただし9月安値を割り込む動きは見られず、下値固め完了感を強めている。

11月17日の終値523円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円29銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS551円06銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約32億円である。

週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、500円近辺が下値支持線のようだ。アベノミクス「地方創生戦略」も追い風として中期成長シナリオに変化はなく、指標面の割安感も強い。下値固めが完了して反発展開だろう。

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