【小倉正男の経済羅針盤】「一億総活躍」は本当に本気といえるのか

小倉正男の経済羅針盤

■「一億総活躍」というが衆知は集まっているのか

「一億総活躍」というのだが、挑戦といえば挑戦だが、簡単ではない。子育て、それに介護といったネックも横たわる。

老人の企業への就業などをみても、ネックは少なくない。まずは電車、駅の階段が長すぎる。とくにJR駅の階段が昔につくられているためか、急勾配だ。

電車のなかでも、いまは若い人も疲れているのか、モラルなどが低いのか、席を奪い合っている。他人に席を譲るような余裕はみられない。

「一億総活躍」というのなら、そうしたところから手直しをすべきである。

安倍晋三総理は、「一億総活躍」で、衆知を集めるとしている。だが、現状をみれば、なんらココロに響く具体策が出てきていないのではないか。衆知はまったくないということなのだろうか・・・。

■企業の健康保険に入れば年金カットの仕打ち

例えば、老人が就職して企業の健康保険に入ると、即刻のところ年金が打ち切られる。それどころか、年金を積み立てることが強制される。

「恵まれているのだから、それぐらい我慢しろ」、と――。

これでは、いってこいで、働いても楽にはならない。「一億総活躍」というのだが、そんなところにも、本気で取り組んでいるという気配が滲んでいない。

「一億総活躍」といっても、プランや案もそうだが、そのインフラでも、にわか造りが隠せない。本気で取り組むというのなら、まだ遅くはないのだから、なるほどそうなのか、という「一億総活躍」の具体策やインフラ改革を打ち出すべきである。

そうしたことには、国民というか庶民は敏感なものだ。政府が本気か本気ではないかは、すぐに峻別される。政府への支持や不支持は、案外そうしたことで形成される。

■「一億総活躍」のインフラ=打ち出した政策は本気で実行せよ

「一億総活躍」をとやかく批判しているわけではない。むしろ、やるならそれこそ本気を出してやってほしい、と言っているのである。多くの人が活躍できれば、それはよいことであるのは間違いない。

若い人や働き盛りの人を含めてだが、法定労働時間(週40時間労働)の短縮など「時短」をやったらよいのではないか。

子育て、あるいは介護でも「時短」は最大のインフラになるファクターといえる。

そうしたインフラ整備をして、はじめて「一億総活躍」が本気の政策になる。政策を本気で行うなら、ネックである「外堀」や「内堀」は埋めるしかない。

ネックを取り払えば、本気でやっていることが国民に伝わる。政策への信頼や支持は、本気かどうかで決まるものだ。

本気なら衆知は集まる。本気でなければ衆知は去る。世の中とはそうしたものである。

(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社で編集局記者・編集者、金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■全従業員にAI活用徹底、業務改革を本格化  LINEヤフー<4689>(東証プライム)は7月14…
  2. ■50年以上親しまれたかぜ薬が国内市場から姿を消す?  大正製薬は7月14日、塗るかぜ薬「ヴイック…
  3. ■鈴鹿8耐で新型CBコンセプト登場  ホンダ<7267>(東証プライム)は7月11日、大型ロードス…
2025年9月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■01銘柄:往年の主力株が再評価、低PER・PBRで買い候補に  今週の当コラムでは、買い遅れカバ…
  2. ■日米同時最高値への買い遅れは「TOPIXコア30」と「01銘柄」の出遅れ株でカバー  日米同時最…
  3. ■東京株、NYダウ反落と首相辞任で先行き不透明  東京株式市場は米国雇用統計の弱含みでNYダウが反…
  4. ■株式分割銘柄:62社に拡大、投資単位引き下げで流動性向上  選り取り見取りで目移りがしそうだ。今…
  5. ■金先物相場を背景に産金株が収益拡大の余地を示す  東京市場では金価格の上昇を背景に産金株が年初来…
  6. ■大統領の交渉術が金融市場を左右し投資家心理に波及  米国のトランプ大統領は、ギリシャ神話に登場す…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る