【アナリスト水田雅展の銘柄分析】川崎近海汽船はモミ合い上放れて08年8月以来の400円台乗せ、原油価格下落が追い風

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 川崎近海汽船<9179>(東2)の株価は、330円~340円近辺のモミ合いから上放れて急伸し、12月22日に407円まで上伸して08年8月以来の400円台に乗せた。原油価格下落も好感して今期(15年3月期)好業績見通しを評価する流れだ。指標面には依然として割安感が強く上値追いの展開だろう。洋上風力発電や海洋資源関連などのテーマ性にも注目したい。

 石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門と、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門、その他事業(北海道地区における不動産賃貸事業など)を展開している。

 14年4月に発表した中期経営計画では、目標値として17年3月期売上高490億円(近海部門180億円、内航部門310億円)、営業利益37億50百万円(近海部門4億円の赤字、内航部門41億50百万円の利益)、経常利益37億円、純利益24億円、新造船建造等に対する3年間総額の投資額135億円を掲げている。近海部門では船隊大型化、バルク輸送の船隊整備、内航部門では不定期船輸送の船隊整備などを推進する方針だ。

 中期成長に向けた新規分野として、13年10月オフショア・オペレーションと均等出資で合弁会社オフショア・ジャパンを設立し、日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務に進出した。さらにLNG(液化天然ガス)輸送分野への参入も検討している。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(10月31日に売上高を減額)については、売上高が前期比3.2%増の471億円、営業利益が同5.2%増の21億円、経常利益が同0.4%増の20億円、純利益が同2.4倍の13億円としている。配当予想は前回予想(4月30日公表)を据え置いて同1円増配の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。

 第2四半期累計(4月~9月)は前年同期比3.7%増収、同36.3%営業減益、同35.5%経常減益、同39.2%最終減益だった。近海部門は石炭輸送の高稼働や円安進行が寄与して同8.5%増収、内航部門は不定期船輸送、定期船輸送とも堅調に推移して同1.2%増収だったが、近海部門の市況低迷の長期化や、所有船のドック入りに伴う修繕費の増加で減益だった。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.9%、営業利益が38.2%、経常利益が40.2%、純利益が39.3%である。利益進捗率がやや低水準だが、四半期別の営業利益を見ると、所有船のドック入りが集中した第1四半期(4月~6月)が56百万円の赤字だったのに対して、第2四半期(7月~9月)は8億59百万円に大幅改善している。

 売上面では通期ベースでも近海部門で石炭・セメントなどのバルク輸送、内航部門で石灰石・石炭などの専用船輸送が堅調に推移する見通しだ。コスト面では船舶量適正化や運航コスト削減の効果に加えて、8月に就航した最新型省エネ船の新造RORO船「北王丸」も寄与する。さらに原油価格の下落も追い風となる。

 所有船のドック入りが集中して修繕費が増加した影響は一時的で、通期ベースでは営業増益が期待される。純利益については前期計上した船舶売却損失や保有船舶減損損失といった特別損失の一巡も寄与する。なお想定為替レートは1米ドル=105円(前期実績は1米ドル=99円52銭)としている。

 株価の動きを見ると、330円~340円近辺でのモミ合いから上放れて急伸し、11月28日に375円を付けて6月高値363円を突破した。さらに12月22日に407円まで上伸して08年8月以来の400円台に乗せた。原油価格下落も好感して今期好業績見通しを評価する流れだろう。

 12月22日の終値406円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円28銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.5%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS759円73銭で算出)は0.5倍近辺である。

 日足チャートで見ると目先的にはやや過熱感もあるが、週足チャートで見ると6月高値363円を突破して13週移動平均線がサポートラインの強基調となった。低PER、低PBR、高配当利回りで依然として割安感が強く、上値追いの展開だろう。

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