【小倉正男の経済羅針盤】新年はコーポレート・ガバナンス元年

独立社外役員は一般株主と利益相反のおそれがない

 コーポレート・ガバナンス――日本企業が大きく遅れているのは間違いない。チェック&バランスということが、コーポレート・ガバナンスの要諦である。だが、これがなかなかできていない。

 最近、発表された長谷工コーポレーションの「コーポレート・ガバナンス報告書」を見ると、3年程度の移行期間を経て独立社外役員を3分の1以上にするとしている。

 「独立」とは、会社の経営を的確に監督し、「一般株主と利益相反のおそれがない」といった要件を備えていると規定されている。

 経営が、一般株主と利益相反のおそれを持った時には、一般株主のサイドに立つ「独立」性を担保する――。

 長谷工の動きは、かなり進んだものといえるのだろうが、経営に一般株主のチェック&バランスが導入される。これは以前とは、相当に違ったことであり、「画期的」といえる。

 外人にしても、一般株主にしても、コーポレート・ガバナンスがない会社の株式は保有しない。おそらく、そうした線引きになっていくと見られる。

日本の会社は、それぞれの「会社一神教」のようなもの

 日本の会社というものは、それぞれ独自の「文化めいたもの」を持っている。それぞれの会社が「宗教」みたいなものであり、会社というものが「一神教」になっている面がある。

 M&Aをしても、あるいは企業合併などでも、それぞれの「会社一神教」は存続するケースが一般的である。

 役員といえば、社員から上がってきた人間ばかりであり、一般株主と利益相反は当たり前だった。

 社外の人間など違う「文化」であり、「邪教」の徒ということになる。一般株主など範疇の外だった。

 そうした「会社一神教」に風穴が開けられるか。独立社外役員も力量が問われることになる。

 「会社一神教」に対抗できる独立社外役員はそういないのではないか、という懸念がないではない。「会社一神教」は柔なものではないからだ。

新年はコーポレート・ガバナンス元年になる

 日本の企業を見ていると、コンプライアンス面でスレスレなどといった経営者も稀にいないではない。コーポレート・ガバナンスなど眼中になく、自分が任命してアゴで動かしている人間を「独立社外役員」と称している経営者もいる。誰とは言わないが、そうした企業経営も時に見てきている。

 個人筆頭の大株主で、社長を兼任している「オーナー経営」のケースで、コーポレート・ガバナンスはどう担保されているのか、を質問したことがある。
「当社は監査役が3人いるから、コーポレート・ガバナンスがある」――。そんな答えを即座に聞いたものだ。

 人数が3人いるという「量的」なものだけで、コーポレート・ガバナンスと称しているわけである。こうした会社ほど、「一般株主と利益相反するおそれ」を十分にというか、普段から備えている。コンプライアンスなどに気が付かずに動きかねない。

 新年は、日本企業にとって、コーポレート・ガバナンス元年になると見られる。各企業が、「コーポレート・ガバナンス報告書」を続々と発表する。発表した以上、コミットが義務付けられることになる。

 一般株主による企業経営のチェック&バランスが強まる――。コーポレート・ガバナンスで、企業経営が浄化され、企業の新陳代謝が進むとすれば、それは大枠で日本経済を強化するファクターとなるのではないか。

(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社で編集局記者・編集者、金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。)

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