【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ティー・ワイ・オーは徐々に水準切り上げ、今期好業績見通しを評価して7月戻り高値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 TV-CM制作大手のティー・ワイ・オー<4358>(東1)の株価は、170円~180円近辺でモミ合う展開だったが、11月以降は徐々に水準を切り上げている。12月3日には183円まで上値を伸ばす場面があった。今期(15年7月期)好業績見通しを評価して、7月の戻り高値195円を試す展開だろう。

 広告事業(広告代理店向けのTV-CM企画・制作およびポスト・プロダクション業務、広告主向けWEB広告およびプロモーションメディア広告の企画・制作、クロスメディア広告業務)、映像関連事業(アニメーションおよびミュージックビデオの企画・制作)を展開している。

 12月10日に発表した今期(15年7月期)第1四半期(8月~10月)の連結業績は、売上高が前年同期比8.6%減の52億99百万円、営業利益が同20.4%増の3億38百万円、経常利益が同45.6%増の3億54百万円、純利益が同62.3%増の2億07百万円だった。

 検収時期の関係で減収だったが、高利益率案件の受注増加、厳格な売上原価管理の効果で売上総利益率が同1.9ポイント上昇し、販管費での上場市場変更関連費用の一巡なども寄与して大幅増益だった。受注は電気・情報通信、衣料、自動車、飲料関連を中心に引き続き好調で、受注残高は同20.3%増の79億65百万円となった。

 通期の連結業績見通しは前回予想(9月11日公表)を据え置いて売上高が前期比7.3%増の285億円、営業利益が同8.0%増の18億50百万円、経常利益が同12.6%増の17億円、純利益が同50.9%増の9億円としている。配当予想は年間4円(期末一括)で前期比2円減配の形だが、前期の年間6円には上場市場変更記念配当3円を含んでいるため、普通配当ベースでは1円増配となる。

 主力の広告事業は自動車、電気・情報通信、飲料、衣料業界向けを中心に好調が続く見通しだ。大型案件や大口広告主からの直接受注も増加基調だ。映像関連事業では高利益率のライブ映像案件が拡大している。利益面では売上原価管理の徹底、販管費の抑制、営業外での上場市場変更関連費用やシンジケートローン契約締結に伴う手数料の一巡、特別損失での貸倒引当金繰入額の一巡なども寄与する。

 通期見通しに対する第1四半期累計の進捗率は売上高が18.6%、営業利益が18.3%、経常利益が20.8%、純利益が23.0%とやや低水準だったが、受注残高が高水準であり、第2四半期(11月~1月)以降に検収となる案件が多数あるため、特にネガティブ要因とはならないだろう。

 14年8月にアジア戦略部を新設して海外の新規展開を強化している。来期(16年7月期)に予定していた戦略的M&Aを前倒しで実施する可能性もあるようだ。なお9月に連結子会社TYOアニメーションズに対する債権放棄を発表したが、過年度において全額引当済みのため今期業績に与える影響は軽微としている。

 中期経営計画では目標数値として17年7月期売上高400億円、営業利益27億円を掲げ、株主還元として配当性向25%以上目標と株主優待の継続実施の方針を示している。広告市場は拡大基調であり、国内TV-CM制作業界では当社を含む大手制作3社による寡占化傾向を強めている。景気回復や20年東京夏季五輪開催も追い風となるため事業環境は中期的に良好であり、収益拡大基調だろう。

 なお10月に株主優待制度の拡充を発表している。15年7月期については通常株主優待であるクオカード贈呈(毎年1月31日現在500株以上保有株主に対してクオカード1000円相当、2500株以上保有株主に対してクオカード3000円相当、5000株以上保有株主に対してクオカード5000円相当を贈呈)に加えて、当社オリジナル株主優待を継続する。

 そして12月10日に、オリジナル株主優待の内容を発表した。15年1月31日現在500株以上保有株主を対象として、応募者の中から抽選で3名にオリジナルミュージックビデオ「株主様!あなたがアーティスト」を制作して贈呈する。

 株価の動きを見ると概ね170円~180円近辺でモミ合う展開だったが、11月以降は徐々に水準を切り上げている。12月3日には183円まで上値を伸ばす場面があった。今期好業績見通しを評価する動きだろう。

 12月25日の終値177円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS14円87銭で算出)は12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間4円で算出)は2.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS77円18銭で算出)は2.3倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなって徐々に水準を切り上げている。また13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスも接近している。今期好業績見通しを評価して、7月の戻り高値195円を試す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る