【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォマートはストック型ビジネスモデルで16年12月期も増収増益基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インフォマート<2492>(東1)はフード業界向け企業間(BtoB)電子商取引プラットフォームをベースとして各種システムを提供している。ストック型ビジネスモデルで15年12月期、16年12月期とも増収増益基調が予想される。株価は調整が一巡して戻り歩調だ。中期成長シナリオに変化はなく15年7月の高値圏を目指す展開だろう。

■フード業界向け企業間ECプラットフォームが主力

 フード業界向けの企業間(BtoB)電子商取引(EC)プラットフォーム「FOODS info Mart」をベースとして、ASP受発注システム(飲食店チェーンと食材卸売の間の受発注)、ASP規格書システム(食の安全・安心の商品仕様書DB)、ASP商談システム(BtoB専用の販売・購買システム)などをネット経由で提供している。

 14年11月には全ての業界・企業に対応し、企業間の請求書を電子化して請求業務をWeb上で行える「BtoB電子請求書プラットフォーム」(旧名称ASP請求書システム)を開始した。そして15年9月には支払通知書を電子化した「通知書機能」を追加リリースした。

 さらにサービス拡充の一環として、フード業界企業向け総合マーケティングサービス「BtoB F-Marketing」や、フード業界向け情報発信の総合ポータルサイト「フーズチャネル」も開始している。

 なお15年12月期から事業セグメント区分を変更してASP受発注事業(ASP受発注システム)、ASP規格書事業(ASP規格書システム)、ES事業(ASP商談システム、BtoB電子請求書プラットフォーム)、その他(クラウドサービス事業、海外事業)とした。

 子会社はインフォライズがクラウドサービス事業、インフォマートインターナショナル(香港)が海外「FOODS info Mart」事業を展開している。なお15年3月に日立システムズとの合弁事業契約を解消し、インフォライズに対する日立システムズ出資分49%を譲り受けてインフォライズを完全子会社化した。

■利用企業数、取引高、そして月額システム使用料収入は増加基調

 15年9月末時点の「FOODS info Mart」利用企業数(海外事業除く)は、14年12月末比1473社増加の3万8633社(売り手企業が同1493社増加の3万1412社、買い手企業が同20社減少の7221社)となった。15年9月末の利用事業所数は20万5073事業所で、フード業界全体118万6312事業所に対するシェアは17.2%となった。

 そして「FOODS info Mart」年間取引高は14年に13年比1188億円増加の9806億円となり、外食産業における仕入金額ベースのシェアは13年の12.4%から14年の13.6%に上昇した。また15年1月~6月の取引高は5378億円となり、中期目標として掲げた年間システム取引高1兆円は15年に達成が濃厚となっている。

 また15年9月末時点のBtoB電子請求書プラットフォームの利用企業数は14年12月末比450社増加の746社(受取モデル企業が同350社増加の549社、発行モデル企業が同100社増加の197社)となった。

 顧客企業はネット環境さえあれば月々低料金で最新サービスを利用できるため、大手の食材卸売企業や外食・中食チェーンも利用し、電話やFAXからWebに切り替えて受発注する企業・店舗が増加基調だ。そして利用企業数の増加に伴って月額システム使用料収入が増加するストック型収益構造である。

■業界標準化に向けたシステム連携で100万社普及を目指す

 中期成長を加速させる戦略として、業界標準化に向けたシステム連携によるフード業界向けBtoBビジネスの強化、ASP受発注システムの業態およびエリアの拡大、他業界BtoB展開としての美容業界向け「BEAUTY info Mart」や医療業界向け「MEDICAL info Mart」による事業領域拡大、次世代BtoB&クラウドプラットフォームの拡販、顧客ニーズに対応した新機能・サービスのリリース、そして海外事業などを推進している。

 アライアンス戦略では13年5月にJFEシステムズ<4832>、13年6月に東芝テック<6588>、13年11月に東京システムハウス、14年10月にヤマトホールディングス<9064>傘下のヤマトシステム開発とデータ連携した。

 15年1月には全国の商工会議所・商工会等が運営する「ザ・ビジネスモール(B-MALL)」の事務局を務める大阪商工会議所と、全国の企業へ電子請求を推進することを目的として業務提携した。BtoB電子請求書プラットフォームによる企業のコスト削減・効率化で企業の利益アップを応援する。

 15年4月には企業の受発注・請求業務の生産性向上を提供するため、内田洋行<8057>やミロク情報サービス<9928>など19社24ソリューションが提供する販売管理・会計・店舗管理システムとのデータ連携を強化した。利便性の高いビジネスインフラの提供を目指して今後も連携サービスを拡大する。

 さらに企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を提供し、BtoB標準のプラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化している。そして今後3年間で利用企業数100万社への普及を目指すとしている。

■ストック型ビジネスモデル

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)11億57百万円、第2四半期(4月~6月)12億06百万円、第3四半期(7月~9月)12億66百万円、第4四半期(10月~12月)13億48百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期4億17百万円、第3四半期5億46百万円、第4四半期5億57百万円だった。

 利用企業数の増加に伴ってシステム使用料収入が積み上がるストック型ビジネスである。そして売上高、利益とも拡大基調だ。また14年12月期のROEは13年12月期比11.7ポイント上昇して32.3%、自己資本比率は同5.5ポイント上昇して70.8%、配当性向は49.1%だった。

■15年12月期、16年12月期も増収増益基調

 今期(15年12月期)第3四半期累計(1月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比14.2%増の41億46百万円、営業利益が同10.4%増の15億32百万円、経常利益が同10.1%増の15億30百万円、純利益が同12.6%増の9億54百万円だった。

 売上高、利益とも計画をやや下回ったが、システム使用料が順調に増加して増収増益だった。セグメント別売上高は、ASP受発注事業が同14.3%増の24億54百万円、ASP規格書事業が同30.0%増の7億03百万円、ES事業が同5.8%増の9億22百万円、その他が同0.1%増の96百万円だった。

 利益面では、ソフトウェア償却費の増加、今後の利用拡大に向けたサーバ増強に伴うデータセンター費の増加、事業成長に向けた営業部門の人員増に伴う人件費の増加などを増収効果で吸収した。売上総利益率は同3.6ポイント低下して73.2%、販管費比率は同2.3ポイント低下して36.3%となった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)13億10百万円、第2四半期(4月~6月)14億04百万円、第3四半期(7月~9月)14億32百万円、営業利益は第1四半期5億11百万円、第2四半期4億77百万円、第3四半期5億44百万円だった。

 今期(15年12月期)通期の連結業績予想(2月13日公表)は、売上高が前期比19.5%増の59億48百万円、営業利益が同17.4%増の22億83百万円、経常利益が同16.2%増の22億79百万円、そして純利益が同19.3%増の14億04百万円としている。

 各システムの利用拡大に伴ってシステム使用料が順調に増加し、サーバ増強に伴うデータセンター費の増加、新システムリリースに伴うソフトウェア償却費の増加、事業成長に向けた人員増に伴う人件費増加などを吸収して2桁増収増益見通しだ。売上総利益率は同1.8ポイント低下の75.2%、販管費比率は同1.1ポイント低下の36.8%の計画としている。

 セグメント別売上高の計画は、ASP受発注事業が同12.5%増の33億13百万円、ASP規格書事業が同31.8%増の9億77百万円、ES事業が同28.3%増の15億39百万円、その他が同29.3%増の1億19百万円としている。

 配当予想(2月13日公表)については年間11円76銭(第2四半期末5円88銭、期末5円88銭)としている。15年1月1日付の株式2分割を考慮すると実質的に前期比2円07銭増配で予想配当性向は50.6%となる。配当方針は個別業績に応じた基本配当性向50%としている。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が69.7%、営業利益が67.1%、経常利益が67.1%、純利益が68.0%である。やや低水準の形だが、システム使用料収入が積み上がるストック型収益構造であることを考慮すれば概ね順調な水準と言えるだろう。各システムの利用企業数、システム取引高とも順調に増加して、システム使用料収入は増加基調であり、増収増益基調に変化はない。そして来期(16年12月期)も増収増益基調が予想される。

 また今期の重点施策としては、フード業界BtoBのシェア拡大を加速して「FOODS info Mart」利用企業数4万社を目指し、電子請求プラットフォームのデファクト化を推進している。業界標準化の進展、システム連携の強化、サービスの拡充、ホテル・給食業界への利用企業開拓、さらに新規分野への事業展開なども寄与して中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は11月安値から切り返して戻り歩調

 株価の動き(15年10月26日付で東証1部へ市場変更)を見ると、11月5日の直近安値938円から切り返して戻り歩調の展開だ。また12月2日の戻り高値1347円から反落して14日の1161円まで調整したが、素早く1200円台を回復している。自律調整の範囲だろう。

 12月17日の終値1223円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円26銭で算出)は52~53倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間11円76銭で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績に新株式発行を考慮した連結BPS62円12銭で算出)は20倍近辺である。時価総額は約793億円である。

 週足チャートで見ると、26週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、一方では13週移動平均線が下値を支えている。ストック型ビジネスモデルで15年12月期、16年12月期とも増収増益基調が予想される。中期成長シナリオに変化はなく15年7月高値1690円を目指す展開だろう。

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