【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インテージホールディングスは調整の最終局面、16年3月期営業増益・3期連続増配予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インテージホールディングス<4326>(東1)は市場調査の国内最大手で、国内外におけるM&Aを積極活用して業容を拡大している。株価は11月の戻り高値圏から反落したが、9月の年初来安値に接近して調整の最終局面と考えられる。16年3月期営業増益・3期連続増配予想を評価して反発のタイミングだろう。

■市場調査大手の持株会社、システムソリューションなども展開

 13年10月に持株会社へ移行した。SCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など国内首位の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも事業展開している。

 15年8月には、アメリカマーケティング協会「Marketing News」誌に「AMA GOLD GLOBAL TOP50 Report」(グローバルマーケティングリサーチ企業トップ50)が発表され、インテージグループは前年に続いて世界9位にランクインした。

■収益力強化に向けてグループ再編推進

 収益力強化に向けてグループ再編も進めている。14年6月には子会社アスクレップの臨床開発事業を承継したエーケーピーを伊藤忠商事<8001>に譲渡した。アスクレップは医薬情報事業を継続する。15年4月にはコンサルティング事業を強化するため子会社インテージコンサルティングを設立した。

 また15年10月には子会社インテージがビッグデータのクリーニング・分析・価値化を図るIXT(イクスト)を設立した。企業のマーケティング活動にビッグデータを活用する際の課題解決に取り組むとしている。

 12月1日には、創立55周年を機にグループとしてのビジョンや行動指針を示した「THE INTAGE WAY」を、新たに「THE INTAGE GROUP WAY」に改定したと発表している。

 なお16年3月期からセグメント区分を、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業(事業会社インテージ、インテージリサーチ、アクセス・ジェービー、海外子会社)、ヘルスケア分野のマーケティング支援事業(事業会社アンテリオ、アスクレップ、医療情報総合研究所、プラメド)、およびITソリューション分野のビジネスインテリジェンス事業(事業会社インテージテクノスフィア)とした。

■M&A・アライアンスも活用して業容拡大

 国内外における積極的なM&A戦略で業容を拡大している。11年9月ベトナムの市場調査会社FTA、12年9月医療情報総合研究所、12年11月医療関連インターネット調査会社プラメド、13年8月香港の市場調査会社CSG香港を子会社化し、14年5月には子会社INTAGE INDIAがインドの市場調査会社RSMRS社の株式を取得してグループ化した。

 アライアンス戦略では、12年4月NTTドコモ<9437>と合弁会社ドコモ・インサイトマーケティングを設立、13年10月韓国の業界4位の市場調査会社Hankook Researchと包括的事業協力を締結、13年11月インドネシアの市場調査会社DEKA社と合弁会社を設立した。

 14年10月には世界的な情報・調査企業であるニールセンの消費者購買行動分析部門ニールセン・カンパニー合同会社と、小売店パネル調査の相互販売を可能にするパートナーシップを締結した。そして新たな広告効果測定ソリューション開発を目指してインテージ・ニールセン・デジタルメトリクスを設立した。また14年10月には医薬品有害事象情報システムの京都コンステラ・テクノロジーズと資本業務提携した。

 15年7月には、子会社インテージテクノスフィアがクロスコンパス・インテリジェンス(東京都)と、人工知能情報処理技術を活用した企業向け事業に関する資本業務提携契約を締結した。人工知能情報処理技術を当社顧客企業のビジネス課題に適用し、当該技術のシステム実装および運用を行う企業向け事業を展開する方針だ。

 15年10月には、子会社インテージの共創コミュニティプラットフォーム上に、集英社の共創型コミュニティ「Love LEEs Cafe」をオープンすると発表した。これに伴い、生活感度の高い暮らしを楽しむ女性の声を新商品・サービスの開発に活かしたい企業向けに、共創マーケティング支援サービスの販売を開始する。

■期後半の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)91億78百万円、第2四半期(7月~9月)101億60百万円、第3四半期(10月~12月)107億98百万円、第4四半期(1月~3月)137億89百万円、営業利益は第1四半期2億71百万円、第2四半期10億46百万円、第3四半期12億52百万円、第4四半期10億02百万円だった。

 期後半の構成比が高い収益構造だ。15年3月期のROEは14年3月期比3.3ポイント上昇して13.4%、自己資本比率は同8.8ポイント上昇して59.3%となった。配当性向は24.5%だった。

■16年3月期第2四半期累計は営業利益横ばいだが増収基調

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比5.2%増の203億43百万円で、営業利益が同0.1%増の13億19百万円、経常利益が同6.2%増の13億33百万円、そして純利益が同66.2%減の7億04百万円だった。

 消費財・サービス分野における開発費増加などが影響して営業利益は横ばいにとどまったが、ヘルスケア分野では収益性の高い案件の伸びや事業譲渡によるコスト削減が寄与した。売上総利益率は25.4%で同2.9ポイント低下したが、販管費比率は18.9%で同2.6ポイント低下した。営業外費用では持分法投資損失が縮小した。純利益は前年同期に計上した関係会社売却益一巡で大幅減益だった。

 セグメント別に見ると、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業は売上高が同8.5%増の132億82百万円、営業利益が同29.0%減の4億59百万円だった。コミュニケーション分野やインターネット調査などが好調に推移して増収だったが、コミュニケーション分野の開発費増加が影響して減益だった。

 ヘルスケア分野のマーケティング支援事業は売上高が同0.3%減の45億68百万円、営業利益が同64.8%増の7億06百万円だった。売上面ではアスクレップの一部事業譲渡が影響したが、アンテリオのインターネット調査が好調に推移し、EDC(電子的臨床検査情報収集)の受注も堅調だった。利益面では収益性の高い案件の伸びや事業譲渡によるコスト削減が寄与して大幅増益だった。

 ビジネスインテリジェンス事業は売上高が同0.6%減の24億92百万円、営業利益が同36.8%減の1億53百万円だった。前年同期に計上した大型案件の反動で減収減益だった。

 なお四半期別推移をみると、売上高は第1四半期(4月~6月)93億27百万円、第2四半期(7月~9月)110億16百万円、営業利益は第1四半期4億02百万円、第2四半期9億17百万円だった。

■16年3月期営業増益・3期連続増配予想

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期比4.7%増の460億円、営業利益が同6.4%増の38億円、経常利益が同9.4%増の37億70百万円、純利益が同2.6%減の24億円としている。純利益は関係会社売却益が一巡して減益予想だが、市場調査の好調が牽引して増収、営業増益、経常増益予想だ。

 配当予想は同2円50銭増配の年間32円50銭(期末一括)としている。3期連続の増配で予想配当性向は27.0%となる。利益配分については、連結業績をベースに配当と内部留保のバランスを考慮した利益配分を行うことを基本として、連結配当性向の目標は30%を目安としている。

 セグメント別の計画を見ると、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業は売上高が同6.3%増の308億円、営業利益が同3.3%増の19億80百万円、ヘルスケア分野のマーケティング支援事業は売上高が同3.1%増の97億円、営業利益が同17.5%増の13億58百万円、ビジネスインテリジェンス事業は売上高が同1.0%減の55億円、営業利益が同7.5%減の4億62百万円としている。

 パネル調査ではインテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)、i-SSP(インテージシングルソースパネル)、医療情報総合研究所の処方情報分析サービス、カスタムリサーチではアンテリオのヘルスケア関連インターネット調査などが好調に推移する。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が44.2%、営業利益が34.7%、経常利益が35.4%、純利益が29.3%である。低水準の形だが期後半の構成比が高い収益構造であり、現時点ではネガティブ要因とはならない。通期ベースでも好業績が期待される。

■中期計画で17年3月期営業利益46億円目標

 第11次中期経営計画では、重点課題として主力事業再強化による市場価値向上、「モバイル&シングルソース」「グローバル」「ヘルスケア」領域の着実な成長、リサーチの枠にとらわれない新たなビジネスモデルの模索と確立、最適化の視点による戦略立案・推進のマネジメント強化を掲げている。

 そして経営目標値は17年3月期売上高520億円、営業利益46億円としている。M&Aやグループ再編も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整の最終局面

 株価の動きを見ると、11月の戻り高値圏1900円近辺から反落し、安値圏1700円近辺でモミ合う展開だ。ただし9月の年初来安値1654円に接近して調整の最終局面と考えられる。

 12月21日の終値1682円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円25銭で算出)は14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間32円50銭で算出)は1.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS989円01銭で算出)は1.7倍近辺である。時価総額は約338億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、1600円台が下値支持線のようだ。16年3月期営業増益・3期連続増配予想を見直して反発のタイミングだろう。

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