【アナリスト水田雅展の銘柄分析】フォーカスシステムズは調整局面だが売られ過ぎ感、マイナンバーやサイバーセキュリティ関連

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 フォーカスシステムズ<4662>(東2)はシステム構築・保守・運用・機器関連事業を展開している。株価は全般地合い悪化も影響して安値圏で調整局面だが売られ過ぎ感を強めている。マイナンバー関連やサイバーセキュリティ関連としても注目され、反発のタイミングだろう。

■システム構築・保守・運用を主力としてセキュリティ機器関連事業も展開

 公共関連・民間関連のシステム構築・保守・運用・管理サービスを主力として、セキュリティ機器関連事業も展開している。

 顧客別に見るとNTTデータ<9613>関連、および日本IBM関連を主力として、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)<4739>関連、沖電気<6703>関連、ソフトバンク<9984>関連などが続いている。主要顧客上位3社向け売上高の占める割合は14年3月期が47.4%、15年3月期が47.8%だった。

 なお12月1日には、公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)が行っているトップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」を通じて、スケト・ショートトラックの齋藤悠(さいとうゆう)選手の採用を内定したと発表した。アスリートの採用は初めてだが、スポーツに取り組む社員の応援を通じて組織の一体感の醸成、士気高揚を実現したいとしている。

■中期成長に向けて対応領域拡大を推進

 中期成長に向けた重点戦略として、需要が潤沢なインフラビジネス分野における技術者の育成、ノウハウ蓄積にも繋がる運用系業務分野におけるシェア拡大、業務アプリケーション分野における専門技術への取り組み強化による対応領域拡大を推進している。また民間関連事業では関東圏・近畿圏に加えて、東海圏での業務拡大に取り組んでいる。

 15年7月には東京国税局に対するICT関連の技術支援等コンサルティング業務の提供開始を発表した。デジタル・フォレンジック技術と豊富な不正調査の経験を活かしたコンサルティングサービスを提供する。

 15年9月にはベトナムの日系ソフトウェア開発会社であるインディビジュアルシステムズ(IVS)社への出資を決定した。現地当局の許認可等の取得を前提に当社出資比率は10%の予定としている。

 IVS社は02年の創業以来、ベトナムのエンジニア育成と日本向けオフショア開発で実績を伸ばし、現在では日系IT企業としてトップクラスの200名を超えるエンジニアを抱えている。当社は13年からオフショア事業での取引関係を続けてきたが、今回の出資によって協業関係を一段と強化する。

 15年10月には富士ゼロックスのサービス提供会員制ポータルサイト「富士ゼロックスダイレクト」のプラットフォームを、企業内のIT環境を集約して各業務アプリケーションの全社横断的な運用を可能にするシステム共通基盤「intra-mart(イントラマート)」を用いて構築したと発表した。

 また15年10月にはエプソン販売と連携して、同社が販売するスマートヘッドセットMOVERIO Pro「BT-2000」と連動できるBeaconの提供開始を発表した。

 12月1日には、松久産業(福井県福井市)からパケットログ収集・保管装置(監視・警告機能等搭載済み)の「サイバーガーディアン・パケット(略称CGP)」(商標登録出願中)の供給を受け、機器販売および付帯する調査・解析サービス事業を構築すると発表した。収集・保管したログの調査・解析サービスは16年4月開始を予定している。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)35億83百万円、第2四半期(7月~9月)37億03百万円、第3四半期(10月~12月)35億90百万円、第4四半期(1月~3月)42億05百万円、営業利益は第1四半期99百万円、第2四半期1億96百万円、第3四半期2億40百万円、第4四半期4億05百万円だった。

 第4四半期の構成比が高い収益構造だ。そして公共関連事業やセキュリティ機器関連事業の好調で、営業損益は改善基調を鮮明にしている。また15年3月期の配当性向は29.3%だった。ROEは14年3月期比0.8ポイント上昇して10.0%、自己資本比率は同4.7ポイント上昇して47.2%となった。

■16年3月期第2四半期累計は先行投資負担で営業減益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の非連結業績は、売上高が前年同期比2.9%増の74億94百万円で、営業利益が同31.6%減の2億01百万円、経常利益が同26.8%減の1億97百万円、純利益が同70.1%増の2億80百万円だった。

 利益面では、人材採用・育成などの先行投資負担、東証2部への市場変更に関連した費用の計上、基幹システム導入に関連した費用の計上などが影響して営業減益、経常減益だった。売上総利益率は11.4%で同0.9ポイント低下、販管費比率は8.7%で同0.5ポイント上昇した。純利益については投資有価証券売却益2億08百万円の計上が寄与して大幅増益だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)35億42百万円、第2四半期(7月~9月)39億52百万円、営業利益は第1四半期26百万円、第2四半期1億75百万円だった。

■16年3月期通期は増収増益予想

 今期(16年3月期)通期の非連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比1.4%増の153億円、営業利益が同1.0%増の9億50百万円、経常利益が同2.5%増の9億20百万円、純利益が同1.2%増の6億円としている。

 配当予想については15年10月1日付の株式2分割(8月6日公表)に伴って修正し、年間12円50銭(期末一括)とした。株式2分割を考慮すると実質的に前回予想と同額で、予想配当性向は28.8%となる。また前期の年間25円(普通配当10円+特別配当15円)とも実質的に同額となる。

 利益面では人材採用・育成など今後の事業展開を睨んだ先行投資負担で微増益にとどまる見込みとしているが、公共関連事業は社会保険・医療保険関連分野やマイナンバー関連分野、民間関連事業は企業のITインフラ投資関連、セキュリティ機器関連事業は官公庁のサイバー攻撃対策や企業のマイナンバー対応関連を中心として、いずれも需要は高水準に推移する見通しだ。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.0%、営業利益が21.2%、経常利益が21.4%、純利益が46.7%である。営業利益と経常利益の進捗率が低水準だが、第4四半期の構成比が高い収益構造であり、通期ベースではマイナンバー関連やサイバーセキュリティ関連も寄与して好業績が期待される。

■株価は調整局面だが売られ過ぎ感

 投資家層の拡大と当社株式の流動性の向上を図ることを目的として、15年9月30日を基準日(効力発生日15年10月1日)として1株を2株に分割した。

 株価の動き(15年10月1日付で株式2分割)を見ると、全般地合い悪化も影響して600円近辺でのモミ合いから下放れの形となった。12月21日には520円まで下押して8月の直近安値501円に接近した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 12月21日の終値523円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS43円33銭で算出)は12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円50銭で算出)は2.4%近辺、前期実績PBR(前期実績に株式2分割を考慮したBPS488円86銭で算出)は1.1倍近辺である。時価総額は約85億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形となって13週移動平均線を割り込んだ。ただし日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。マイナンバー関連やサイバーセキュリティ関連としても注目され、反発のタイミングだろう。

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