【アナリスト水田雅展の銘柄分析】キャリアリンクはBPO案件受注拡大が牽引して中期成長シナリオに変化なし

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 キャリアリンク<6070>(東1)は「チーム派遣」を強みとする総合人材サービス企業である。BPO関連事業の受注拡大が牽引して16年2月期は増収増益・増配予想であり、中期成長シナリオに変化はない。改正労働者派遣法も追い風だ。株価は調整が一巡して出直り展開だろう。なお12月28日に第3四半期累計(3月~11月)の業績発表を予定している。

■BPO関連事業が主力の総合人材サービス企業

 官公庁・地方公共団体・民間企業向けBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)関連事業を主力として、企業等のコンタクトセンター(コールセンター)向けCRM(カスターマー・リレーションシップ・マネジメント)関連事業、一般事務職分野の一般事務事業、さらに製造・物流分野の製造技術系事業など、人材派遣・紹介や業務請負などの総合人材サービス事業を展開している。

 なお15年2月期の事業別売上高は、BPO関連事業84億10百万円(売上構成比60.3%)、CRM関連事業30億40百万円(同21.8%)、一般事務事業9億50百万円(同6.8%)、そして製造技術系事業15億46百万円(同11.1%)だった。

■顧客企業の業務効率化を実現する「チーム派遣」に強み

 顧客の業務効率化や品質向上などを実現する企画提案型の人材派遣および業務請負を特徴としている。特にBPO関連事業では、顧客企業の業務効率化や業務処理品質向上を実現するために「単なるスタッフ派遣」ではなく、経験豊富な社員をリーダーとして編成した「チーム派遣」を強みとしている。顧客にとっては、自社による導入時の研修や導入後の業務指導などに係る負担が軽減され、発注から短期間で大量業務処理の稼働開始が可能になるというメリットもある。

 またBPO事業者からの受注を含めて1000名を超える大型案件でも、稼働開始まで短期間で対応できるノウハウを有していることも強みだ。スタッフに対してはキャリアパス制度などを活用して能力、満足度、出勤率、稼働率を高める仕組みを構築しており、こうした仕組みもチーム派遣や大型案件に対する短期間での対応を支えている。

 中期的な経営基盤強化に向けて、BPO関連事業における官公庁・地方公共団体関連の大型特需案件や成長市場である民間BPO案件の受注拡大、高品質で顧客満足度の高いBPOサービス提供の強化、M&Aも活用したBPO関連事業の領域拡大、CRM関連事業や製造技術系事業における高利益案件をメインターゲットとした受注活動の強化、そして業容拡大に向けた人材採用・育成の強化を推進している。

■BPO関連事業が拡大して増収基調

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)28億78百万円、第2四半期(6月~8月)36億08百万円、第3四半期(9月~11月)38億41百万円、第4四半期(12月~2月)36億21百万円、営業利益は第1四半期1億15百万円、第2四半期2億94百万円、第3四半期2億71百万円、第4四半期1億51百万円だった。

 BPO関連事業が拡大して四半期ベースでも増収基調だ。また15年2月期のROEは14年2月期比15.1ポイント上昇して24.5%、自己資本比率は同11.4ポイント低下して41.3%となった。配当性向は20.4%だった。

■16年2月期第2四半期累計は減益だが、BPO関連事業は想定以上に好調

 今期(16年2月期)第2四半期累計(3月~8月)の非連結業績は、売上高が前年同期比22.0%増の79億14百万円だが、営業利益が同4.0%減の3億92百万円、経常利益が同5.3%減の3億84百万円、純利益が同0.7%減の2億38百万円だった。

 主力のBPO関連事業の好調が牽引して計画を上回る大幅増収だったが、BPO関連事業における新規受注業務のスタッフ研修費用の増加、下期運用開始案件に関する一過性の先行投資費用の発生が影響して、各利益は計画を下回り減益だった。売上総利益率は同1.5ポイント低下して20.1%、販管費比率は同0.2ポイント低下して15.1%だった。

 事業部門別の売上高は、BPO関連事業が同30.7%増の49億97百万円、CRM関連事業が同5.4%増の15億87百万円、製造技術系事業が同13.1%増の7億62百万円、一般事務事業が同17.2%増の5億66百万円だった。

 BPO関連事業は計画を大幅に上回った。首都圏で稼働中のBPO大型プロジェクト案件の新規業務が順調に拡大した。また新規受注に関しては、民間BPO案件及び官公庁BPO案件を順調に獲得しているようだ。

 なお官公庁BPOのマイナンバー案件および臨時給付金案件では、10月7日時点で22自治体・23案件を受注済みである。またマイナンバー案件に関しては、企画提案型入札のプロポーザル案件で約40%のシェア、を獲得しているようだ。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)38億73百万円、第2四半期(6月~8月)40億41百万円、営業利益は第1四半期1億89百万円、第2四半期2億03百万円だった。

■16年2月期増収増益・増配予想

 今期(16年2月期)通期の非連結業績予想(4月14日公表)は、売上高が前期比17.4%増の163億68百万円で、営業利益が同14.4%増の9億51百万円、経常利益が同14.2%増の9億38百万円、そして純利益が同15.4%増の5億62百万円としている。配当予想(4月14日公表)は同2円増配の年間18円(期末一括)で予想配当性向は20.1%となる。

 下期運用開始の大型案件に向けて即戦力の採用を増やしているため人件費が増加するが、主力のBPO関連事業の受注増加、BPO大型案件における業務処理効率化の進展が牽引して増収増益基調だ。

 事業部門別売上高の計画は、BPO関連事業が約15%増収、CRM関連事業が約20%増収、一般事務事業が約5%増収、製造技術系事業が約20%増収としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.4%、営業利益が41.2%、経常利益が40.9%、純利益が42.4%である。やや低水準の形だが、既存案件の業務量拡大や新規案件の受注は好調に推移している。そして新規案件の稼働で期後半に向けて収益が積み上がり、また上期には一過性要因として研修費用が発生したが、下期には見込まず投資回収期としている。

 業務効率化に向けた企画提案力、1000名以上の大型案件でも稼働開始まで短期間で対応できるノウハウ、官公庁向け大型BPO案件の受注実績などから、マイナンバー関連でも大型BPO案件を受注することが期待され、さらに改正労働者派遣法も追い風として期待される。16年2月期会社予想の達成は十分に可能だろう。

■BPO関連事業が成長エンジン、M&Aによる領域拡大も推進

 中期経営計画(16年2月期~18年2月期)では、目標値に18年2月期の売上高250億90百万円、営業利益15億20百万円、経常利益15億10百万円、純利益9億40百万円を掲げている。

 BPO関連事業を成長エンジンとした成長戦略を加速させる方針で、BPO関連事業の売上規模拡大、企画提案力・運用力の強化、M&Aによる領域拡大を重点戦略としている。

 特にBPO関連事業の拡大に向けて、BPOベンダー等との関係強化を推進するための営業推進部、人材育成を強化するための研修センター、人材採用・開発力を強化するための人材開発部を設置するなど新たな体制を構築した。

 またキャリアパス制度による社員登用増、無期雇用社員の採用増、高スキル・高スペック人材の確保などで「チーム派遣」を一段と強化する方針だ。

 事業部門別売上高の計画としては、BPO関連事業が高品質運用やIT分野を含めた事業領域拡大などで15年2月期比2.0倍の171億円、CRM関連事業が高利益案件をメインターゲットとして同42.0%増の43億円、製造技術系事業が製造業や流通業の高利益案件への戦略展開などで同64.2%増の25億円、一般事務事業が無期雇用・長期雇用を軸に高利益ビジネスモデルへの変革を目指して同11.2%増の10億円を掲げている。

■BPO関連事業の受注拡大が牽引して中期成長シナリオに変化なし

 中期的に事業環境は良好だ。官公庁・地方公共団体関連では財政健全化に向けた費用抑制の流れ、サービス向上や業務効率化のニーズ増大も背景として、官から民間への業務委託・移管の増加が予想されている。民間企業関連ではコア事業への経営資源集中や固定費の変動費化の流れも背景として、業務のアウトソーシング化が一段と増加すると予想されている。

 BPO関連事業の業容拡大に伴って中途採用が必要なため、人材開発部及び研修センターで人材開発及び研修を強化しており、BPO関連事業の受注拡大が牽引して中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株主還元は総合利回りの向上を目指す

 株主優待制度については毎年8月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。100株以上300株未満保有株主に対してオリジナルQUOカード1000円相当、300株以上保有株主に対してオリジナルQUOカード2000円相当を贈呈する。

 株主還元については基本方針として、現金配当と株主優待を合算した総合利回りの向上を目指している。

 なお11月12日に、大和インベスター・リレーションズが選定した「2015年インターネットIR表彰」において、当社が優良賞を受賞したと発表している。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、足元では全般地合い悪化も影響して1500円台を割り込む場面があったが、9月下旬以降は概ね直近安値圏1600円~1800円近辺でモミ合う展開だ。

 12月18日の終値1525円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS89円80銭で算出)は17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.2%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS349円63銭で算出)は4.4倍近辺である。なお時価総額は約96億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、一方では大きく下押す動きは見られず、1500円近辺が下値支持線のようだ。BPO関連事業の受注拡大が牽引して16年2月期増収増益・増配予想であり、中期成長シナリオに変化はない。改正労働者派遣法も追い風だ。調整が一巡して出直り展開だろう。

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