【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テラスカイはクラウド分野に特化してソリューション事業を展開、中期成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 テラスカイ<3915>(東マ)はクラウド分野に特化して、システム導入コンサルティング・受託開発のソリューション事業を主力としている。15年12月には一般社団法人FinTech協会に加盟した。株価は10月の戻り高値から一旦反落したが自律調整一巡感を強めている。流動性向上に向けた株式分割期待もあり、中期成長力を評価して三角保ち合い上放れの展開が期待される。

■クラウド分野のシステム導入コンサルティング・受託開発が主力

 クラウド分野に特化して、企業向けクラウドシステム導入コンサルティング・受託開発のソリューション事業、および製品を開発・販売する製品事業を展開している。15年2月期の売上構成比はソリューション事業75%、製品事業25%だった。

 10年9月NTTソフトウェアと資本業務提携、12年8月米国カリフォルニア州に連結子会社TerraSky Incを設立、13年9月サーバーワークスと資本業務提携(持分法適用関連会社)、14年5月クラウドに特化したMSP事業(企業が保有するサーバやネットワークの運用・監視・保守などを請け負う事業)の連結子会社スカイ365を設立、14年10月米Salesforceと資本提携した。

 なお12月7日には、デロイト トウシュ トーマツ リミテッド(DTTL)発表のテクノロジー・メディア・テレコミュニケーション(TMT)業界の収益(売上高)に基づく成長率ランキング「第14回アジア太平洋地域テクノロジー Fast500」において、直近3決算期の成長率92%を記録し、500位中469位を受賞したと発表している。また12月15日には、一般社団法人FinTech協会に法人会員として加盟したと発表している。

■クラウド世界大手Salesforce関連の技術力に強み

 ソリューション事業では、Salesforceを中心としたシステムの導入・保守、業務コンサルティングや企業システムのグランドデザインなどシステムコンサルティングの提供、クラウドによるERPシステムの導入・開発・保守など、クラウドを活用した最適なシステム開発支援および受託開発を行っている。

 製品事業ではクラウドに特化したサービスおよび製品の開発・販売を行っている。Salesforceの画面を自由にユーザー自身でデザインできるSaaS型画面作成サービス「SkyVisualEditor」、クラウドサービス間や社内システムとのデータ連携をノンプログラミングで提供するシステム連携サービス「SkyOnDemand」、Salesforceに特化したシステム連携ソフトウェア「DCSpider」の開発・販売を中心として、Salesforceのライセンス販売や、クラウドシステムと親和性の高いサービスの紹介・仕入販売も行っている。

 クラウド世界大手の米Salesforceが主催する4つの認定資格の国内合格者が1番多く所属している(15年3月1日時点)という技術力が強みである。15年3月には日経BP社「クラウドランキング」パブリッククラウド導入支援サービス部門において6回連続でベストサービスに選出された。

 そしてクラウド世代のリーディングカンパニーとして業種業態を問わず豊富なクラウドサービス導入実績を誇り、12月1日にはSalesforce等クラウドサービスの導入実績が2000件を突破したと発表している。

 12月9日には、当社が提供する企業向けカレンダーアプリコンポーネント「Multi-Vuew Calendar」のSalesforce組織へのダウンロード数が、提供開始から6ヶ月間で1000件を超え、SalesforceのアプリマーケットAppExchangeで最もダウンロードの多いコンポーネントになっていると発表した。

■中期成長に向けてクラウド業界における「パラダイムシフトの勝者」目指す

 中期成長に向けて、クラウド業界における「パラダイムシフトの勝者」を目指し、ハイブリッドクラウド事業への積極的投資、クラウドに特化したMSP(企業が保有するサーバやネットワークの運用・監視・保守などを請け負う事業)市場の確立、クラウドERP市場の創造と収益化、グローバルマーケットへの進出、IoTへの取り組みなどを推進している。

 ハイブリッドクラウド戦略では、各クラウドサービスの適材適所を組み合わせた「ハイブリッドクラウドソリューション」の提供を目的として戦略的提携を推進する。なお14年5月にはサーバーワークスと共同で、クラウドに特化した運用支援サービスを専業体制で提供する新会社スカイ365を設立した。

 15年8月にはNTTPCと連携して企業の生産性向上を支援するために、センサーデータと顧客データ(CRM)を掛け合わせたIoT利用を早期実現できるソリューションを提供すると発表した。なお両社はセールスフォース・ドットコム社が運営する「Salesforce1 IoT ジャンプスタートプログラム」に参加している。

 15年9月には、パスロジが開発・提供するトークンレス・ワンタイムパスワード「PassLogic」の提供を開始すると発表した。セキュリティに関して認証機能のニーズが高まっているため「PassLogic」を採用する。アマゾン・ウェブ・サービス上で提供することによって強力な認証機能を含めたすべてをクラウドで提供できるようになる。この提携によってクラウドの多様なセキュリティに関するニーズや「PassLogic」のクラウド利用ニーズに応えるとしている。

 また15年9月にはSalesforce Lightningに対応した画面やアプリケーションを手軽に作成できる世界初のクラウドサービス「SuPICE(スパイス)」を開発し、初期バージョンを15年12月から米国で提供開始すると発表した。日本国内向けは初期バージョンを改良して16年春提供開始するとしている。

 15年10月には米サービスマックス社と日本国内における初めての販売代理店契約を締結した。同社のフィールドサービス業務支援クラウドサービス「ServiceMax(サービスマックス)」の日本国内への販売および導入支援を行う。

 15年11月には16年5月施行の改正保険業法に対応した保険代理店向けソリューション「Insurance Agency Solution(IAS)」の提供を開始した。

■16年2月期第2四半期累計は大幅増収

 今期(16年2月期)第2四半期累計(3月~8月)の連結業績は、売上高が10億90百万円、営業利益が68百万円、経常利益が44百万円、純利益が19百万円だった。売上高と営業利益は期初計画を上回った。

 ソリューション事業におけるクラウドシステム構築案件が好調に推移した。また当社製品の導入社数の増加、保守運用子会社を通じた多角的クラウドサービスの展開も寄与して着実に顧客基盤を拡大した。前年同期は四半期連結財務諸表を作成していないため単純比較はできないが、実質的に49.3%増収となったようだ。なお売上総利益率は42.2%、販管費比率は36.0%だった。営業外費用では持分法投資損失19百万円、株式交付費4百万円を計上した。

 セグメント別に見ると、ソリューション事業は売上高が8億18百万円、営業利益(連結調整前)が1億76百万円、製品事業は売上高が2億71百万円、営業利益が83百万円だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)5億30百万円、第2四半期(6月~8月)5億60百万円、営業利益は第1四半期42百万円、第2四半期26百万円だった。

■16年2月期増収増益基調

 今期(16年2月期)通期の連結業績予想(4月30日公表)は、売上高が前期比40.5%増の23億04百万円、営業利益が同19.7%増の1億92百万円、経常利益が同14.0%増の1億76百万円、純利益が同29.4%増の93百万円としている。配当予想は無配継続としている。

 セグメント別売上高の計画はソリューション事業が同40.6%増の17億31百万円、製品事業が同40.5%増の5億72百万円である。ソリューション事業では大企業向けシステム開発案件を中心に10百万円超の大型案件が増加し、10百万円以下の案件も既存顧客の改修ニーズが増加する。製品事業ではSalesforceの利用拡大に伴って当社製品の利用も拡大し、米国市場での当社製品の認知度向上効果も寄与する。

 売上原価ではシステム開発および製品開発に伴う労務費・外注費の増加、販管費および営業外費用では人件費の増加、事務所移転に伴う賃借料の増加、株式公開費用の発生があるが、増収効果で吸収する。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は、売上高が47.3%、営業利益が35.4%、経常利益が25.0%、純利益が20.4%とやや低水準だが、期初時点で下期偏重の計画であり、通期ベースで増収増益基調に変化はないだろう。

■クラウドサービス市場は拡大基調

 総務省「平成25年版情報通信白書」によると、法人向けクラウドサービスの世界市場規模は10年の約410億ドルから16年には約1080億ドルに成長すると予測されている。

 またMM総研「国内クラウドサービス需要動向」によると、15年度の市場規模は13年度比2.9倍の1兆8000億円規模に拡大すると予測している。クラウド市場の成長も追い風として中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は三角保ち合い上放れの期待

 株価の動きを見ると、10月の戻り高値1万9310円から利益確定売りで反落して1万4000円~1万6000円近辺で推移している。ただし大きく下押す動きは見られず自律調整一巡感を強めている。

 12月30日の終値1万5410円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS68円15銭で算出)は226倍近辺、実績PBR(16年2月期第1四半期末の連結BPS574円34銭で算出)は27倍近辺である。時価総額は約217億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を一旦割り込んだが、切り返しの動きを強めている。また上値を切り下げたが、一方では下値を切り上げて三角保ち合いの形のようだ。流動性向上に向けた株式分割期待もあり、中期成長力を評価して三角保ち合い上放れの展開が期待される。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る