【アナリスト水田雅展の銘柄分析】キーコーヒーは16年3月期増収増益基調、3月期末の株主優待に向けて出直り

キーコーヒー 2594

 キーコーヒー<2594>(東1)はレギュラーコーヒーの大手である。新たな事業領域開拓戦略を積極推進して、16年3月期増収増益基調である。株価は直近安値圏でモミ合う展開だが下値固め完了感を強めている。3月期末の株主優待に向けて出直り展開だろう。なお1月28日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

■コーヒー関連事業を主力として飲食関連事業も展開

 コーヒー関連事業(業務用・家庭用レギュラーコーヒーの製造・販売)を主力として、飲食関連事業(イタリアントマト、アマンド)も展開している。ブランド力強化、収益力強化、グループ連携強化を柱として、新商品の開発・投入、新たな事業領域の開拓を積極推進している。

 イタリアントマトは、15年3月期の新規出店17店舗、閉店27店舗で、15年3月期末店舗数は直営64店舗、FC228店舗の合計292店舗だった。「国内は充実、海外は拡大」という基本方針に加えて、新業態店舗開発を促進し、中国やASEAN地域へ積極展開している。また効率的な生産・供給体制を構築するため、首都圏の3工場を集約した東京工場グランデを14年11月に竣工した。

■新たな事業領域開拓を積極推進

 M&Aも活用して積極的な業容拡大戦略を推進している。13年1月銀座ルノアール<9853>を持分法適用会社化、14年2月ネット通販事業拡大に向けてコーヒー豆焙煎加工販売のhonu加藤珈琲店を子会社化した。14年9月には世界有数のコーヒーメーカーであるillycaffe S.p.A(イタリア)と、illyブランドのレギュラーコーヒー製品全般について日本国内での独占販売契約を締結した。

 通販事業のhonu加藤珈琲店は「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー」を12年連続で受賞し、国内最大級のインターネットショッピングモール「Yahoo!ショッピング」においても「2014年年間ベストストア賞」を受賞している。

 15年4月にはスマートフォン向けアプリ「キーコーヒー ファンクラブ」を公開した。直営ショップ、KEYCOFFEE通販倶楽部、アマンド、ミヤマ珈琲など、各ブランドからのお得な情報、アプリ会員限定クーポン、おいしいコーヒーの入れ方など利用目的に応じて便利に使えるアプリだ。

■パッケージカフェ「KEYS CAFE」の出店を加速

 パッケージカフェ「KEYS CAFE」の出店も加速している。15年10月にはパッケージカフェ「KEYS CAFE」の北陸地方初出店となる「Fukui Shinbo KEYS CAFE」が、福井県福井市のショッピングセンター「ワイプラザ福井店」にオープンした。

 15年11月にはパッケージカフェ「KEYS CAFE」で、イオンタウン成田富里「Narita KEYS CAFE」およびJR茅ケ崎駅直結ビルのラスカ茅ヶ崎「Chigasaki KEYS CAFE」がオープンした。

■コーヒー生豆相場の影響を受ける収益構造、贈答用需要なども影響

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)138億78百万円、第2四半期(7月~9月)136億77百万円、第3四半期(10月~12月)152億55百万円、第4四半期(1月~3月)135億13百万円で、営業利益は第1四半期4億81百万円、第2四半期2億69百万円、第3四半期5億34百万円、第4四半期4億39百万円の赤字だった。

 原料のコーヒー生豆相場の影響を受ける収益構造で、天候や贈答用需要なども影響する。15年3月期の売上総利益率は28.6%で14年3月期比1.6ポイント低下、販管費比率は27.1%で同0.2ポイント低下、ROEは2.3%で同0.7ポイント低下、自己資本比率は72.3%で同1.2ポイント低下した。配当性向は44.9%だった。

■16年3月期第2四半期累計は増収・営業増益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比18.9%増の327億52百万円、営業利益が同3.4%増の7億75百万円、経常利益が同2.2%減の9億66百万円、純利益が同17.4%増の5億79百万円だった。

 コーヒー関連事業の増収が牽引した。売上総利益率は25.5%で同5.0ポイント低下、販管費比率は23.1%で同4.7ポイント低下した。営業外収益で受取配当金が減少して経常減益だが、特別損失で前期計上の減損損失1億70百万円が一巡して最終増益だった。

 セグメント別の動向を見ると、主力のコーヒー関連事業は売上高が同26.7%増の280億84百万円、営業利益(連結調整前)が同11.5%増の9億61百万円だった。積極的な営業活動が奏功し、業務用、家庭用、原料用とも増収だった。本格的なコーヒーを提供する「KEYS CAFE」は9店舗を出店し、導入店舗は29店舗となった。

 飲食関連事業は、イタリアントマトにおける不採算店整理で売上高が同16.3%減の25億75百万円となり、営業利益が44百万円の赤字(前年同期は36百万円の赤字)だった。イタリアントマト新規出店は海外3店舗、閉店は18店舗で、15年9月末店舗数は直営68店舗、FC209店舗の合計277店舗となった。その他は売上高が同9.3%減の20億92百万円、営業利益が同37.8%減の1億31百万円だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)160億94百万円、第2四半期(7月~9月)166億58百万円、営業利益は第1四半期6億65百万円、第2四半期1億10百万円だった。

■16年3月期増収増益基調

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(10月26日に売上高を増額)は、売上高が前期比13.6%増の640億円、営業利益が同60.8%増の13億60百万円、経常利益が同29.6%増の18億円、純利益が同39.7%増の11億30百万円としている。配当予想(5月13日公表)は前期と同額の年間16円(第2四半期末8円、期末8円)で予想配当性向は32.1%となる。

 天候やコーヒー生豆相場の動向で収益が変動しやすいが、企画提案型営業の強化、生活者に対するブランド訴求、積極的な新商品の開発・市場投入、高付加価値商品の拡販、業務用・家庭用・原料用における価格改定浸透、CVS向けカウンターコーヒーの進捗、最適製造体制の確立、生産効率化、コスト低減などで大幅増益予想だ。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が51.2%、営業利益が57.0%、経常利益が53.7%、純利益が51.2%である。通期ベースで好業績が期待される。

■株主優待や自己株式取得で積極還元

 株主優待制度については、毎年3月末日および9月末日現在の100株以上所有株主に対して、自社製品詰め合わせを贈呈している。100株以上~300株未満所有株主に対しては1000円相当、300株以上~1000株未満所有株主に対しては3000円相当、1000株以上所有株主に対しては5000円相当を贈呈する。

 また15年10月には、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)によって自己株式取得を実施した。取得株式総数は45万株、取得価額総額は8億7795万円(1株につき1951円)だった。

■株価は下値固め完了感

 株価の動きを見ると、直近安値圏1900円台でモミ合う展開だが、11月5日の1882円を割り込むことなく下値固め完了感を強めている。

 1月5日の終値1932円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS49円82銭で算出)は38~39倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間16円で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1594円32銭で算出)は1.2倍近辺である。時価総額は約438億円である。

 週足チャートで見ると1900円近辺で下値固めが完了して13週移動平均線突破の動きを強めている。16年3月期増収増益基調であり、3月期末の株主優待に向けて出直り展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る