【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インテリジェントウェイブは戻り歩調に変化なし、16年6月期営業増益予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インテリジェントウェイブ<4847>(JQS)は金融分野や情報セキュリティ分野を中心にシステムソリューション事業を展開している。16年6月期営業増益予想でサイバーセキュリティ関連としても注目される。株価は12月の戻り高値から一旦反落したが素早く切り返す動きだ。戻り歩調に変化はないだろう。なお2月3日に第2四半期累計(7月~12月)の業績発表を予定している。

■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力

 大日本印刷<7912>の連結子会社で、ソフトウェア開発中心にソリューションを提供する金融システムソリューション事業、情報セキュリティ分野中心にパッケージソフトウェアや保守サービスを提供するプロダクトソリューション事業を展開している。

 高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システムで特に高シェアを持ち、クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。

 クレジットカードの利用承認や銀行ATMのネットワーク接続などの決済ネットワークを支える仕組みの「NET+1」(ネットプラスワン)、クレジットカードの不正利用を検知する「ACEPlus」(エースプラス)、内部情報漏えい対策システム「CWAT」(シーワット)などの製品が強みだ。

■事業領域拡大に向けて新製品開発を強化

 金融システムソリューション事業ではクレジットカード決済のフロント業務関連システムから、バックオフィス業務関連など基幹業務システム関連への事業領域拡大を目指している。またプロダクトソリューション事業では、サイバー攻撃や情報漏えいに対応したセキュリティ関連のソリューションを強化している。

 15年6月には内部情報漏えい対策システムCWAT(シーワット)の最新版となる「CWAT Version5.5」の出荷を開始した。CWATはPCなど情報端末のファイル操作、メール送信、外部メディアへの書き込み、接続などを監視し、企業の情報を守る情報漏えい対策システムである。最新バージョンではオプション機能としてWindows Server監視機能を追加した。

 また新製品開発では14年末から、当社保有技術を活用した新製品OnCore(オンコア)の開発に着手している。証券取引関連業務で培った技術を基に「NET+1」や「ACEPlus」等の機能を搭載し、さまざまなシステム開発におけるプラットフォームの基盤となる製品だ。ハードウェアをセットにしたパッケージ型製品として、金融以外の業界に向けても販売を予定している。また国内だけでなく東南アジアでの販売も視野に入れている。

■アライアンス戦略も積極化

 アライアンス戦略では14年2月、ジーフィー(GIFI)と個人投資家向け次世代オンライントレードシステム分野で業務提携した。

 15年2月にはCyberArk社(イスラエル)と国内販売代理店契約を締結した。世界65ヶ国以上、1750社以上で導入実績がある同社の特権アカウントセキュイリティソリューションを販売する。

 15年2月にはDevexperts Japan社と業務提携した。Devexperts社はトレーディングソフトウェア開発に優れたノウハウを持つ会社である。戦略的業務提携によって、これまで実績のある高速取引、リアルタイム市況情報分析のソリューションから、デリバティブシステムを中心とした金融業務執行系プラットフォーム開発へ業務範囲を拡大し、金融業務の幅広いニーズに対応したソリューションを提供する。

 15年5月には、大日本印刷が米パロアルトネットワークスと販売代理店契約を締結したことに伴って、同社の標的型攻撃対策ソフトウェア「アドバンストエンドポイント プロテクションTraps」の販売を開始した。17年度までの3年間累計で約20億円の売上を目指すとしている。

 そして15年10月には、米パロアルトネットワークスの標的型攻撃対策ソフトウェア「アドバンストエンドポイント プロテクションTraps」運用支援のための新サービス「Traps-エンドポイントログアナリシス(TELA)」を開発し、提供開始すると発表した。

■金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響する収益構造

 15年6月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)14億26百万円、第2四半期(10月~12月)14億18百万円、第3四半期(1月~3月)14億57百万円、第4四半期(4月~6月)18億58百万円、営業利益は第1四半期94百万円、第2四半期89百万円、第3四半期99百万円、第4四半期2億01百万円だった。

 金融業界のシステム投資の動向や案件ごとの採算性などが影響しやすい収益構造である。15年6月期は不採算案件が一巡して営業損益が大幅に改善した。売上総利益率は28.9%で14年6月期比8.4ポイント上昇、販管費比率は21.0%で同2.8ポイント上昇、ROEは10.1%で同8.2ポイント上昇、自己資本比率は74.6%で同4.3ポイント低下した。配当性向は28.0%だった。

■16年6月期第1四半期は減収減益だが、ほぼ計画水準で新規商談堅調

 今期(16年6月期)第1四半期(7月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.7%減の13億31百万円、営業利益が同63.6%減の34百万円、経常利益が同55.8%減の40百万円、純利益が同44.5%減の33百万円だった。

 金融システムソリューション事業におけるハードウェアの減収などで減収減益となったが、ほぼ計画水準としている。また金融システムソリューション事業では金融業界やクレジットカード業界の新規設備投資案件、プロダクトソリューション事業ではサイバーセキュリティ対策関連の商談が堅調に推移しているようだ。

 売上総利益率は24.9%で同2.6ポイント低下、販管費比率は22.3%で同1.4ポイント上昇した。営業外収益では為替差益8百万円を計上し、営業外費用では持分法投資損失が減少(前年同期は5百万円計上、今期は1百万円計上)した。

 セグメント別に見ると、金融システムソリューション事業は売上高が同15.6%減の11億44百万円で、営業利益が同85.5%減の24百万円だった。ハードウェアが同1億78百万円減収、当社製パッケージソフトが同51百万円減収だった。プロダクトソリューション事業は売上高が同2.7倍の1億86百万円で、営業利益が10百万円(前年同期は72百万円の赤字)だった。他社製パッケージソフトの販売が好調だった。

■16年6月期通期は営業増益予想

 今期(16年6月期)通期の連結業績予想(8月5日公表)については、売上高が前期比5.5%増の65億円、営業利益が同11.6%増の5億40百万円、経常利益が同10.2%増の5億40百万円、純利益が同25.7%減の3億50百万円としている。

 純利益は投資有価証券売却益の一巡などで減益予想だが、増収効果や経費圧縮効果などで営業増益予想だ。配当予想は前期と同額の年間5円(期末一括)で予想配当性向は37.6%となる。

 セグメント別の計画を見ると、金融システムソリューションは売上高が同3.0%増の57億円、営業利益が同29.0%減の5億40百万円、プロダクトソリューションは売上高が同27.6%増の8億円、営業利益が0百万円(前期は2億76百万円の赤字)としている。

 金融システムソリューションでは、ハードウェアと自社製パッケージで減収を見込み、ソフトウェア開発は増収だが利益率の低下を見込んでいる。ただし保守的な計画のようだ。プロダクトソリューションは、サイバーセキュリティ関連の他社製パッケージソフトの大幅増収と、経費削減効果で営業損益が大幅に改善する見込みだ。

 なお通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が20.5%、営業利益が6.3%、経常利益が7.4%、純利益が9.4%と低水準だが、期初時点で下期偏重の計画であり、通期ベースでの営業増益基調に変化はないだろう。

■クレジットカード・金融業界のシステム投資は高水準

 クレジットカード・金融業界では、システム・ハードウェア更新投資、クレジットカード会社の資本関係変化に伴うシステム開発投資、不正検知を含むFEPシステム投資、ブランドプリペイドカードやモバイル端末決済など決済サービス多様化に対応したシステム投資、訪日外国人旅行客の増加に伴うコンビニエンスストアATMや海外カードに対応した新規投資などで、設備投資が高水準に推移する見通しだ。

 高水準の投資需要を背景にクレジットカード・金融関連の開発案件受注増加が期待され、さらにサイバー攻撃対策や情報漏えい対策などセキュリティ関連の需要増加も期待される。

 中期成長に向けて、需要変動や採算性の影響を受けやすい開発請負型から、ASP方式によるセキュリティソフト・システム利用課金などストック型の収益構造への転換を推進する方針だ。そして従業員の意識改革や人材育成を目指した組織改正、開発プロジェクトの利益確保を目指した品質保証部門の新設などの施策も実施している。

 中期的な経営目標値としては売上高100億円、営業利益10億円を目指している。運用関連分野でのM&Aの活用も視野に入れているようだ。中期的に収益拡大基調だろう。

■株主優待はセキュリティ製品を贈呈

 株主優待制度については、毎年6月末現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、Dr.Web社のセキュリティ製品(Windows版またはMac版)1ライセンス(PC1台用)を贈呈する。

 Dr.Web製品は、ロシアの各政府機関や地方自治体をはじめ、世界中のグローバルカンパニーで利用されている業界最高水準のセキュリティ製である。

■株価は戻り歩調に変化なし

 株価の動きを見ると、12月18日の戻り高値567円から利益確定売りや地合い悪化の影響で一旦反落したが、450円近辺から切り返しの動きを強めている。そして1月6日には559円まで上伸する場面があった。戻り歩調に変化はないだろう。

 1月6日の終値522円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円29銭で算出)は39~40倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は1.0%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS183円55銭で算出)は2.8倍近辺である。時価総額は約137億円である。

 週足チャートで見ると一旦割り込んだ26週移動平均線を素早く回復し、13週移動平均線が上向きに転じた。強基調への転換を確認した形だ。16年6月期営業増益予想で、サイバーセキュリティ関連としても注目される。出直りの動きが本格化しそうだ。

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