【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エスプールは安値圏モミ合いから上放れ、16年11月期は成長軌道へ回帰

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 エスプール<2471>(JQS)はロジスティクス、障がい者雇用支援、コールセンターなどを中心に人材サービス事業を展開し、新規分野として電力会社のスマートメーター関連業務を拡大している。先行費用負担などで15年11月期業績を減額修正したが、16年11月期はスマートメーター設置業務が収益化して成長軌道への回帰が予想される。改正労働者派遣法も追い風だ。株価は安値圏モミ合いから上放れ展開だろう。なお1月13日に15年11月期決算発表を予定している。

■ロジスティクス、障がい者雇用支援、コールセンターなどの人材サービス事業

 ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービスなど)、人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣など)を展開している。

 なお除染業務などのフィールドサービスを提供していたエスプールエコロジーについては、現在は事業活動を行っていないため15年12月に解散および清算を発表した。

■ロジスティクス分野はネット通販市場拡大が追い風

 ロジスティクスアウトソーシングサービスは、子会社エスプールロジスティクスがECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスで新規顧客獲得を推進している。ネット通販市場の拡大やインバウンド需要の増加を背景として物流センターの稼働率は高水準である。

■障がい者雇用支援サービスを拡大

 障がい者雇用支援サービスは、障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートしている。子会社エスプールプラスが運営する企業向け賃貸農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱としている。高付加価値サービスとして千葉県を中心に事業規模を拡大する方針だ。

 千葉県市原市「わーくはぴねす農園 市原ファーム」では23社の企業がサービスを利用し、14年6月新設の千葉県長南町「わーくはぴねす農園 茂原ファーム」も完売した。15年2月には第3農園となる山武農園を開設した。また15年4月には知的障がい者の雇用を促進するため、年内に「わーくはぴねす農園」を3ヶ所増設すると発表した。

 15年2月には就労移行支援事業所「障がい者就職塾」千葉校を開設すると発表している。千葉校開設で「障がい者就職塾」のネットワークは5拠点となる。これまで4年間で約150名の知的障がい者が就職し、退職率が1%未満という高い定着率を誇っている。

■電力会社のスマートメーター関連業務を拡大

 フィールドマーケティングサービスでは、新規分野として電力会社が推進するスマートメーター関連業務を拡大する。14年9月に子会社エスプールエコロジーが一般建設業(電気工事業、電気通信工事業)の許可を取得し、移動通信キャリアの通信・ネットワーク機器の設置業務、電力計のスマートメーター化に関連したサポート業務を開始した。

 15年3月には子会社エスプールエンジニアリングの設立と、大規模な工事を請け負うことができる特定建設業(電気工事業、管工事業)の許可取得を発表した。新会社設立に伴ってエスプールエコロジーが行っていた業務についても新会社に順次移管する。

 15年5月には、エスプールエンジニアリングが東京電力<9501>からスマートメーター設置業務を受注した。東京電力は20年度までに約2700万台のスマートメーター設置を予定しており、このうち約540万台分の入札で約24億円分の業務(工事履行期間15年7月1日~17年3月20日)を受注した。今回の受注を皮切りに、確実に実績を積み上げて全国各地域での受注を目指す。

■販売促進支援分野は収益性向上目指す

 人材ソリューション事業(子会社エスプールヒューマンソリューションズ)では、ファミリーマート<8028>のFC店舗向けに人材提供を一括で行う「人材サポートセンター」を設立し、コンビニエンスストア向けストアスタッフサービスを強化している。

 14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立した。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務などの販売促進支援業務を集約し、事業拡大と収益性向上を目指す。

 15年6月にはフルキャストホールディングス<4848>と業務提携した。当社の各種アウトソーシングノウハウとフルキャストの全国規模での採用力を組み合わせることで競争力のあるサービスを提供し、大規模アウトソーシング案件の受注に向けて営業協力を開始する。調査・キャンペーン業務、セールスプロモーション業務の分野を中心に初年度10社の受注を目指すとしている。

■15年11月期第3四半期累計は先行投資負担

 前期(15年11月期)第3四半期累計(12月~8月)連結業績は、売上高が前年同期比8.0%増の52億38百万円、営業利益が59百万円の赤字(前年同期は1億55百万円の黒字)、経常利益が66百万円の赤字(同1億47百万円の黒字)、純利益が1億24百万円の赤字(同1億21百万円の黒字)だった。

 ビジネスソリューション事業のロジスティクスアウトソーシングサービスはインバウンド需要やネット通販市場の拡大を背景として、ビジネスソリューション事業の障がい者雇用支援サービスは第3農園が完成し、人材ソリューション事業のコールセンター業務は人材不足を背景として、いずれも好調に推移した。

 ただしビジネスソリューション事業のフィールドマーケティングサービスは、15年7月業務開始のスマートメーター設置業務に係る先行準備費用(約200名の採用・研修費、業務開始前の人件費負担、14ヶ所の事務所開設費および工具購入費など約1億50百万円の先行支出)が発生した。また本社移転に係る費用36百万円の特別損失計上などで各利益は赤字だった。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同8.9%増の21億37百万円、営業利益が同90.4%減の18百万円、人材ソリューション事業は売上高が同5.9%増の31億29百万円、営業利益が同6.5%増の2億55百万円だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(12月~2月)16億61百万円、第2四半期(3月~5月)17億77百万円、第3四半期(6月~8月)18億円、営業利益は第1四半期22百万円の赤字、第2四半期53百万円、第3四半期90百万円の赤字だった。 

■15年11月期を減額修正だが、16年11月期は成長軌道へ回帰

 前期(15年11月期)通期の連結業績予想について12月28日に減額修正した。前回予想(7月2日に売上高を増額、利益を減額修正)に対して、売上高は2億50百万円減額して前々期比10.0%増の72億67百万円、営業利益は91百万円減額して同71.5%減の59百万円、経常利益は90百万円減額して同74.3%減の49百万円、そして純利益は1億35百万円減額して68百万円の赤字(前々期は1億65百万円の黒字)とした。配当予想は前回予想(1月14日公表)を据え置いて、前々期と同額の年間10円(期末一括)としている。

 売上面では人材ソリューション事業が好調に推移したが、ビジネスソリューション事業において、ロジスティクスアウトソーシングサービスの大口顧客との契約が終了し、東京電力のスマートメーター設置業務の立ち上げ遅れが影響した。

 利益面では、人材ソリューション事業が売上増加で計画超の利益となったが、ロジスティクスアウトソーシングサービスの売上高が計画を下回ったことに加えて、スマートメーター設置業務の先行支出が想定を上回り、業務習得にも想定以上の時間を要した影響で利益を減額した。また純利益については、スマートメーター設置業務の事業計画遅れに伴う繰延税金資産の一部取崩も影響した。

 15年11月期はスマートメーター設置業務の先行費用負担や立ち上げ遅れなどで大幅減益だったが、16年11月期はスマートメーター設置業務が収益化し、改正労働者派遣法も追い風となって成長軌道への回帰が予想される。

■中期経営計画で「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」目指す

 15年1月に発表した新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」では、中期ビジョンとして「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げている。

 社会貢献性・成長性の高い分野での事業展開、ニッチな分野・参入障壁の高い分野での事業展開を推進し、経営目標値は営業利益率5%の早期達成と20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROE最低5%堅持としている。高付加価値サービスが牽引して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は安値圏モミ合いから上放れ

 株価の動きを見ると、15年11月以降は概ね安値圏800円~900円近辺でモミ合う展開だ。ただし15年11月期業績予想減額修正の影響は限定的で、1月7日には899円まで上伸してモミ合い上放れの動きを強めてきた。

 1月7日の終値894円を指標面で見ると、前期推定配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.1%近辺、前々期実績の連結PBR(前々期実績の連結BPS251円66銭で算出)は3.6倍近辺である。時価総額は約27億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって26週移動平均線を突破した。モミ合いから上放れて強基調へ転換する動きのようだ。先行投資負担などで15年11月期業績を減額修正したが、16年11月期は成長軌道への回帰が予想される。改正労働者派遣法も追い風だ。モミ合いから上放れの展開だろう。

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