【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンフーズは戻り高値圏で堅調、16年3月期大幅増益予想や低PBRを評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託生産の最大手で、新規ビジネス分野への展開も強化している。16年3月期は稼働率上昇効果などで大幅増益予想だ。株価は地合い悪化の状況でも戻り高値圏で堅調に推移している。0.8倍近辺の低PBRも評価して15年7月の昨年来高値を目指す展開だろう。

■飲料受託生産の国内最大手、フレキシブルで効率的な生産に強み

 伊藤忠商事<8001>系で飲料受託生産(OEM)の国内最大手である。品目別には炭酸飲料と茶系飲料を主力として、コーヒー飲料、果汁飲料、機能性飲料、酒類飲料、ファーストフード店のディスペンサーでサービスされる業務用濃縮飲料(ウーロン茶、アイスコーヒーなど)を製造している。

 主要得意先はアサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園<2593>、サントリー食品インターナショナル<2587>などの大手飲料メーカーである。容器別にはペットボトル飲料が主力で、缶飲料は戦略的に減少させている。

 さまざまな容器(ペットボトル、瓶、缶)の飲料を世界最大級の本社1工場で生産し、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産を強みとしている。容器のコストダウンなどにも積極的に取り組んでいる。また本社工場のある千葉県長柄町は、首都圏に近いロケーションという競争優位性に加えて、表層地盤の揺れやすさが0.4~0.6と安定しているため災害優位性にも優れている。

■上期(4月~9月)が繁忙期、下期(10月~3月)が閑散期の収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、受託製造数量は第1四半期(4月~6月)1344万6千ケース、第2四半期(7月~9月)1068万9千ケース、第3四半期(10月~12月)735万3千ケース、第4四半期(1月~3月)926万ケース、売上高は第1四半期89億32百万円、第2四半期67億28百万円、第3四半期45億49百万円、第4四半期46億53百万円、営業利益は第1四半期6億37百万円、第2四半期1億54百万円、第3四半期4億67百万円の赤字、第4四半期2億65百万円の赤字だった。

 夏場の上期(4月~9月)は繁忙期だが、冬場の下期(10月~3月)は飲料業界全体の閑散期となって生産量が減少するため、下期は営業損益が赤字となる収益構造だ。ただし15年3月期の第4四半期は第3四半期に比べて赤字が大幅に縮小した。15年3月期は消費増税の影響や夏場の天候不順の影響を受けたが、受託製造数量増加や生産性向上などで営業損益は改善基調だ。

 なお、建物およびリース資産を除く有形固定資産の減価償却方法について、16年3月期から「主として定率法」を「主として定額法」に変更した。

■16年3月期第2四半期累計は大幅増益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の非連結業績は、売上高が前年同期比38.8%減の95億84百万円、営業利益が同97.5%増の15億64百万円、経常利益が同96.7%増の15億56百万円、純利益が同2.2倍の10億36百万円だった。営業利益、経常利益、純利益は第2四半期累計として過去最高益を記録した。

 一部飲料メーカーとの取引形態変更(有償支給から無償支給に変更)に伴って見かけ上の売上高は大幅減少したが、実質的な売上高となる加工賃収入は同6.6%増の62億05百万円と増収だった。受託製造数量は同4.8%増の2528万6千ケースだった。消費増税や天候不順の影響が一巡して飲料業界全体の販売数量が同1.3%増(ミネラルウォーター除く)と上向き、積極的な営業活動による新規商材受託なども寄与して加工賃収入が順調に増加した。

 売上総利益は同43.7%増加した。加工賃収入の増加に加えて、自社でペットボトルを製造することによる製造利益の取り込み、原価低減による変動経費の減少、減価償却方法変更に伴う減価償却費の減少も寄与した。

 なお四半期別に見ると、受託製造数量は第1四半期(4月~6月)1405万7千ケース、第2四半期(7月~9月)1122万9千ケース、売上高は第1四半期55億28百万円、第2四半期40億56百万円、営業利益は第1四半期10億54百万円、第2四半期5億10百万円だった。

■16年3月期通期も大幅増益予想

 今期(16年3月期)通期の非連結業績予想(4月24日公表)は、売上高が前期比32.8%減の167億円、営業利益が同11.4倍の6億80百万円、経常利益が同11.6倍の7億円、純利益が3億90百万円(前期は24百万円の赤字)としている。配当予想(4月24日公表)は前期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)で、予想配当性向は33.4%となる。

 一部飲料メーカーとの取引形態変更に伴って見かけ上の売上高は大幅減少となるが、消費増税や天候不順の影響一巡、新規商材受託などで受託製造数量が増加し、実質的な売上高となる加工賃収入が順調に増加する。受託製造数量は同11.2%増の4529万6千ケース、加工賃収入は同9.6%増の106億29百万円の計画としている。操業度上昇効果やコストダウン効果も寄与して大幅増益予想だ。

 なお12月18日に特別利益と特別損失の計上を発表した。経済産業省「平成24年度円高・エネルギー制約対策のための先端設備等投資促進事業費補助金」の金額が確定したため、特別利益に国庫補助金10億76百万円を計上する。この補助金を機械および装置等の取得価額から直接減額し、特別損失に固定資産圧縮損7億71百万円を計上する。また中国で飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(常熱)有限公司(東洋製罐との合弁)の株式について、受注および製造は順調に推移しているが、人民元安の影響等により実質価額が著しく低下したため減損処理を行い、特別損失に関連会社株式評価損3億50百万円を計上する。通期業績予想については変更なしとしている。

 天候面の不透明感が強く、また次期中期経営計画策定に向けた準備などで経費増加の可能性があるとして通期業績の会社予想を据え置いたが、やや保守的な計画としているため増額余地がありそうだ。

■コア事業の収益拡大に向けた投資と新規ビジネスの拡大を推進

 中期成長戦略については、コアビジネス(国内飲料受託製造事業)の収益拡大に向けて将来を見据えた投資の着実な推進、低重心経営の実践、新規商材への取り組み強化、および新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品、その他)の着実な推進と事業収益の拡大、そして成長戦略を支える経営基盤の強化としている。

 コアビジネス(国内飲料受託製造事業)では積極投資を推進し、12年7月に本社工場で世界最新鋭の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン(Eライン)が稼動した。また14年3月には既存の大型ペットボトルライン(Tライン)もリバイタライズ(機能増強)で炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン化した。

 新規ビジネス分野では、国内で水宅配事業を展開するウォーターネット、および中国で飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(常熱)有限公司(東洋製罐との合弁)への出資比率を引き上げている。ウォーターネットの販売数量、東洋飲料(常熱)の受託製造量とも順調に増加し、ウォーターネットは黒字が定着したようだ。

 東洋飲料(常熱)は中国における日系初の飲料受託製造会社で、国際的な認証規格「FSSC22000」も取得している。第1期として2ライン(12年8月および9月)、第2期として2ライン(13年5月および8月)が稼働し、さらに15年8月には1ラインを大型PET対応に改造した。15年は中国系メーカーを中心に取引先が大幅に増加し、受託製造量が拡大する16年の黒字化を目指している。

 自社ブランド商品に関しては、本社工場がある千葉県産の農林水産物を使用した商品「おいしい房総サイダー」シリーズなどを、千葉県を中心に販売している。15年6月には「千葉のおいしいお茶」を「千葉のおいしいお茶 房総(ふさ)みどり」としてリニューアル販売を開始した。千葉県大網白里市にある河野製茶工場で自家栽培され、千葉県の「ちばエコ農産物」に指定された茶葉のみを使用している。

■16年4月以降にポスト中期経営計画を公表の方針

 15年4月に4ヵ年中期経営計画「JUMP2015」のレビューと見直しを発表した。3年度目の15年3月期が消費マインドの低迷や全国的な天候不順の影響を受けて計画を下回ったため、最終年度16年3月期の計画を見直した。

 ただし経営方針および方向性を堅持し、成長戦略を着実に推進するとしており、新規ビジネスの連結収益化目標は17年3月期以降としている。

 15年10月には組織変更を実施した。国内外での新規ビジネス創出・推進機能の強化を図るため、新規ビジネス事業部に海外チームを新設した。さらに水宅配事業の強化を図るため、新規ビジネス事業部のWNチームを移管してウォーターネット事業部を新設した。新規ビジネス分野の業容拡大・収益化を加速させる戦略だ。

 15年12月には、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方、コーポレート・ガバナンスの体制ならびに運営に関する事項を定めた「コーポレート・ガバナンス基本方針」の制定をリリースした。当社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、当社経営の透明性・公正性を高め、企業活動が適正かつ適切に行われる仕組み(コーポレート・ガバナンス)を構築・運営する。

 そして16年4月以降にポスト中期経営計画を公表する方針としている。新規ビジネス分野を含めてM&Aの活用も視野に入れて、戦略的パートナーである伊藤忠商事や東洋製罐との連携も強化するようだ。

■飲料受託生産の役割・存在感が一段と高まる

 飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの内製拡大による受託製造量の減少を懸念する見方もあるようだが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。

 また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。このため飲料受託生産の役割や存在感は一段と高まっている。

 そして当社は飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮して受託製造量の増加が期待される。中期的に収益拡大基調だろう。

■株主優待で積極還元

 配当の基本方針は、健全な財務体質を目指し、将来の事業発展に備えた設備投資等のための内部留保を確保する一方、業績に応じた安定かつ継続的な配当を行うとしている。

 また株主優待制度を実施して積極還元姿勢を示している、株主優待制度は毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主に対して、当社製品詰め合わせセットを贈呈している。

■株価は地合い悪化の状況でも戻り高値圏で堅調

 株価の動きを見ると、11月以降は概ね戻り高値圏1140円~1170円近辺のレンジで推移している。1月5日には1173円まで上伸する場面があった。全般地合い悪化の状況でも堅調な展開だ。

 1月8日の終値1151円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS80円86銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想年間27円で算出)は2.4%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS1464円85銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約59億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が下値を支える形だ。戻り歩調に変化はなく、16年3月期大幅増益予想、そして0.8倍近辺の低PBRを評価して15年7月の昨年来高値1210円を目指す展開だろう。

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