【アナリスト水田雅展の銘柄分析】マルマエは16年8月期第1四半期大幅増収増益、通期業績は再増額の可能性

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 マルマエ<6264>(東マ)は半導体・FPD製造装置に使用される真空部品などの精密切削加工事業を展開している。12月25日に16年8月期第2四半期累計(9月~2月)と通期業績の会社予想を増額修正し、1月12日に発表した第1四半期(9月~11月)業績は大幅増収増益だった。通期会社予想は再増額の可能性が高いだろう。株価は鹿児島大学との共同研究を材料視した12月の戻り高値から一旦反落したが、高水準の受注や収益改善基調を再評価して戻りを試す展開だろう。

■真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開

 半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開し、新規分野として光学装置・通信関連分野なども強化している。

 15年1月に事業再生計画(11年7月に事業再生ADR成立)の終結を発表した。16年10月末日の最終弁済をもって終了する計画だったが、強固な収益体質の確立と財務体質の改善に目途がついたため、終了期間を前倒しして15年1月末日をもって事業再生計画を終結した。債務の株式化を行ったA種優先株式については15年5月に取得(246株、1株につき100万円)して消却した。

 なお15年9月には、商工組合中央金庫とのコミットメントライン契約(借入限度額50百万円)および当座貸越契約(借入限度額1億50百万円)を締結した。事業展開での資金需要に伴う手元資金の一時的な減少を防ぎ、経営のさらなる安定化を図る。

■15年8月期は財務改善も進展して初配当を実施

 15年8月期の非連結業績は売上高が14年8月期比34.0%増の21億24百万円、営業利益が同68.3%増の4億50百万円、経常利益が同70.5%増の4億35百万円、純利益が同85.0%増の5億59百万円だった。

 半導体分野およびFPD分野の好調な受注が牽引した。分野別受注高は半導体分野が同60.8%増の12億36百万円、FPD分野が同86.2%増の7億57百万円、その他分野が同17.3%減の3億68百万円で、合計が同45.7%増の23億62百万円だった。

 コスト面では増収に伴って材料費、労務費、外注加工費が増加したが、増収効果と生産性向上効果で吸収した。売上総利益率は30.9%で同2.6ポイント上昇、販管費比率は9.7%で同1.7ポイント低下した。特別利益には「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助金」15百万円、および繰延税金資産1億13百万円を計上した。

 そして96年のマザーズ上場以来初となる年間36円(期末一括)の配当を実施した。配当性向は11.3%だった。またROEは100.7%で同22.9ポイント低下、自己資本比率は32.7%で同10.3ポイント上昇した。BPSは135円80銭で14年8月期の28円68銭から大幅に改善した。

 15年8月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(9月~11月)3億84百万円、第2四半期(12月~2月)6億39百万円、第3四半期(3月~5月)5億59百万円、第4四半期(6月~8月)5億42百万円、営業利益は第1四半期41百万円、第2四半期1億30百万円、第3四半期1億40百万円、第4四半期1億39百万円だった。収益改善基調だ。

■16年8月期第1四半期は大幅増収増益

 1月12日に発表した今期(16年8月期)第1四半期(9月~11月)の非連結業績は、売上高が前年同期比60.9%増の6億19百万円、営業利益が同3.8倍の1億55百万円、経常利益が同3.5倍の1億48百万円、純利益が同2.4倍の1億円だった。

 分野別の受注高は、半導体分野が同4.5%減の2億73百万円、FPD分野が同3.0倍の2億61百万円、その他分野が同98.7%減の2百万円、分野別の売上高は、半導体分野が同36.8%増の3億26百万円、FPD分野が同2.4倍の2億48百万円、その他分野が同14.3%増の36百万円だった。

 売上原価で材料費や労務費、販管費で人件費が増加したが、増収効果と生産性向上効果で大幅増益だった。売上総利益率は35.3%で同9.9ポイント上昇、販管費比率は10.2%で同4.5ポイント低下した。

■16年8月期業績予想は再増額の可能性

 12月25日に今期(16年8月期)第2四半期累計(9月~2月)と通期の非連結業績予想を増額修正した。半導体分野とFPD分野の受注が期初計画を上回る見込みだ。

 第2四半期累計の非連結業績予想は、前回予想(10月14日公表)に対して、売上高を1億20百万円増額して前年同期比9.4%増の11億20百万円、営業利益を70百万円増額して同28.4%増の2億20百万円、経常利益を70百万円増額して同21.7%増の2億05百万円、純利益を70百万円増額して同21.3%増の2億20百万円としている。

 通期の非連結業績予想については、前回予想(10月14日公表)に対して、売上高を1億30百万円増額して前期比0.3%増の21億30百万円、営業利益を80百万円増額して同15.6%減の3億80百万円、経常利益を80百万円増額して同19.7%減の3億50百万円、純利益を55百万円増額して同45.5%減の3億05百万円としている。

 配当予想については年間14円(第2四半期末7円、期末7円)としている。15年9月1日付の株式3分割を考慮して、前期の年間36円を株式3分割後に換算すると年間12円で、今期は実質的に前期比2円増配となる。予想配当性向は24.2%となる。

 修正後の分野別売上高の計画は、半導体分野が同2.5%増の12億01百万円、FPD分野が同49.6%増の8億60百万円、その他分野が同83.3%減の56百万円としている。特にFPD分野の受注が期初計画を大幅に上回る見込みだ。その他分野は光学関連消耗品の受注を見込むが、スポット的な受注も多いため先読みが困難としている。

 修正後の通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が29.1%、営業利益が40.8%、経常利益が42.3%、純利益が32.8%と高水準である。需要変動幅が大きいことなどを考慮して下期の保守的な見通しを残したとしているが、半導体やFPD分野の受注は高水準に推移することが予想され、会社予想は再増額の可能性が高いだろう。

■月次受注動向は高水準維持

 15年12月度の月次受注残高(速報値)を見ると、半導体分野99百万円(前月比5.9%減、前年同月比32.2%減)、FPD分野2億33百万円(前月比6.7%減、前年同月比363.6%増)、その他分野13百万円(前月比9.1%増、前年同月比92.7%減)、合計3億46百万円(前月比5.9%減、前年同月比10.3%減)だった。

 合計ベースで見ると前月比および前年同月比とも減少だが高水準を維持している。半導体分野は年末年始休暇の関係や長納期受注残の比率低下が影響したが、FPD分野は受注および出荷検収とも高水準で推移している。

 今後の見通しとして、半導体分野はエンドユーザーの大規模な微細化投資に伴って再拡大が始まる見通しだ。FPD分野は中小型から大型パネルまで幅広く設備投資が拡大しているため、高水準の受注と出荷検収が継続する見通しだ。全般的に好調な受注状況であり、今後は大型真空パーツにおいて協力企業選定を進めることで生産性を改善し、小型真空パーツでは社内の試作能力を高めることで受注拡大を図るとしている。

■新中期事業計画「Evolution2018」で新規分野への参入も推進

 15年10月に、新中期事業計画「Evolution2018」(16年8月期~18年8月期)を公表した。

 半導体分野では微細化投資の本格化でエッチング、洗浄、ALDなどの工程で市場拡大が見込まれるため、洗浄分野への参入、エッチング分野での試作強化などを推進する。FPD分野では中長期的に8Kなどで需要拡大が見込まれるため、自社における設備投資ではなく、協力企業の拡大によって需要変動に対応する。その他分野ではスマートフォン関連の需要が継続し、自動車関連やロボット関連の市場へ参入するため、生産余力の効率的活用と協力企業の拡大を図る。

 また半導体分野を成長ドライバーとする既存事業のブラッシュアップに加えて、現業とのシナジー効果や半導体・FPD分野の需要変動に対するリスクヘッジとして、売上高20億円規模までの中小企業を対象としてM&Aも積極活用する方針だ。M&Aの分野としては、半導体洗浄・樹脂パーツや自動車・ロボット部品などを想定しているようだ。

 そして15年12月には鹿児島大学大学院理工学研究科との共同研究契約を締結した。リハビリ装置の研究開発と作業筋力補助ロボットの研究開発の2件について、早期の実用化を目指して共同研究する。

 数値目標としては、18年8月期の連結売上高40億円、営業利益10億円(単体ベースで売上高30億円、営業利益7億円、M&Aで売上高10億円、営業利益3億円)を掲げている。また株主還元として配当性向35%以上(順次向上)を目指し、計画期間中に東証1部への市場変更を目指す方針だ。

■株価は12月の戻り高値から一旦反落したが収益改善基調を再評価

 株価の動き(15年9月1日付で株式3分割)を見ると、鹿児島大学との共同研究を材料視した12月14日の戻り高値764円から一旦反落したが、急伸前の500円割れ水準まで下押すことなく600円近辺で推移している。下値を切り上げる展開だ。

 1月12日の終値571円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS57円90銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間14円で算出)は2.5%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS135円80銭で算出)は4.2倍近辺である。時価総額は約32億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。また週足チャートで見ると13週移動平均線が下値を支えながら上向きに転じてきた。16年8月期業績の会社予想は再増額の可能性が高く、高水準の受注や収益改善基調を再評価して戻りを試す展開だろう。

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