【アナリスト水田雅展の銘柄分析】神鋼商事はグローバル展開の加速や指標面の割安感を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼・非鉄金属関連の専門商社である。グローバル展開を加速してメキシコの線材二次加工拠点が稼働予定である。株価は全般地合い悪化も影響して昨年来安値圏だが調整の最終局面のようだ。5倍近辺の予想PER、3%台の予想配当利回り、0.5倍近辺の実績PBRという指標面の割安感も見直して反発のタイミングだろう。

■神戸製鋼所グループの中核商社

 鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う専門商社である。中期経営計画(14年3月期~16年3月期)では、神戸製鋼所<5406>グループの中核となるグローバル商社を目指し、数値目標として16年3月期売上高1兆円、経常利益90億円、海外取引比率40%以上を掲げている。

■M&Aも積極活用

 14年7月には筒中金属産業が新設分割によって設立した国内卸売事業会社(現コベルコ筒中トレーディング)の株式70%を取得して子会社化した。

 15年5月には子会社のコベルコ筒中トレーディングが筒中金属産業から、韓国でアルミ高精度厚板の切断加工・卸売事業を展開している韓国筒中滑川アルミニウムの株式88.89%を取得して子会社化(現ケーティーエヌ)した。

 15年8にはミャンマー・ヤンゴン市に神鋼商事ヤンゴン支店を開設した。同支店を市場調査・情報収集の拠点として、鋼材・非鉄製品・溶接材料など取り扱い製品の拡販や、神戸製鋼グループの進出支援を図るとしている。

 15年9月には、非鉄金属材料の素材および加工品を販売する中山金属が新設分割によって設立する国内外卸売事業会社の株式80%を取得(16年1月)し、国内外卸売事業会社および海外子会社を子会社化すると発表した。株式取得対象の国内外卸売事業会社の商号は中山金属(新)とする。海外子会社は中国(上海)、タイ、インドネシアの3社である。

■メキシコ線材二次加工拠点が稼働予定でグローバル展開加速

 14年9月にはメキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社を設立した。出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%である。

 メキシコは世界の自動車・自動車部品メーカーの進出で自動車関連産業の成長が期待されており、自動車用ファスナーや冷間鍛造部品などの素材となる冷間圧造用鋼線を製造する。15年9月に建屋完成、10月に設備搬入、12月に稼働を予定している。

■営業利益拡大基調

 なお15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2140億42百万円、第2四半期(7月~9月)2124億16百万円、第3四半期(10月~12月)2140億78百万円、第4四半期(1月~3月)2298億71百万円だった。経常利益は第1四半期16億38百万円、第2四半期13億59百万円、第3四半期17億44百万円、第4四半期18億34百万円だった。収益拡大基調だ。

 15年3月期のROEは10.2%で14年3月期比0.5ポイント上昇、自己資本比率は10.2%で同1.2ポイント上昇した。配当性向は17.8%だった。

■16年3月期第2四半期累計は最終増益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.6%減の4194億83百万円、営業利益が同1.1%減の30億13百万円だが、経常利益が同10.0%増の32億95百万円、純利益が同7.3%増の21億30百万円だった。

 輸入鉄鋼原料の価格下落や国内の人員増加などで減収、営業減益だったが、受取配当金の増加などが寄与して経常増益、最終増益だった。売上総利益率は3.18%で同0.26ポイント上昇、販管費比率は2.47%で同0.26ポイント上昇した。

 営業外では、為替差損益がマイナスサイド(前期は差益3億73百万円計上、今期は差損4億60百万円計上)に転じたが、デリバティブ評価損益がプラスサイド(前期は評価損4億08百万円計上、今期は評価益3億66百万円計上)に転じたまた受取配当金が増加(前期は3億86百万円計上、今期は5億82百万円計上)した。特別損益では固定資産売却益が一巡(前期は4億05百万円計上)した。

 セグメント別(連結調整前、経常利益)の動向を見ると、鉄鋼は同5.9%増収で同21.2%増益、鉄鋼原料は同13.4%減収だが同1.9%増益、非鉄金属は同10.2%増収だが同2.4%減益、機械・情報は同1.7%増収だが同52.4%減益、溶材は同2.3%増収だが同48.7%減益だった。

 鉄鋼は鋼板、線材とも円安に伴って輸出数量が増加し、線材の輸出価格上昇が寄与した。鉄鋼原料は神戸製鋼所向け輸入鉄鋼原料の価格が下落して減収だったが、取扱量は増加した。非鉄金属は空調用銅管やアルミ地金の取扱量が増加した。機械・情報はアルミ加工機械が減少したが金属成膜装置が増加した。溶材では国内造船向け溶接材料、鉄骨溶接ロボットシステムなどが増加した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2163億60百万円、第2四半期(7月~9月)2031億23百万円、経常利益は第1四半期20億49百万円、第2四半期12億46百万円だった。

■16年3月期は期初計画に比べて減益幅縮小見込み

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(7月29日に利益を増額修正)は、売上高が前期比1.1%増の8800億円、営業利益が同8.7%減の62億円、経常利益が同4.2%減の63億円、純利益が同1.9%減の39億円としている。

 国内人員増加やメキシコ新工場立ち上げ費用などで減益予想だが、円安による収益改善、受取配当金の増加に加えて、海外子会社の初期投資費用の発生時期を見直した結果、第2四半期累計の利益が計画を上回り、通期ベースでも期初計画に比べて減益幅が縮小する見込みだ。

 配当予想(4月28日公表)は前期と同額の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)としている。予想配当性向は18.2%となる。配当については企業体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、各期の業績に応じた配当を継続していくことを基本方針としている。

 セグメント別の計画(連結調整前)を見ると、鉄鋼は売上高が3090億円で経常利益が28億円、鉄鋼原料は売上高が2530億円で経常利益が8億円、非鉄金属は売上高が2420億円で経常利益が13億50百万円、情報・機械は売上高が760億円で経常利益が10億50百万円、溶材は売上高が430億円で経常利益が4億円としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.7%、営業利益が48.6%、経常利益が52.3%、純利益が54.6%と概ね順調な水準である。

 なおメキシコ新工場に関しては16年3月期には立ち上げ費用負担が先行するが、17年3月期以降の収益寄与が期待される。M&A戦略やグローバル展開の加速で中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整の最終局面、指標面に割安感

 株価の動きを見ると、戻り高値圏260円台から反落し、1月12日には昨年来安値となる218円まで下押した。全般地合い悪化が影響したようだ。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 1月13日の終値224円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円04銭で算出)は5倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は3.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS479円84銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約198億円である。

 週足チャートで見ると安値圏の下ヒゲで底打ち感を強めている。調整の最終局面のようだ。5倍近辺の予想PER、3%台の予想配当利回り、0.5倍近辺の実績PBRという指標面の割安感を見直して反発のタイミングだろう。

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