【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エイジアはデジタルポスト関連で急伸、06年以来の高値圏

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 エイジア<2352>(東マ)はメール配信システムの大手である。アライアンスも積極活用してeコマース関連分野を強化し、16年3月期増収増益・連続増配予想である。1月15日の株価は地合い悪化の状況でもデジタルポスト関連を材料視して急伸し、14年1月1989円を突破して06年以来となる2000円台に乗せる場面があった。上値追いの展開だろう。なお1月29日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

■メール配信システム「WEBCAS」のアプリケーション事業が主力

 自社開発のメールマーケティング・プラットフォーム「WEBCAS」シリーズを提供するアプリケーション事業を主力として、システム受託開発やマーケティングコンサルティングなどのサービスソリューション事業も展開している。

■「WEBCAS」シリーズは導入企業数2500社突破

 01年に発売した自社開発のメール配信システム「WEBCAS e-mail」は顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。総合通販企業、メーカー、生命保険、情報サービス会社など多様な業界の企業や官公庁に導入され、国内メール配信パッケージ市場でのシェアは1位である。

 メールマーケティングシステム「WEBCAS」シリーズは、メール配信システム「WEBCAS e-mail」を中心に、アンケートシステム「WEBCAS formulator」やメール共有システム「WEBCAS mailcenter」などをラインナップに抱えるe-CRMアプリケーションシリーズである。15年5月にはメールマーケティングシステム「WEBCAS」シリーズ導入企業が2500社を突破した。

 なお1月13日には、アマゾンウェブサービス(AWS)のパートナープログラム「AWSパートナーネットワーク(APN)テクノロジーパートナー」に認定されたと発表している。AWSユーザー企業および今後AWSに移行する企業のメールマーケティング基盤を、よりスピーディかつ安全に構築する体制を整える。

■「WEBCAS」シリーズの商品ラインナップを強化

 中期成長戦略として「メールアプリケーションソフトのエイジア」から、販売促進・マーケティング支援分野に事業領域を拡大して「eコマースの売上UPソリューションを世界に提供するエイジア」への発展を目指し、クラウドサービス(ASP、SaaS)の強化、新製品・サービス開発の推進、サービスソリューション事業の拡大に取り組んでいる。

 14年6月データベース作成システム「WEBCAS DB creator」を発売し、ジェイモードエンタープライズと共同開発した電子レシートメール送信サービス「レシートメール」も発売した。15年5月にはSMS配信システム「WEBCAS SMS」の販売を開始した。マイナンバー関連などの需要を見込んでいる。さらにカンタンCRM「WEBCAS CRM」の販売も開始した。

 15年7月には「WEBCAS」シリーズとWebコンテンツ制作をセットにしたWebキャンペーン運営支援サービス「WEBCASキャンペーン支援パック」の発売を開始し、VOYAGE MARKETINGのデジタルギフトサービス「ギフビー」とも連携した。

 15年8月には、日本最大級のクラウドソーシングサービスを運営するランサーズのメール配信基盤として、メール配信システム「WEBCAS e-mail」クラウド版の提供を発表した。ランサーズがサービスインフラとして利用するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)上の環境と連携して本格稼働した。

 15年9月には、資本提携先であるシステムインテグレータの「SI Omni Channel Services(SOCS)」と、当社の「WEBCAS e-mail」を連携したオムニチャネルマーケティングのソリューションを販売開始した。

 15年11月には、e-CRMシステム「WEBCAS」シリーズ新ラインナップとして、LINEビジネスコネクトを活用したセグメント抽出型メッセージ配信システム「WEBCAS taLk」を発売すると発表した。

■新製品マーケティングオートメーションツールを16年3月発売予定

 なお新製品のBtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations(ウェブキャス・オート・リレーションズ)」を16年3月に発売する予定だ。

 複雑化したデジタルマーケティングを簡単に実現して効果を高めるためのBtoC企業向けマーケティング・プラットフォームである。マーケティング活動を自動化するマーケティングオートメーション市場は米国を中心に急速に拡大し、日本でも市場拡大が期待されている。

 さらに「WEBCAS Auto Relations」の今後の開発戦略については、16年にはSTEP2としてチャネルの複数化・多様化、定性分析による顧客セグメント化、17年にはSTEP3として人工知能「将来予測エンジン」の搭載または連携、IOT技術を活用したビッグデータ対応を計画している。

■M&A・アライアンスも積極活用

 M&A・アライアンス戦略では、12年4月ECサイト構築・運営事業拡大に向けてシステムインテグレータ<3826>と資本・業務提携、12年12月メールマーケティングコンサルティング事業拡大に向けてメールマガジン制作・運用支援のグリーゼと資本・業務提携、13年10月メールマガジン戦略立案・企画・制作・分析サービスのFUCAを連結子会社化、14年1月Webサイトソーシャル化支援サービスのフィードフォース社と業務提携した。

 15年5月にはソフトフロントやホオバルなど異業種各社と協業して、女性の起業をサポートする「コロコニ・プロジェクト」を発足した。女性の起業家に対して技術サポートおよびサービスの提供を共同で行っていく。

■デジタルポスト社と業務提携して新サービス

 15年10月には「WEBCAS」シリーズと連携したDM送信サービスを実現するため、Webサービス「Digital POST」を提供するデジタルポスト社との業務提携を発表した。デジタルポスト社は日本郵便のハイブリッド郵便サービスを事業化するため11年に設立され、ネットやアプリから郵便やDMを作成・配送できるユニークなサービスを提供している。

 15年12月には「WEBCAS」シリーズの新サービスとして、インターネット上からDM(ダイレクトメール)やハガキ、手紙などの作成から郵送までを行えるDM配送サービス「WEBCAS DM」の発売を開始した。デジタルポスト社から技術供与を受けた。

■新サービス提供や海外展開を加速

 15年10月には人工知能型「顧客の声」分析エンジンを提供するメタデータ(東京都)との資本・業務提携を発表した。人工知能技術や自然言語解析技術を活用したマーケティングソリューションの共同研究・開発を目的として、同社の第三者割当増資により440株(所有割合14.2%)を約39百万円で取得する。基礎技術となる研究を目的としたシンクタンク機関の発足も予定している。

 15年11月にはNPS(Net Promoter Score)を活用した調査・コンサルティングサービスを展開するwizpra(東京都)と業務提携した。NPSは米国の売上上位企業500社(フォーチュン500)のうち35%の企業が採用する「売上に直結する指標」である。企業のNPS向上を支援するソリューションを共同で提供する。

 また15年11月には、マレーシアでマーケティング支援業務を行うMarvelous International社と資本・業務提携して子会社化(出資実行日15年12月、所有割合99.81%)すると発表した。購買力の高い富裕層や中間所得層が拡大する成長市場マレーシアにおける事業を強化する。なお本資本・業務提携に伴い、12年12月にマレーシア市場での当社サービスの販売を目的に業務提携したCRESCERE社とのマレーシアにおける契約を終了するが、タイにおける業務提携は継続する。

■下期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2億22百万円、第2四半期(7月~9月)2億65百万円、第3四半期(10月~12月)2億67百万円、第4四半期(1月~3月)2億77百万円、営業利益は第1四半期14百万円、第2四半期51百万円、第3四半期54百万円、第4四半期59百万円だった。

 下期の構成比が高い収益構造である。15年3月期のROEは12.4%で14年3月期比4.7ポイント低下、自己資本比率は79.0%で同0.6ポイント上昇した。配当性向は26.6%だった。

■16年3月期第2四半期累計は計画超の増収増益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)連結業績は売上高が前年同期比11.2%増の5億41百万円、営業利益が同50.6%増の98百万円、経常利益が同52.2%増の1億1百万円、純利益が同58.6%増の66百万円だった。期初計画に対して、売上高は21百万円、営業利益は31百万円、経常利益は34百万円、純利益は24百万円、それぞれ上振れた。

 重点分野のクラウドサービスの売上高が前年同期比20.9%増の3億09百万円と大幅に伸長した。また期初時点では売上高を見込んでいなかったサービスソリューション事業のオリジナルソフトウェア開発で納品が数件発生したことも寄与して売上高が上振れた。

 利益面では利益率の高いクラウドサービスの売上構成比が高まったことに加えて、運営サーバの効率運用も寄与した。売上総利益率は63.6%で同3.3ポイント上昇、販管費比率は45.5%で同1.4ポイント低下した。

 セグメント別に見ると、アプリケーション事業はクラウドサービスが大幅に伸長して売上高が同10.7%増の4億56百万円となり、売上総利益率が同5.5ポイント上昇して71.7%となった。

 サービスソリューション事業は、受託開発案件の対応を最小限にしてエンジニアリングリソースを新製品マーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations」の開発に注力したため、売上高が同13.9%減の85百万円となり、低採算案件の計上も影響して売上総利益率が同7.4ポイント低下の20.6%となった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2億51百万円、第2四半期(7月~9月)2億90百万円、営業利益は第1四半期25百万円、第2四半期73百万円だった。

■16年3月期増収増益・連続増配予想で増額余地

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月11日公表)は、売上高が前期比9.6%増の11億30百万円、営業利益が同23.2%増の2億20百万円、経常利益が同21.5%増の2億20百万円、純利益が同28.6%増の1億40百万円としている。配当予想は同2円増配の年間17円(期末一括)としている。予想配当性向は23.8%となる。

 セグメント別売上高計画は、アプリケーション事業が同15.7%増の9億90百万円、サービスソリューション事業が同20.0%減の1億40百万円としている。アプリケーション事業はクラウド関連やライセンス販売が好調に推移する。サービスソリューション事業は開発要員を、アプリケーション事業の新製品「WEBCAS Auto Relations」の開発に投入するため減収だが、子会社FUCAと連携したコンサルティングサービスは強化する。

 重点戦略としてアプリケーション事業では、マーケティング担当者が抱える課題を解決する新製品「WEBCAS Auto Relations」の開発に注力するとともに、利益率の高いクラウドサービスのマーケティング戦略を強化する方針だ。またサービスソリューション事業では子会社FUCAおよびグリーゼとの連携を強化する。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.9%、営業利益が44.6%、経常利益が45.9%、純利益が47.2%だった。不確定要素が多いとして通期会社予想を据え置いたが、第2四半期累計が計画超となり、下期の構成比が高い収益構造であることも考慮すれば、通期会社予想に増額余地があるだろう。

■株主優待制度は3月末に実施

 株主優待制度については15年2月に新設を発表した。毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。15年3月期末から実施した。

■株価はデジタルポスト関連で急伸、06年以来の高値圏

 なお7月3日付の大量保有報告書の提出に基づいて筆頭株主の異動を発表した。フュージョンパートナー<4845>が議決権数に対して30.43%を保有する筆頭株主となった。

 株価の動きを見ると、1月15日の株価はストップ高水準の2050円まで急伸する場面があった。14年1月の1989円を突破して06年以来となる2000円台だ。地合い悪化の状況でもデジタルポスト関連を材料視したようだ。

 1月15日の終値1987円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS71円44銭で算出)は27~28倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS472円09銭で算出)は4.2倍近辺である。時価総額は約46億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形だ。06年以来の高値圏で需給面は良好だろう。目先的には過熱感を強める可能性もあるが、上値追いの展開だろう。

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